レゴのデュプロブロックというと幼い子向けというイメージがあると思うのですが、わたしはこのシンプルなおもちゃの大ファンです。
ブロック講座でどうして小さいサイズのレゴを使わないのかといえば、レゴは形やパーツが多彩で、頭を使わなくても思い通りの形ができてしまうからなのです。
最初から動くように作られているパーツもたくさんありますから、動きを作り出すためにわざわざ科学的な力について学んだり、物の構造を探求したりしなくても、そういうものを購入すればいい、ということになってしまいます。
その点デュプロは、何の変哲もないレンガのような形が2、3種類あるだけです。
知恵を絞って、ただの四角い形にしか見えなかったものからあっと驚くような形や動きを生み出す面白さが絶妙なのです。
作品を見るだけで、新しい視点や思考の仕方が言葉を介さず伝わる良さもあります。
どういうことかというと、上の写真のようなブロック作品を見るだけで、真上から見た図、真横から見た図、正面から見た図を表現するとどうなるのか、直感的にわかる、ということです。
上の写真のくまでしたら、「ブロックの凸の1点だけをつなぐと、動きが生まれる」という事実から、
「それなら別のつなぎ方をしたらどうなるの?」
「つなぐ点を変えると、動く範囲は変わるの?」
「動くために隙間が果たしている役割は?」
といったことに子どもたちも目で気づいていきます。
「ああ、この動き方は踏切に似ている。踏切が作れるな」「ドアの開閉ができるな」といったことを思いつく子もいるはずです。
そうした気づきは、最初からそれに適した形に作られていて、そう動くようになっているものを買ってきたのでは生まれてきません。
ちょっと妙なたとえなのですが、主婦が毎日、料理を作っていく際にも同じようなことがいえると思うのです。
最近は便利な食材がたくさん売られていて、「○○料理長の八宝菜の素」とか、「卵があればすぐできるビビンバの素」といったものを買ってきて、
そこに書いてある通りに野菜を切ったり、卵を入れたりすればあっという間に、プロの味とまではいかなくても、そこそこおいしい料理を作ることができるようです。
でも、それを続けていると、毎日作っているという点では変わらなくても、だいこんやかぼちゃを買ってきて、その素材を使ってどういうふうに調理しようかと試行錯誤しながら料理の腕を磨いている方とでは、料理の腕前に開きが出てくるように思うんですよ。
子どもの場合、頭の使い方という点で、日々の遊びが大きく影響してくるのではないでしょうか。
できあがっているおもちゃに遊んでもらうのではなく、素朴なおもちゃに能動的に働きかけて、頭を使う喜びに目覚めるような遊びの体験を用意してあげたいものです。
だから、デュプロでなきゃいけない、ってわけではないのです。
ティッシュ箱でも、紙コップでも、輪ゴムでも、一枚の画用紙でもいいんです。
もちろん、いつものお散歩道だってかまいません。
それをさまざまな視点から眺め、活用し、自分を表現し、探求し、味わい、イメージをふくらませ、言葉で理解するといった経験を子どもにたくさんさせてあげたいのです。
幼い子向けのブロック講座では、親御さんたちに、そうした体験を子どもにさせるためのサポートの仕方を学んでもらっています。
どのような点に焦点を当てて関わっていったらいいのか、ブロック遊びを通して子どものどんな力が伸びるのか紹介していきますね。
① 「記憶したことを思い出す」のを楽しむ体験を。
その日見たもの、気づいたことをブロックで再現して遊ぶと、記憶を再現するのが楽しくなってきます。
たとえば、工事現場で働く車を見た後で、ブロックをバラバラと散らかして、手でガッとつかんで、上にもちあげるシーンを再現するだけでもいいのです。
そんなの創作じゃない、と思うかもしれませんよね。
でも、そうした遊びが楽しければ、次は、車はどのようになっていたのか、よく観察しようという気持ちが生じますし、バラバラのブロックの周りを囲って、より工事現場らしくしようと考えるようになるかもしれません。
作ることで、「夜は、工事現場はどうなっているの?」という関心につながるかもしれないのです。
とにかく、見聞きしたことを忘れてしまわずに、再現して活用し、そこからアイデアや次の予測を導き出すような頭の使い方ををするようになっていきます。
↑ (ロボットの)ハエです。
② 「課題を作り出す」ことが上手になります。
サイズへの気づきが数の増減の理解につながります。
物作りに親しんでいると、「もっと高くしたい」「本当に水が出てくるみたいに見えるシャワーのついているお風呂がつくりたい」など、日常の中で、「こんなことできないかな?試してみよう」という気持ちが起こりやすいです。
ものさしを使うのが難しい年齢の子でも高さや長さを簡単にそろえることができるのがデュプロブロックのいいところです。
また自然に同じサイズのパーツを扱うことが増えるので、そうしたサイズをそろえる作業が、そのまんま数の増減の理解につながりやすいです。
身近な大人が、トンネルや車庫、牧場の囲い、立体駐車場、お家などのシンプルな立体作品の見本をいろいろ作ってあげることも大事です。
③ 想像力を膨らませます。
ブロック遊びにいっしょに付き合うことで、子どもの想像力を広げるお手伝いができます。
たとえば、動物で遊んでいたなら、動物たちを調教してサーカスに出場させるようなストーリーで遊べるし、動物の住んでいる環境(ジャングルや砂漠や氷の世界など)を作って遊ぶこともできます。
パレードをして、音楽を演奏してもいいし、サファリパークを作って子どもと車に乗って見て回るのも楽しいです。
④ 科学的な力に精通します。
輪ゴムがあれば、デュプロブロック数個で、ブロック電車を連結できるし、開閉するドアも作れるし、知恵の輪のようなパズルも作れます。
体操人形も作れるし、野球ゲームも作れるし、さまざまな働く車も作れるし、回転する遊具も作れます。
磁石や懐中電灯にしても虫眼鏡にしても鏡にしてうちわにしてモーターや豆電球にしても、それを使って、幼い子でも簡単に
ありとあらゆるものが作り出せるところがデュプロブロックのすばらしいところです。
そうして遊ぶことでその働きに精通していくことができます。
⑤ 理由に対して敏感になります。
論理的に考えるようになります。
(写真は以前のものです)
くるくる回すだけで車が引っ張られるのはどうしてなのか?
ブロック遊びに動きを取り入れることで、疑問がたくさん生じて、理由を知りたいという気持ちが高まります。
論理的に考える力も育まれます。
⑥興味の世界が広がる。
(写真は以前のものです)
「清水の舞台から飛び降りる」なんてことわざがどうして生まれたのか、作ってみて納得した子どもたち。
歴史的建造物にしても、宇宙開発にしても、ブロックで気軽に作るうちに興味がどんどん広がっていきます。
時々お邪魔している者です。
実家が荒尾の遊びのアトリエさんに近いので、荒尾でのレッスンの記録を読むのは特に楽しみにしています。
大阪の子どもたちと熊本の田舎の子どもたち、育ちの環境が違うことで奈緒美先生ご自身レッスン中に何か違いを感じられることがあるのかな、と疑問に思うこともあります。
我が家は虹色教室さんからもアトリエさんからも遠いのですが、自分なりに子供たちを観察しながら子育てをしています。とりあえず健康に育ってくれているのでそれだけで有難いです。
私は小さなレゴもデュプロと同様に、子供に十分楽しめるものだと思います。最初は説明書どおりにつくりますが、それ以降は自分で自分の作りたいものを作っています。小さいことと面白い形のパーツが交っているので、細かい仕掛けができるのがメリットかなと息子のレゴ制作を見ながら思います。
良い2017年のスタートをお祈りしています。