でも書いたのですが、
「好みも違えば、長所も短所も、考えるプロセスも技能の学び方も
それぞれ違う子ども」に対して、
レベルの高い低いや、物事の良し悪しといった価値観が決まっている場所は、
その子の個性を抑えつけたり、邪魔者扱いしたりしてしまう面があるのです。
いつでもどこでもそうである必要はないけれど、
(それこそ、「価値観を固定しない」ということにしがみつけば、
それもまた価値観を固定した関わりになってしまうのでしょうが)
子どもの暮らしは、「こうじゃなきゃ絶対ダメ!」は少なめにして、
自分で自由にできる余白とか、自分で動いて考えて、失敗してもOKという
可動領域を保証してあげることが大切です。
↑ お城の石垣部分は、靴の入っていた箱の4辺を切って、二等辺三角形のパーツを
はめて作っています。
これまで、ブロック制作は好きだけど、工作は苦手という感じだったAくん。
はさみを使うのにも自信がないようで、作る作業を大人に頼りがちでした。
どんなものを作りたいか思い描くことが得意なAくんは、ブロックなら
ひとりでとても魅力的な作品を作りあげるのです。
でも、ちょっとした歪みや思ったものと異なる部分を気にする完璧主義な性質が
足かせとなって、「こうしたい」「ああしたい」と口では言うのに、
「先生やって」「お母さんやって」と作業を頼り気味でした。
そこで、Aくんのお母さんに、
3回折ってテープを貼ることで作る角柱(側面です)を、
細いサイズのもの中心に事前に作っておいて
ブロック感覚で工作できる環境を作ることを提案しました。
そして、「作って」と頼まれたら、心よく手伝ってあげながら、
何をどんな風に作りたいのか、どんな形で、どんな工夫を凝らしたいのか、
一生懸命口にするAくんの言葉にしっかり耳を傾けることの大切さについて
Aくんのお母さんと話しあいました。
帰宅後、Aくんのお母さんから、Aくんといっしょにお城を仕上げた報告と写真が
送られてきました。
お城の天守閣は、
Aくんの指示するサイズどおりのパーツをAくんのお母さんが作ったそうです。
Aくんは、作業そのものは、模様を描くくらいしか参加しなかったようですが、
5階建てで、石垣の脇に草を生やす、など、細かいところまで明確に完成イメージが
あったそうです。
その翌日、急に「門を作らなあかん!」と言い出したAくん。
それからのがんばりがすごかったのだとか。
紙製の角柱をいっぱい作ってもらっていたAくんは、
それらを積み木のように組み合わせて、両脇には紙も貼って、開閉式の扉を作って…
今度は戦国パノラマ大図鑑を眺めはじめたのでもう終わりかと思いきや
「とがったやつ出して!」と言い、(爪楊枝のこと)
器用にテープで固定しながら柵の量産体制に入ったとのこと。
その後も、毎日パノラマ図鑑やなわばりちゃんを眺めては
「堀つくらなあかん!」「橋かけなあかん!」「旗たてよ」と作業を続けていたそうです。
これまでは紙を切るのも自信ない様子で、お母さんにやらせてばかりだったのに、
定規で長さを測ったり線を引いたりまでできるようになり、
自分のイメージが自分で形にできることが嬉しくてたまらない様子だったとのことです。
Aくんのお母さんから、
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自己肯定感、言葉だけではもちろん足りないし、
日常生活ではつい追い立てるように接してしまうので
子どもに「余白」を与えてあげるのがとても難しいのですが、工作を通して、
B(兄)にもAにもちゃんと自己肯定感が育っていくものですね。
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という言葉をいただきました。
< 3回折ってテープを貼ることで作る角柱(側面)の作り方>
Aくんが門に使ったものは、横長に4分割した一枚を、
さらに3回折って4面を作っている細いサイズ(えんぴつくらいの細さ)のものです。
八つ切りの色画用紙(100円ショップ等で売っている一般的な画用紙サイズ)を
そのまま使うか、横長になるように半分に切って使います。
では、まず、横長に半分に切った画用紙で乗り物を作る方法を紹介しますね。
上の写真は、色画用紙半分を横長に切り分けて、それをさらに横長に半分に折ります。
いったん開いてもとの形にしてから
↓の写真のようにさっきついた折り線にぴったりつくように折ります。
セロハンテープで貼り合わせると、簡単に直方体の側面部分ができあがります。
この作り方だと、ものさしを扱うのが難しい子でも
サイズのそろったきれいな作品を作ることができます。
あっという間にできる新幹線。窓やドアを描いているところです。
新幹線の先端は、写真のように上部に2ヶ所切り込みを入れて、
側面を折って、両面テープ等で貼り合わせるとできあがります。
京都の工作会で、この基本の作り方を紹介したところ、
↑こんなすてきな作品を作っている方がいました。
作り方は同じで、画用紙1枚をそのまま使って
折ると、↑のような家が簡単に作れます。
3階建のお家の横にはエレベーターがついています。
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これも京都の工作会の時の作品。同じ作り方で、サイズを変えて。
また、ここをこまめに見たら夏などの募集がキャッチできますか。特にこの記事など見せたわけではないのですが、今朝急に 行きたいの といっていました。
自分自身は、完璧主義だとなにかと大変なことを実感した経験から、もっと楽でやりやすい方法を日々模索してますし、だからこそこどもに完璧を求める接し方はしてないつもりだったので余計びっくりしました。
完璧主義ってなんだろう?という問いに対して、わたしの中の一つの答えとしては、「美意識の高さ」なのかなと感じます。
美意識といっても、工作の場面以外に集団の中の自分の振る舞い方だとか、ファッションだとか、絵やブロックに表れる色使いとか、倫理観とか、引き出しの中の整理整頓とかいろいろ幅広くありますが。
美しさを追求する気持ちに理屈は通らないのかなと。適当でいいじゃないとか、疲れるからやめようとかそんなこといわれてもどうにもならない情熱というかエネルギーがあるわけですよね。
ちょっと「この子なりに美を追求してるのね…」的な視点で見てみようかな、と思いました。
そして、そのやり方でつまづいた時に、どこがまずかったとか、今度からどうしたらいいかとか、そういう相談に乗ってあげたほうが前向きですね。
いままでの、親が先回りして「きっとそんなにがんばったら後で絶対疲れて癇癪起こすんだからやめて」みたいな怒り方をして、まったく効きめなかった経験を思い返しつつ(^^;;
Aくんの素敵なお城を見ながら、うちでもなにか大きいものをみんなで作ってみようかな?と思いました。