宮尾登美子『レジェンド歴史時代小説 東福門院和子の涙(上)・(下)』
(講談社文庫)
★★★★☆
【Amazonの内容紹介】
皇室の外戚としてなんとしても権威を得たかった徳川家康。
天皇の在位さえも意のままに操り、
二代将軍秀忠の娘・和子を、天皇家へお輿入れさせるべく動く。
生まれたときから運命を定められた和子が
十四歳にして帝へと嫁ぐ、その胸に秘めていた想いとは―。
女たちの生き様、心情を丹念に描いた傑作歴史小説!
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そういえばわたし、宮尾登美子は『平家物語』で
挫折したんだった、説明のオンパレードで
最後まで読み通せなかったんだった!
……と序盤で気づいたのだけど、
慣れてきたらスムーズに読み通せた。
祖母のお市の方、母のお江与の方の生涯から話が始まり、
序盤は説明の多さがきついのだけど、
確かにこのパートがなければ
和子に背負わされたものの大きさが
わからないだろうな……とも思う。
泣かない姫だった和子が泣く場面では
思わずもらい泣き。
いくら権勢があっても、朝廷にとったら
徳川家は「自称・源氏」と言ってるだけの
どこの馬の骨とも知れん田舎者の家のわけで、
「およつ御寮人事件」とか、「ハァ!?」って感じだろうな……。
四辻家のほうが断然由緒正しいもん。
その「無茶」を背負い、
帝の愛しか頼るもののない後宮に入って
公家の女官に意地悪されたり妨害されたり。
帝と仲睦まじいというのも、語り手の願望であって、
将軍の娘だから政治的配慮で大事に扱われているだけで
実際はそんなに愛されていないのだろうな……というのが
物語の中でもわかってしまう。
でも、男と女のことは政治だけでは動かないものだし、
帝が悪いとも言い切れず、とにかく気の毒だ~!!
という印象だけが残った。
このあと江戸時代はずっと続くのに、
誰一人として将軍家から入内していない、っていうのが
闇の深さを物語っている。