看護師がその高齢の先生に私を紹介した。「今度週1回くることになった吉田先生です。あっ、こちらは小川先生です、ほらあの小川培地の小川先生ですよ・・・」 私はぶっ飛んだ。あの学生時代から試験では必ず出る超、超有名な小川培地の生みの親である小川先生が目の前にいたのだ。まだ生きておられるとは思わなかったし、またここでお会いできるとは思わなかった。感激したと言うよりもむしろ少し寂しい感じもした。自分の名前を冠した検査法で超有名な先生が、高齢であるとはいえ、どこかの研究所の所長とか顧問とかではなく、郊外のうらぶれた(失礼)病院でただ黙々と入院患者の胸部レントゲンを毎日読影し続けているのである。「あっ、よ・吉田です」とぎこちない挨拶をしたが、小川先生は「あぁ、そう・・」といってまたすぐ向き直りレントゲン写真を見続けたのである。