朝比奈あすか『翼の翼』
★★★★☆4.5
【Amazonの内容紹介】
専業主婦、有泉円佳の息子、翼は、
小学二年生で中学受験に挑戦することになる。
有名私立の中高一貫校を受験した経験のある夫真治と、
それを導いた義父母。
中学受験にまったく縁のなかった円佳は、
塾に、ライバルに、保護者たちに振り回され、
世間の噂に、家族に、そして自分自身のプライドに
絡め取られていく。
入試問題頻出作家が、過熱する親の心情を余すところなく描いた、
凄まじき家族小説。
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先輩に借りた本。
詳しくない、教育熱心でないふりをしてしまう母親の心理、
「子どもの希望」という形にするための誘導。
「あるある」のオンパレードで、リアルすぎて息苦しい……。
たった数日でも親の叱責を回避したいがために
バレるとわかっている嘘をつく子どもも、
冷静で賢い人だったのに、できない子どもに
暴力を振るうようになったお母さんも、
中学受験で関係が破綻してずっと修復できなかった親子も、
実際にいた。
いつの間にかどんどん視野が狭くなって、
「これしかない」「仕方ない」と異常な状態を肯定してしまう、
そのあまりにも自然な移行が描かれている。
中学受験をすると決める前に読んでほしいけれども、
実際受験ルートに入ったら
「自分はこうはならない」と思った状態に
結局陥ってしまう人が多いんじゃないだろうか。
そして、やっぱり「子どもの評価=自分の評価」になってしまうし、
子どもと自分を別個の人格・人生として切り分けて考えるのは
難しいのかも。