金木犀、薔薇、白木蓮

本と映画、ときどきドラマ。
★の数は「好み度」または「個人的なお役立ち度」です。
現在、記事の整理中。

229:中場利一 『スピン・キッズ』

2006-10-21 18:53:13 | 06 本の感想
中場利一『スピン・キッズ』(徳間書店)
★★★☆☆

『だらしな日記』で紹介されていたもの。
この著者、『岸和田少年愚連隊』の人だったのね。
そっちも読んだことはないけれど、
映画化されていたのでタイトルは知っていたのでした。

母の死をきっかけに、中学卒業と同時に親友のピータとともに
大阪へ家出したホウカ。
「しのぎ屋」のキーちゃんの紹介で部屋と仕事を手に入れるものの、
蒸発した父親との再会し、何もできない自分に苛立つ。
恋あり友情ありの青春モノ。

もう少し深く書いてくれると浸れたのになあ……といったところ。
何度か中断しながら読んでいたせいかもしれないけれど、
ヤマ場を待っているうちに終わってしまった。
父との和解で一応オチはついていると思うのだけど、
コリスやピータとのからみがもっとあると期待していたので
やや不完全燃焼といった感じ。
「青春ピカレスク」と帯にあったように、主人公たちが
当たり前のように人を殴ったりお金を巻き上げたりしているので、
そこものめりこめない原因だったかも。
お父さんとのやりとりは好きでした。
遺伝の話で笑ってしまった。

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228:宮部みゆき 『日暮らし〈下〉』

2006-10-19 11:38:05 | 06 本の感想
宮部みゆき『日暮らし 下』(講談社)
★★★★☆

昨晩読了。

ええええ~????

って感じの読後感でした。

「もう本の半分を過ぎているのに、まったく核心に近づく気配がない……」
と思っていたら、横から突然真相が転がり込んできたような展開。
真犯人については、名前が出てきた段階で予想がついてしまったのだけど、
もっとこれまでの話にからんでいるのかと……。
伏線らしきものもあったけれど、いきなり動機の説明だけされたようで
いまいち納得できない。
湊屋のどろどろもカタがつくと思っていたので、
肩透かしを食らわされたような気分。
あれでケリがついたことになるのかなあ……。
シリーズ3作目もあるようなので、そこのあたり、
次回作に期待することにします。
真相が判明するまではおもしろかったので★4つ。

主人公と奥さんが好き。
奥さん、可愛いよね……

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227:酒見賢一 『後宮小説』

2006-10-18 11:15:53 | 06 本の感想
酒見賢一『後宮小説』(新潮社)
★★★★★

第1回日本ファンタジーノベル大賞受賞作。
子どもの頃、これを原作にした『雲のように風のように』という
アニメを見て泣いたもんです。
恩田陸さんが、小説を書き始めたきっかけとしてこの本を
何度か挙げていましたね。

素乾王朝の末期、庶民から正妃となった少女・銀河。
皇帝を亡き者にしようとする陰謀、反乱軍の蜂起の中で、
後宮軍を組織して戦うことになる。
史料をもとに筆者が想像をふくらませて書いた歴史小説、という
かたちをとっているのだけど、これがとても上手い。
アニメを見ていたときは、子ども心に「架空の物語だ」と
わかっていたのだけど、本を読み始めたら、
「この頃日本は江戸時代なんだよね?」
「こんな王朝あったっけ?」
「こんなおもしろい話があったらさすがに知ってるはずだろう……」
「ってか、どこがファンタジー?」
と、どんどん自信がゆらいできた。
世界史を途中で放棄していて疎かったせいもあるけれど、
史料がばんばん出てくるし、荒唐無稽な話なのに妙なリアリティがあって
すっかりだまされた。
読後、世界史の年表で確認してしまったよ

銀河をはじめとする後宮の少女たちのキャラクターが良い。
滅びゆく王朝の悲しさもあって、銀河と皇帝の別れのくだりでは
思わず涙……
一般的な「ファンタジー」ではないので、苦手な人も
歴史小説のように抵抗なく読めると思います。
名前を知りつつあまり興味を持っていなかった作家さんですが、
ほかの作品も読みたくなりました。
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226:たつみや章 『ぼくの・稲荷山戦記』

2006-10-18 10:39:36 | 06 本の感想
たつみや章『ぼくの・稲荷山戦記』(講談社文庫)
★★★☆☆

昨日読了。
講談社児童文学新人賞受賞作。
何度も図書館で目に留めつつ、並んだタイトルを見て
「この著者の本は合わなさそうな気がする…」
となんとなく手を出しかねていたのだけれど、
文庫落ちしたのを機に購入。
実際、語り口や人物造形は好みではなかったのだけど、
話としてはおもしろかった。

環境問題、自然保護をテーマとしたファンタジー。
ある日家にやってきた、お稲荷さんのお使いだという守山さん。
稲荷山の開発を止めるため、中学生のマモルは守山さんとともに
開発をすすめる四井商事と戦うことになる。
ファンタジーなのだけど、話の展開は現実的。
子供だましになっていないところが良い。
お父さんが本当に都合よく「お留守」なのと、
主人公がただの狂言回しになっているのは気になるけれど、
説教くささをあまり感じさせず、
じんわり感動させるような作品に仕上がっているのは見事。

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225:伊藤たかみ 『アンダー・マイ・サム』

2006-10-18 10:31:40 | 06 本の感想
伊藤たかみ『アンダー・マイ・サム』(講談社文庫)
★★★★☆

昨日読了。
右手の親指が長いことを気にする17歳のしゅんすけに、
うまくいかない家族関係に苛立つ清春、顔に傷を残すみゆき。
それぞれの傷を抱えて、悩み苛立つ17歳の日々を描いた青春小説。
「当時の僕は、これ以上、とても十七歳でいられないと思った」
「十七歳であることを憎んだ」
というのは帯にも抜粋されていた文句だけれど、
テーマはそこなんだろう。
どうすることもできない苛立ち、やりきれなさ、閉塞感。
あったなあ、と思うし、今だってあるなぁ、と思う。
最後がやたら前向きで陽気なのがひっかかるのだけど、
このとってつけたような明るさがあったからこそ、
やりきれないできごとがあったわりには読後感が悪くなかったのかも。

当たり前のように万引きしたり、
ナンパした女の子と簡単に寝ちゃったりしながらも、
父親につきあって買い物に行ったり、
みゆきを気遣ったりする優しい主人公。
毎度のことながら、伊藤さんの描くティーンズの男の子には
胸キュン(死語?)です。
言葉遣いがいちいちかわいいの。
かなりファンモードになってきた。

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224:酒井順子 『負け犬の遠吠え』

2006-10-18 00:27:04 | 06 本の感想
酒井順子『負け犬の遠吠え』(講談社文庫)
★★★★☆

ご存知、流行語にまでなったベストセラーの文庫版。
「未婚、子ナシ、三十代以上」というのがこの本による
「負け犬」の定義。
ずいぶん激しく賛否両論があったようだけど、
そんな目くじら立てるほどのこと??
自他ともに認める「負け犬」予備軍のわたくしですが、
十代後半、二十代前半のうちにこれを読んでいたら、
かなーり心がけも変わったであろうよ!と思う。
読後、かなり神妙な気分になったものね。

著者の冷静な分析と、ときどき差し挟まれるおどけた語り口が
おもしろい。
そうねー確かに「JJ」も読んでなかったし、長期的展望も持たず、
この本に即して言えばずいぶん時間を浪費してしまったものよ。
「負け犬にならないための十ヶ条」では現段階で五つ×がついた。
きゃー!

これを読んで結婚する人が増えた、というのはよくわかります。
結婚した友達に悪気なく差別意識を見せつけられた、という
エピソードのところでは、「絶対言われる……!」と
言いそうな友達の顔とシチュエーションまで思い浮かべてしまった。

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223:小堀杏奴 『晩年の父』

2006-10-18 00:13:23 | 06 本の感想
小堀杏奴『晩年の父』(岩波文庫)
★★★★☆

鴎外が亡くなる直前一年を綴った表題作のほか、
「思出」、「母から聞いた話」を収録。
表題作では冒頭ですでに泣きそうになってしまったけれど、
姉の森茉莉の水飴みたいな甘い思い出話に比べると、
基本的に筆致は冷静。
かといって長男於菟ほど理性的でもなく、
母と祖母との対立については、茉莉よりも感情的?と思わせる。
(まわりに注意が向いているかどうかの違いという気もするけど)
茉莉と不律の安楽死事件についてのくだりなどは、
於菟を擁する祖母&親類たちと、母しげとの間にあった確執の深さを
感じさせて、ちょっとげんなりしてしまった。
誰が悪いというわけでもない、当時の家族制度の弊害だと言いつつ、
祖母を嫌いだと言い、全面的に母の味方であるという著者の姿勢にも
その影響が表れている。



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222:白洲正子 『白洲正子自伝』

2006-10-17 23:58:52 | 06 本の感想
白洲正子『白洲正子自伝』(新潮文庫)
★★★☆☆

自宅にいるときは昼間から本を読んでごろごろしていることに
なにやら罪悪感を感じてしまうのだけど、
自宅以外の場所に寝起きしているとまったく抑制が効かない。
そんなわけで、一昨日・昨日とがっつり読書。
まずは一昨日読んだ3冊。

これもファッション誌の読書特集で紹介されていたもの。
この手の雑誌のおすすめをわたしは信用していなかったのだけれど、
先に挙げた金井美恵子だけでなく、泉鏡花、竹久夢二など
なかなかかたいセレクトで、認識をあらためる。
 
著者は随筆家。
白洲次郎の奥さん、という以外、ほとんど知らず、
作品に触れたのも今回が初めて。
樺山資紀の孫なのだね~!
名家のお嬢様で今で言うセレブ妻だった彼女の回想には、
日本近代史上の大物がばんばん登場。
白洲正子はいかにして白洲正子になったか?……と
影響を受けた祖父と血筋、能、骨董など
生い立ちや影響を受けた人々、出来事について綴ったエッセイ。
破天荒な人だったようだけれど、やっぱり上流階級の人なのだなあと
いうのがひしひしと感じられる。
偶然、同日に読んだ『負け犬の~』に、恵まれたバックグラウンドの
持ち主の例として出されていたけれど、確かに環境って大きいよね。

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221:舞城王太郎 『阿修羅ガール』

2006-10-13 16:56:56 | 06 本の感想
舞城王太郎『阿修羅ガール』(新潮社)
★★★☆☆

メフィスト賞でデビューした著者の三島由紀夫賞受賞作。
本屋で文庫版をよく見かけていたので気になっていた。

好奇心で「やっちゃった」相手・同級生の佐野が行方不明に。
女子高生アイコは、佐野を探す陽治への恋心になやみつつ、
佐野の行方に思いをめぐらすが、勃発した「アルマゲドン」に乗じて
金槌で頭を殴られる。
異世界と現実、妄想が入り乱れるファンタジー。

第二部の途中まではついていけたしおもしろかったのだけど、
ファンタジー要素が出てきてからはナナメ読みになってしまった。
ファンタジーの要素って、割合に関係なく、書くほうはもちろん、
読むほうにも「お約束」があると思うのだけど、
わたしはどうもそれが苦手というか、身についていないみたい。
そういう「お約束」に抵抗がない人は
すんなり作中世界に溶け込めるのかも。
物語の発端となった佐野の話は途中でどっか行っちゃって、
解決されないままだったのにがっくり。
評判はいいようなので、デビュー作を読んでみたい。

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220:金城一紀 『レヴォリューション No.3』

2006-10-13 12:14:40 | 06 本の感想
金城一紀『レヴォリューション No.3』(角川書店)
★★★★★

Kazumiさんのおすすめ。
昨晩眠る前に一篇だけ読もうと思ったのだけど、
結局全部読んでしまった。
おもしろかった!
文庫落ちしたら買おう。

女子校の文化祭に潜入するため奮闘する落ちこぼれ高校の男の子たち。
ばかばかしいんだけど、ほろっときちゃうところもあって、
ああ可愛いなぁ男の子だなぁと思った。
『GO』でも『対話篇』でも思ったけれど、
この著者の描く恋する男の子はすっごく可愛い。

語り手は3編とも南方くんと考えていいんでしょうか。
「ラン、ボーイズ、ラン」と「異教徒たちの踊り」の間に
キャラクター的なギャップをやや感じるのだけど、
過去の話だからかな。
「ピータン大嫌い!」のところで夜中に大笑いしてしまった。
フライ、ダディ、フライ』では舜臣以外のメンバーが
完全に脇役に回っていたこともあって
キャラクターがいまいち把握できなかったのだけど、これで大丈夫。
『フライ~』のほうも再度読み返したい。

コメント (2)
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