小学2年生のAくんはお家で何度か割りばしと紙で作る飛行機を作ったそうですが、
うまく飛ばなかったそうです。それで、今日こそはよく飛ぶ紙飛行機を作って
飛ばそうということになりました。
さっそく教室にある飛ぶ仕組みが載っている本を調べました。
「平たい部分を上向きにカーブさせると、空気の流れがカーブしている面を押し下げる
向きに力が働いてよく飛ぶようになる」とわかりました。
Aくん、これまでは画用紙や厚紙を適当に切って飛行機を作っていたのですが、
今回はマス目のある工作用紙(厚紙です)にきちんと作図し、
カッターで切りとることにしました。
マス目のある紙に左右対称になるよう図を描くという
はじめてのチャレンジに、いきいきと取り組んでいました。
これまで自分の好きなように好きなものを作ってきたという土台が
あるからかな、とも思いました。
(こうした工作のあと、立方体の作図を楽しんだり、
線対称、点対称の図を描くことをパズル問題として面白がる子らがいます)
工作用紙はとても魅力的な素材ですが小学校2,3年生くらいになるまでは
使わない方がいいように思います。物作りは楽しいことが一番ですから。
今回、ネット上の見本を参考にして作りました。
Aくんは正確にわからない長さについて、
「この割りばしの部分は、マス目4つ分のところと同じくらいだから、4センチじゃないかな?」
とか、「マス目ふたつ分の半分よりもっと小さいから~」と
検討をつけるのに熱心でした。
それで、帰り際に、「広場で飛行機を飛ばす時、どれだけの高さ飛んだのか、どれだけの距離を飛んだのか、
測る道具がなくても、だいたいの長さを推理する方法がないか考えてみて!」というと
まじめにうなずいていました。
以前、科学クラブで巻き尺を手に紙飛行機を飛ばしに広場に行ったときも、子どもたちは、
紙飛行機が飛んだ高さを調べる方法にとても興味を持っていました。
でも、こうしたことは、子どもが興味がないのに、解説するように
教えても意味がありません。
「すごく高く飛んだのに、高さは巻き尺じゃ測れないな~何か測る方法はないかな」と
わいわいアイデアを出しあう中で、相似比を使った高さの求め方のようなものへも興味が生まれるんです。
Aくんの場合、1本の割りばし上の比率で、「だいたいこのぐらいかな?」と予想していたので、
高さを予想するにしても、目安になる木の高さを自分の背の高さを基準に推理することで、
飛行機が飛んだ高さを
予想するんじゃないかと思います。(「ぼくの背はあの木の半分の半分で、
飛行機のとんだ高さはあの木の半分くらいより少し高かったから~」と)
「 平たい部分を上向きにカーブさせる」のが、飛行距離を長くするコツと知ったので、
見本どおり、はねを15度上に傾かせるために分度器で「15度を測る道具」を作ることにしました。
分度器の使い方をしっかりマスターしたAくん。
飛行機のはねに15度ずつの傾きを作れました。
ゴムカタパルト(ゴム発射台)も作りました。
2年生になって、Aくんはさまざまなことに自発的に取り組むようになりました。
1年生の半ばくらいまで、「疲れた」「ママやって~」が口癖の
気が散りやすいタイプの子だったのです。
そういう時期はそういう時期として、
ゆったりマイペースに過ごさせてきました。
それが最近、
得意の工作だけでなく算数の学習でも
しっかり集中して、高い能力を示すようになってきました。
Aくんの成長ぶり、うれしいです。
おまけ
『ライト兄弟はなぜ飛べたのか』紙飛行機で知る成功の秘密
土佐幸子著 は、
小学生の子と空飛ぶおもちゃを工作した時に、ぜひいっしょに楽しみたい
本です。
本業は自転車屋で、飛行機に関しては専門家でも何でもなかったライト兄弟が
なぜ世界のだれよりも早く飛行機で空を飛ぶことに成功したのか、
どんなことを工夫し、発明したのか、ワクワクする物語と、
紙があればすぐできるさまざまな実験を通して読み解いてくれる本です。
あっという間にできる工作で飛行の秘密を探る実験がたくさんできますよ。
この本はとてもすばらしい本ですが、ただ本を読むだけで夢中になる子は
ごく少数だと思います。でも一度でも、「よく飛ぶ紙飛行機が作りたい」と
思って自分で工夫して工作した後には、ライト兄弟たちの決意やワクワクしていた気持ち、
どんな風に考えていたのかまで深く子どもの心に響くはずです。