先日、労作性狭心症の患者さんのことを書いた。胸痛発作時に患者さんに「狭心症かもしれませんね」と告げると患者さんは「ええっ? 違いますよ。最近ストレスが多いのでそのせいでしょう」と私の虚血性心疾患の診断を否定した。 どうも患者さんは心臓発作の場合、それを否定する傾向があるという。
大昔のことを思い出した。当時勤めていた病院からの派遣で、エクスターンとして横須賀海軍病院に3日間の心肺蘇生の指導者養成講習を受けにいったことがある。当時は国内で「居合わせた人が現場で心肺蘇生をする」という時代ではなく、むしろ倒れている人は「餅は餅屋」で救急車がくるまで「触ったらいかん」という時代だった。その講習の内容には心肺蘇生だけではなく「突然の心臓発作への対応」についても盛り込まれていた。心臓発作後に急死する人を如何に救えるかというコンセプトである。受講して内容的には当時の日本の医療システムからはかなり乖離したものであり、これは米国のシステムなので日本にはそぐわないなと感じた。まあところが今ではすっかり日本の病院前救護にこのシステムは定着しており隔世の感がある。