彼は、双極障害の薬を内服していたのである。多くの(ほとんどの)抗精神薬の類は内服しての運転を禁止している。特に彼の場合は「運転する時は内服していなかった」と報道された。ということは裏を返せばやはり普段は運転禁止薬を内服していたことになる。疑問に思うのは「運転しない時に内服する、運転する時は内服しない」と処方医が指示をしていたかどうかである。これがもし医師の指示ならば不適当である。あるいはそうでなければ自己判断で勝手にそうしていたのかもしれない。たとえばこれら抗精神薬は長期連用していた場合、たった1回内服をしなかったからといって、体内から薬効成分がすべてなくなるなんてことはあり得ない。血中半減期がわずか3時間程度の睡眠導入剤ですら連用していたなら「持越し作用」(翌午前中の判断力低下など)がみられるのである。ましてそれより強力である抗精神薬を連用していたなら、たった1回内服中止しただけで正常に車を運転できる判断力にまで回復することなどはありえないのである。そんなことは医師として常識である。そこを承知で「運転する時だけ飲まないで」などと指示していたとしたらこの医師はアウトである。