2歳児さんにどのようにしつけて
教えていけばいいのか、具体的な方法でしたね。
2歳児さん同士が揉めだした時、
遠くから「お友だちのおもちゃを取っちゃだめよ。返しなさい。」
「叩いちゃだめ」といくら大きな声で注意してもあまり意味がありません。
大きな声にびっくりして、どちらかの子が揉め事の場から撤退したとしても、
その後、揉めごとを繰り返すたびに、前よりも衝動的で乱暴なものになっていきがちです。
なぜなら、「大人が大きな声で注意するより先に、早いとこ、
自分の思い通りにしてしまおう」
「大人の言うのを無視さえすれば、何をしたっていい」
(叱られても怖いと思わない強ささえ身につけたら何をしてもいい)
と判断するようになる子が多いからです。
それならどうすればいいのかというと、2歳児が揉めだしたら
揉めている現場に駆けつけて、相手を叩きかけていたり、
物を投げようとしたりしていたら、
振り上げている手に大人の手を添えたり、背後から軽く抱っこしたりして、
暴力が振るえない状態にした上で、「○○のおもちゃが欲しかったの?」
「○○は★くんのなの?取っちゃだめなの?」など、今の状態や気持ちを言葉で
確認することです。
この時、罰でも与えるように不必要に強く拘束するのはいけません。
次にお友だちの悪さを見つけた時に
お母さんがしたのと同じ方法で、乱暴に成敗するようになります。
とにかく一拍置いて、現状を正しく捉えて、自分の感情を言葉で理解しなおすことが、
最初の課題なのです。
「こうしなさい」「ああしなさい」と叱りつけて指示を与えるのではなく、
一呼吸置いて、自分でどうすべきか判断する間を与えます。
★くんの場合、トラブルの際にお母さんが★くんに求める行動が、
★くんの年齢にそぐわない高すぎるものだったため、
「~~したかったの」「貸したくないの」「ぼくもおもちゃで遊びたいの」
といった年齢相応の主張や懇願する姿がほとんどないことが気になりました。
そのため大人が見張っていて注意をうながしている場面では、
あっさりしすぎるほどに相手に譲って引いてしまうわりに、
大人の目があまりない場面では、躊躇せずに
暴力に訴えて相手からものを取りあげる姿がありました。
つまり、「もっと年齢が上のお兄ちゃんのような我慢」をするか、
「思うがまま好き放題に無茶苦茶」をするか
両極端な態度の間にある行動が未体験のままなのです。
以前、『学習に気がかりなところのある子のレッスン』という記事で、
衝動性を抑えることに困難を持っている小1の●ちゃんのレッスンでの出来事を
紹介したことがあります。
やんちゃなタイプの2歳児さんは、ハンディー等はなくても、
この●ちゃんと同じように衝動を抑えることが難しいです。
また衝動的に自己中心的に振舞う時に
「そんなことをしてはだめ」「こうしなさい」と注意するだけではなく、
今日はいつもより落ち着いているなという時は、取り立てて良いことをしたわけでは
なくても、褒めてあげたり、勇気づけてあげることが大事だと思っています。
「ちゃんとできている自分」を意識させて、我慢することの価値に気づかせたり、
「お兄ちゃんお姉ちゃんになりたい」という気持ちを育くむのです。
またおりこうすぎる時は、それを当たり前として、こちらの子どもへの要求水準を上げ
るのはよくありません。
「えらくはりきっているものの、
そろそろがんばりの限界が来ているんじゃないかな」と判断して、
その後でわがままを言いだしたら、
「がんばったから、疲れたね。ちょっと泣いておこうね」と
溜まったストレスを発散できるようにしたり、まだする!とはりきっていても、
「がんばったね、もうおしまいしようか」とたずねたり、そっと手伝ってあげたり
するといいかもしれません。
これは揉め事においても同じで、
本人にすると「譲りすぎているな」「おりこうすぎだな」
「今日はずいぶん聞き分けがいいな」と感じたら、
「このおもちゃは★くんの大事!だから貸したくないんだよね」
といった本音を引き出して、相手の子に、
「ごめんね、★くん、さっきからどうぞっていっぱいしたから、
今度は貸したくないんだって」とお願いしてあげるくらいの
対応を挟むのもいいかもしれません。
そのように本人がいい子になろうとがんばっているときも、
ちゃんと本人の本音を拾い、心を大切に扱ってあげると、
少しずつ、自分のできる範囲で我慢することや衝動性を抑えることを学んでいきます。
参考になるかわかりませんが、
先に紹介した『学習に気がかりなところのある子のレッスン』の記事を
紹介しますね。
子どもの衝動性を抑えるためにどのように接したらいいのか関心がある方は
読んでくださいね。
(記事に登場している●ちゃんは現在、小学2年生になって
落ち着いた態度でさまざまな課題に取り組めるようになっています。)
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学習面で気がかりなところがある子たちのレッスンでの出来事です。
病院で広汎性発達障がいの疑いを指摘されている小学1年生の●ちゃん。
多動があって衝動性が激しいので、
前回までのレッスンでは、他の子らが工作をしたり、ゲームをしたりしている間も、
幼児向けのショッピングカートを引っぱりまわしたり、あちこちのものをひっくり返したり、
大きな声で騒ぎまくったりしていました。
勉強面では、頭の回転はいい子なのに、
問題文を落ち着いて読むことができないために、
実力を発揮できずにいました。
気が長くていつも温和な●ちゃんのお母さんも
四六時中、めまぐるしく動き回っては、かんしゃくを爆発させてわめきちらす●ちゃんの世話に
ほとほと疲れ果てておられるようでした。
それが今回 教室に来た●ちゃんは
いつもより落ち着いた表情をしていました。
グループのみんなで『お買いものゲーム』をした後で、
それぞれの子が教室でやりたいことを口々に言いあいました。
「工作したい~」と「わたしも工作~」とお友だちの★ちゃん、☆ちゃん。
でも●ちゃんは、「工作なんかいやだ~おもしろくないよ。そんなの」と言っていました。
「●ちゃんは何がしたいの?自分がしたいことを考えればいいのよ。
★ちゃんも☆ちゃんも、●ちゃんも自分たちと同じように工作しないとダメだよなんて言わないでしょ?」
とわたしが言うと、「ごっこ遊びがしたい」と答えた●ちゃんは、
「ね~お店ごっこしようよ」と★ちゃんたちに声をかけていました。
でも、★ちゃんは、「わたしは本が作りたいの。たくさん図鑑を作りたいから、
先生、色画用紙と切ってもいい本を用意して」
ときっぱり言い切り、
☆ちゃんは、「本の作り方ならわたし知ってるから。折る方法教えてあげる。
わたしも画用紙をちょうだい」と言って、
工作をはじめました。
普段の●ちゃんなら、みんなと同じことをするのは嫌だけれど、
自分だけみんなと違うことをするのも嫌だと言って、
大騒ぎしたりおもちゃをどんどん散らかしたりして、他の子らの注意を引きつけようと
していたはずです。
でも今日の●ちゃんは、ちょっと静かに考え込んでいて、
「じゃあ、わたしはお雛様作るわ」と言いました。
「●ちゃん、今日はとても落ち着いてるね。ワーワー騒ぎたくなった時も
ぐっと抑えて我慢できていたね。すごいすごい」と褒めると、
照れたように笑っていました。
「どんなお雛様にしたいの?」とたずねると、
「大きくいやつ。それから、お内裏様は、お雛様よりもっと
大きのよ、だって男だから」と言いました。
●ちゃんはわたしが提案したお雛様の作り方が
とても気に入っていました。髪の毛をつけた後で、「散髪!」と言いながら
髪を切りそろえたり、「パーマ」と言いながらえんぴつで髪の部分をくるくると
巻くのを楽しんでいました。
これまでひとつのことにじっくり取り組むのが難しかった●ちゃんですが、
お雛様を作り終えるとお内裏様も作りました。
その上、☆ちゃんが「わたしも●ちゃんみたいにお雛様が作りたい」と言いだすと、
「わたしももう一回、お雛様とお内裏様を作る!」と言いました。
それから「さっき作ったお雛様とお内裏様は、
おばあちゃんとおじいちゃんになったことにするの。
今度作るやつは、その子どもの子どものお雛様とお内裏様ってことにするのよ。
着物の作り方、もうわかってるから、教えてあげよっか?」
と☆ちゃんに話しかけていました。
わたしは●ちゃんはえらくはりきっているものの、
そろそろがんばりの限界が来ているのではないかとも思っていました。
ですから、「●ちゃん、すごいね。今日はがんばっているね。ちょっとやってみて、もう飽きた、ポイッとか
しないもんね。もう一回お雛様作りたいの?すごいな~。
だったら、そのもう一回作るよ~って元気パワーを、カセットに吹き込んでよ。
教室にね、いやだいやだ、工作するのもめんどくさい~勉強するのもめんどくさい~
歩くのも遊ぶのも寝るのもめんどくさい~って子がいるのよ、いっぱい。
そういう子らが、カセットを聞いたら、元気が出て、がんばってやってみようかなって思えるような
言葉を吹きこんでほしいのよ」と言いました。
これには●ちゃん大乗り気。「そんなにめんどくさくって、あれもこれもやりたくない人って何人くらいいるの?
どうせ男の子でしょ!」と言ってゲラゲラ笑いながら、カセットに
お友だちといっしょに「元気まんまん~がんばるぞ~勉強も工作もがんばるぞ~!」
と吹きこんでいました。
それから、「先生、わたしの作ったお雛様とお内裏様を家に持って帰ってもいい?」とたずね、
「いいわよ、もちろん」と答えると、
また少しすると、「先生、わたしの作ったお雛様とお内裏様を家に持って帰ってもいい?」「本当の本当に持って帰っていいの?」と念を押していました。
わたしはこれまで
よほどの理由がない限り(大型段ボール作品など)
作った工作を持って帰ってはいけないと言ったことが一度もないので、面白いことをたずねるなぁと思いながら、
その度に、「いいわよ。もちろん、●ちゃんが作ったすばらし作品じゃない!」と答えていました。
が、五度目か六度目に、「先生、わたしの作ったお雛様とお内裏様を家に持って帰ってもいい?」とたずねた
●ちゃんが、「だって、わたしいつも工作をちゃんと作らなかったから、
一度も作品を持って帰ったことがないんだもん。はじめて、自分の工作を持って帰るんだもん」と
大事そうにかばんに入れたお雛様を撫でながら言い足したのを聞いて、
●ちゃんが自分が最後まで工作に取り組めたことを心底誇らしく感じていたことがわかりました。
工作後、算数の学習テーマは、水のかさと線分図でした。
『う』は『い』のいくつぶんですか
という問題。
●ちゃんは、終始、落ち着いていて集中して問題に取り組んでいました。
折り紙を折って確かめる教具を作るときも
がんばっていました。
お友だちに余った折り紙を渡す際にふざけて投げそうになりましたが、
「●ちゃん、今日、がんばってたよね」と小声で言うと、おふざけをやめて
静かに作業に戻っていました。
線分を描いて、□を当てる問題も
きちんと正解し、自分でも新たに問題を作っていました。
帰り際に、●ちゃんのまじめなレッスン態度を●ちゃんのお母さんに伝えると、
前回のレッスンで「もう少し生活体験を」と伝えたわたしの言葉を受けて、
毎日お料理に挑戦していたそうです。
●ちゃんのお母さんは毎日毎日、お料理の手伝いをするうちに、
●ちゃんの多動が次第におさまって、集中して物事に取りくめるようになってきているのを
実感していたそうです。
この1ヶ月、叱る回数も激減していたそうです。