虹色教室通信

遊びや工作を通して 子どもを伸ばす方法を紹介します。

自閉症スペクトラムの子の学習支援 2

2011-09-10 20:24:42 | 自閉症スペクトラム・学習が気がかりな子

自閉症スペクトラムの子の学習支援

の記事から2カ月。4歳の時は重い自閉症の診断を受けていたものの

現在は私立小学校に合格して元気に一年生として普通級でがんばっている★くんのレッスンでした。

初めて会った4歳当時は、★くんはトランポリンで跳ぶとか、マット上でごろごろ転がるといった関わりさえ

いっしょにするのは難しいような印象でした。

最初は積み木をぐちゃぐちゃと散らかすだけだった★くんが、

私が縦に並べていった積み木に、★くんも積み木を並べた……というだけで、

「こんなことができるのかー!それなら、他のこともいっしょに楽しめるかも」とそれだけで感激した記憶があります。

 

5歳頃の★くんは、テーブルと電車のおもちゃの隙間をいつまでも見ていたり、ひとりごとを言いながら跳びはねていることが多く、

やはり関わることに難しさを抱えていました。

 

今、目の前にいる7歳の★くんは、いきいきとして表情豊かで、

知力も目覚ましく伸びています。

前回のレッスンでは★くんのお父さんから、

「国語力がないために、算数の文章題が解けないのでは?」という問題と、

「会話のやりとりででたらめな対応が目立つ」ことについてご相談を受けていたので、

今回のレッスンでは算数の文章題を多めに解くことと、スムーズな会話を続けていくための方法を遊びのなかで

探っていくことにしました。

文章の読解力はかなり高くなっていました。

最初に、

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おはじきが、ぜんぶで、10こ あります。そのうち赤は 4こ、青は 3こで、

のこりは ぜんぶ 白です。

白は なんこ ありますか。

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という問題を見せたところ、かなり易しかったようで、即座に、

10-4-3=3  こたえ 3こ

と書いたので、少し問題のレベルを上げることにしました。

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はるみさんと みのるくんと ちよこさんが、きのうまでに よんだ

本のかずを あわせると  75さつに なります。

そのうち はるみさんは 21さつをよみました。

みのるくんは はるみさんより 2さつ

おおく よんだそうです。

では、ちよこさんが きょう あたらしく よみはじめる 本は、

ちよこさんに とって なんさつめに なりますか。

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この問題は健常の1年生にとっても難しいレベルです。

「どうするかな?」と見ていると、★くんは↑の写真のように

はるみさんを 「は」 みのるくんを 「み」と直接書いて、ちよこさんを「ち」と書いて、

「は」の横には、21と書き、「み」の横には計算式は書かずにいきなり23と書きこんで、

その後、21+23+□=75と書いて、□の中に暗算で、31と書きこみました。

頭の中で素早く暗算していくことが得意なようです。

★くんはそろばんなどの特別な習い事はひとつもしていないのですが、

高速で暗算したり、高速で文字を読んだりする特技があるのです。

★くんが答えに31さつと書き込んでいたので、

「きのうまで読んだ本の数を求めたね。問題は何のことをきいているのかな?

もう一度、読んでみて」とうながすと、

「きょう あたらしくよみはじめる本」という言葉の意味が難しい様子です。

それでも、きのう読んだのが、31冊なら、今日、新しく読み始める本は何冊かな?」ともう一度問うと、

黙って、「32さつ」と解答欄に書いていました。

 

「前回は、こんな長い文章を自然に理解できているようでは

なかったけど、どうやって考えているのかわからないほど素早く、

まるで計算機ではじき出すような式の立て方をするなぁ~」と不思議に感じました。

★くんと、長いボールコースターを作って遊びました。

この遊びの最中、★くんはこれまで見たことがないほどのはしゃぎっぷりで、

ピンポン玉サイズのボールが筒に入った瞬間、その地点で数回回転することが

うれしくてたまらないようでした。

「見て!ねっ!見てよ。ねこのボールがくるくるってまわるん?トンネルで。

ねぇねぇ、ピタゴラスイッチかくめい~くるくるビーダマ~♪」と途中までは私の方を見て、

途中からはひとりで歌うように言いました。

私も真似て、「ピタゴラスイッチかくめい~くるくるビーダマ」とふしを付けて言うと、

「それ、ぼくが作ったんだよ。名前!」と返ってきました。

「★くんが作ったのね。くるくるまわるもんね。くるくるっとね」と返すと、

「どう?これねぇ、くるくるってまわるんだよ。すごく。今から、ここから転がすからね」と★くんは

満面の笑みを浮かべて、ボールをスタートさせました。

このボールコースターで遊ぶ間中、★くんは私のまなざしの先や表情を見て、

ちゃんとボールを見ているのか、自分と同じように喜んでいるのか確かめるような様子でした。

また、心から打ち解けて、満面の笑みを浮かべていました。

どうも、このボールコースターを作る前の

クーゲルバーンで遊んでいた時から、私が急速に楽しい遊び相手と感じられるように

なったようなのです。

気にいった理由は、

★くんのお母さんが外に席をはずしてくださっていたこともあって、

私はわざと★くんの遊び方に合わせて、荒っぽい口調で「バーン!」とか「ドカーン」とか、「もうっ!★くん、やめてやめて!グラグラ

ドッカーンってこわれちゃうよ。あ~あ、こわれた~ハハハハ~(大爆笑)」と言ったりして、

★くんのはちゃめちゃな遊びっぷりと同調して遊んでいたからのようです。

 

★くんは、おなかがよじれるほど笑い転げてました。

その後★くんは私の一挙一動に好奇心いっぱいのまなざしを向けながら

目と目が合うと、いたずらっぽく笑いかけてきたのです。

その後、長いボールコースターを作ってからは、★くんの方から積極的に私に話かけては、私の返事を聞いて、

それに返事を返す……という会話の中身は同じようなことの繰り返しなのですが、

心と心でずっと長い間、キャッチボールをし続けることができたのです。

こんなに楽しく★くんと遊んだのは初めてでした。

 

話は変わりますが、素敵なエピソードをコメント欄に寄せていただいたので紹介します。

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ウチはADHD+LDを抱えていますが、科学工作が好きなので市のイベントによく参加しています。

ある時「万華鏡を作る」というのがあって、講師に某有名大学の教授が指導して下さり、参加したのですが、息子のことだから絶~対話を聞いておらず、作り方がわからない・・・というハメになると思い、最前列(先生の真ん前)の席をとったところ、めったに出ない衝動性と多動性(息子はADD傾向のため、動き回ることが少ない)が顔を出し、先生の机の物を勝手にイジるわ、説明にない自分なりの作り方を加えるわ、スクリーンのライトで遊ぶわで、ホント恥ずかしかったです・・・(涙)

「穴があったら入りたい・・・」とは、まさにこのこと!!状態でした(笑)

帰り間際に、「色々ご迷惑おかけしてすみませんでした・・・」と、お詫びにいったところ、先生に

「いや、とんでもない!
お子さんの発想力は凄いですね!!
こんな物の見方をした子は今までにいませんでした。
今日、私はお子さんに3つの事を教えられました。
ありがとうございました。」

・・・と言われてしまいました。

「お世辞か・・・?」と思いながらも、先生の言っていることにも一理あり、確かにやっていることはキテレツだけど、見方を変えたらスゴイかも・・・?

「万華鏡の覗き口に光を当て、スクリーンに映し出すという発想は、私にはなかったし、誰もやってなかったな・・・。
結構キレイやったしな・・・。」

息子の行動の背景には、必ず何らかの「意味」があり、そこにはまた違った可能性だったり、まだ知らないだけの息子の才能が眠っているのかな・・・?と思いました。

困った行動でも、見方を変えれば才能になる。
そんな体験でした。

こんな体験をして、直感タイプの学び方のヒントを得ることが出来ました。

また、なおみ先生が感じられたように、カードゲームやボードゲームが大好きで(少しひねったようなカードゲームなんかは特に!!)、詳しくルールを説明する間もなく直感的にルールを理解してしまう部分もあり、「少しずつ積み重ねる作業ってホントに苦手なんだなぁ~」と、つくづく思いました。

遊びの中で学ぶことの大切さを痛感した出来事でした。

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2 コメント

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Unknown (はやちゃんママ)
2011-09-11 00:33:44
先日はありがとうございました。息子のことを甘やかし過ぎかと悩んで変に厳しくしたりとグラグラしていたのですが大切に大切にしてあげようと思いました。
洗車機遊びはすごく気に入ったようで何度も何度もやっています☆早く本物を見せてあげたいです。

昨日、支援センターに行った時にポスターを見つけたのですが京都でレッジョエミリア教育の展覧会をやっています。東京でもやっていたようなのですでにご存知でしたら余計なお世話なのですが…お知らせしておきますね。
驚くべき学びの世界展

9月19日(月)まで
元 立誠小学校にて(阪急河原町駅近くです)
平日 12時~19時
土日祝10時~19時
当日1200円

携帯から書き込んでいるのでリンクを貼れなくて申し訳ないです。
レッジョエミリア教育についてはほとんど知らないのですが、公式サイトの画像を見てなんだかワクワクしたので時間を作って行ってみます☆
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Unknown (Unknown)
2011-09-12 11:20:34
先日、博物館で、水草を用いて日光写真を撮ろうというイベントに参加してきました。

「琵琶湖の水草をもっと知る」という目的で日光写真はおまけ的存在ですが、親子で楽しみました。

日光写真は最初に手順を教えてもらいます。
日光に当てる時間は10秒前後で、時間が短いと暗く、長いと明暗がハッキリした作品が出来ます。

最初、息子は「先生、10秒していい作品ができたし、僕も10秒にするわ」とやっていました。2作目を作る時「100秒したらどうなるやろ?」というので、「やってみたら?」といいました。本当に100秒数えてやると、真っ白けで
作品にはなりませんでした。私は「真っ白けやし、100秒では長すぎたんやね。」といいました。

息子は先生に報告しに行ったようで、「疑問に思ったことを実際してみてすごいよ。科学者みたいや」と言って下さいました。
息子は「科学者みたい」と言われたのがとっても嬉しかったようです。

親以外の人から誉められたり、叱られたり、意見を言われたりする機会が少ないですが、そういった機会も必要だなと感じました。
親の視線とはまた違った視線で意見をいってくださるので、ハッと気づくことがあります。

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