小学生が学習につまずくとき、何らかのハンディーキャップが原因で、できていない場合があります。
「努力しないから」とか「先生の説明を聞いていないから」などと安易に決めつけず、ていねいに原因を探る必要があります。
写真はアスペルガー症候群の女の子に勉強を教えていたとき使っていた紙です。
この子は、障害特性のせいで、「興味の範囲がとても狭い」です。
動物が大好きで、寝ても覚めても動物の話をしています。
私が「お家では、お姉ちゃんとどんなことをして遊ぶの?」とたずねても、
「この問題の解き方はわかる?」とたずねても、
「今日は、カーコちゃん(うちの鳥です)は何をしているの?」
「どうしてカーコちゃんは、飛んでいってしまうの?」と自分の好きな動物の話題にすりかえてしまいます。
何とか計算はできるようになっているものの、算数の概念の多くは、難しすぎて理解できない様子です。
いくら説明しても、首をかしげたままなので、親御さんが困っておられました。
こうした興味の範囲が狭い子には、その子の興味のある事柄で、算数の概念を説明するようにすると、急に理解が進む場合があります。
この女の子も、「子どもが100人いました……」という話だと、そわそわしたり、「うーん」と首をかしげて「わからない」と言うだけだったのですが、子どもをフラミンゴに変えて、「フラミンゴが100羽いてね。そんなにいっぱいいたらどうする? 困るね~!!100羽のフラミンゴを同じ数ずつ10の小屋に分けたら、何羽ずつになるのかな?」という話で説明すると、ずっとわからなかった大きな数を10分割するときの概念に、理解をしめすようになりました。
興味の範囲が狭い自閉症スペクトラムの子どもたちに教えるとき、電車とか、昆虫とか、動物とか、その子が興味を持っている分野の内容で説明すると、学習に集中できる場合がよくあります。
また、学習内容を、できるだけシンプルにして、理解させる部分だけ抽出して教えることも大事です。
1枚の紙に、1つの内容だけ書く。
といったことが、理解に役立ちます。
同じ診断名だから、同じハンディーを抱えているとは限らないので、まず、苦手な部分を見つけると同時に、得意なことや長所も見つけておくと、得意や長所を通して難しい概念の理解が教えやすくなるときがあります。
苦手は、字が小さかったり、たくさん字が並んでいたりすると、読むのが困難になる、聞くと見るを同時にできない、注意散漫、筆算が苦手、文章題が苦手、メタ認知力が極端に弱いなど……。
得意には、色に敏感、位置はよく覚える、数字好き、字を読むのが早い、褒められるとがんばるといったものがあります。