近年の状況は知らないが、昔、地方都市に派遣され救急医療をやっていた頃のことである。昼夜なく小児の「頭部外傷もどき」が親御さんによって連れてこられた。「もどき」というのは「ただ頭をぶつけただけ」というものである。受傷時に脳震盪もなく、そして頭にコブもなく、打撲の強さも不明のまま、本当に頭をちょっとぶつけたらしい?(見ていないがどうもぶつけたようだ)というものまで病院に、ひどい場合は夜中に親御さんが連れてくることがよくあった。夜中にくる理由は一応に「今は何ともないが後で大変なことになるといけないので」というのがほとんどであった。受傷時に意識障害(脳震盪)がなく、受傷後からの時間が経過しており現在も特に親御さんが気がつくような症状がなければ、眠いお子さんを起こしてまで夜中につれてくる必要はない。昔、CTのない時代に頭にコブを作って泣いていた子供もほとんど現在元気に働いているのである。コブや打撲痕すらないのなら、何もないのである。