座席をみてみると年のころなら60台中頃であろうか、少し小太りの白髪交じりの作業着らしきジャンパーをきたおっちゃんが座っていた。片手にはワンカップ、そしてもう片手には競馬新聞、そして胸のワイシャツのポケットにはかじりかけのイカの足がささっていた。由緒正しい昭和の「常磐線おっちゃん」であった。周囲には若い女性やら、通勤帰りのスーツ姿の人もいた。しかしここは常磐線なのである。ちょっとおしゃれすぎて、かえってそれが嫌味に感じることもある中央線ではないのだ。まるで進化して生息数が減ってきたカブトガニを見つけたような驚きと嬉しさを感じた。しかもこのおっちゃんはお約束のようにきちんと楊枝で「チッチッ」と口を鳴らしてくれている。そして胸のポケットからイカの足を取り出し、それの端を口にくわえながら行儀悪そうにクチャクチャと噛み続けているのである。そうである。これが正しいあり方なのである。しばらくは遠い昔になくなったこの風景を眺めていた。
常磐線のもう一つのイメージはおっちゃんたちの「車内飲み」であった。しかし近年常磐線が通勤電車に「成り下がって」からはこの光景をみなくなった。車両もハイカラで綺麗になったし近代的なフォルムの特急電車も通っている。昔の茶色の車体の電車はどこへ行ったのだろうか。そしてワンカップをグビグビのみながら競馬(競輪?)新聞を読み、時折、「チッチッ」と歯間をすすり下品な音をたてるのが、昭和の時代の常磐線における正しい大人のあり方だった(?)。もちろん競馬新聞に赤鉛筆で○やら◎などの書き込みをして真っ赤になっていればなおいいのである。・・・などと、おもっていたら、ついこの間のことである。2ヶ月に1回の柏の会合にいくために日暮里から常磐線に乗った。その車両に乗り込んだとたん、妙に懐かしい匂いに気がついた。イカの燻製の匂いに車両の匂いや人いきれが混和された匂いなのである。
2ヶ月に1回、大学時代柔道部の同級生らと千葉の拍で飲み会をやっている。みんな開業医なので最近の医療情勢の情報交換もかねている。現地まではいつも常磐線を利用しているが、最近は随分常磐線のイメージもかわった。都心に流入する在来線には京浜東北線、中央線、総武線、東海道線などがあるが、昔から常磐線だけは少し雰囲気が異なっていた。イメージとしてはやはり重い背負子に野菜をたくさん積んで都内に売りに来るおばちゃんたちのイメージが強かったのである。昔、小学校時代うちの医院の裏口にもよく行商のおばちゃんがきていた。野菜は新鮮で美味しかった。たくさん買うとおまけで自家製の大福や赤飯などもくれた記憶がある。ところが今では沿線人口もふえたのだろうか東京から随分離れたところまでが通勤圏になっており、このようなおばちゃんたちは姿を消した。
もちろん自分の色覚能力が低下して自分が色を見間違えた可能性もある。本当は周りが正しくて自分が間違えていた可能性もある。それに気がつかないということはもしかしたら自分は認知症のはじまりかもしれない。いや、しかし緑と赤の色弱なら分かるが、シルバーとゴールドの色覚異常はないだろう。しかも車の大小の判断は間違えないだろう。その後も交互通行は事故なく遅滞なく流れている。まあとにかく事故にならなくてよかったのでこれでいいのであろう。それにしても情報を正確に相手に伝えていないにもかかわらず、結果的には正確な情報が相手には伝わっているのである。これはいわゆるあの「阿吽の呼吸」なのであろうか。クリニックでもスタッフに対し阿吽の呼吸で自分が次ぎに何をしたいのか伝わってくれているといいのであるが。まさに以心伝心で仕事が進んでくれることが理想なのである。開業して5年たった。今年の目標は阿吽の呼吸による以心伝心である。
シルバーの軽ワゴンなんて見える範囲にはない。最後に通した車はシルバーではなく、むしろゴールドのような色であり、別の表現としては黄色のメタリックといったほうがいい。しかも軽ではなくやや小ぶりの普通ワゴンである。「まさか、この車のことを言ったんじゃないだろうな?」と思いながら、もし言い間違いなら事故になる可能性もあったので立ち止まって成り行きをみていた。そしてそのゴールドの普通ワゴンが工事車線の向こう側を通過しようとしたところ、無線機から向こう側の整理員の声が聞こえた。「ハイ、ただいまシルバーの軽ワゴンが通過しましたので、こちらから通行開始します・・・」。・・・まさにハテナ状態である。どうみてもシルバーではないしナンバープレートをみても軽乗用車ではない。しかし事前に申し合わせでもしたかのように整理員が二人ともこれをシルバーと認知し軽乗用車と判断している。正しいのはワゴンであるということだけである。
先月のことである。外を歩いていたら道路工事をやっており片側一車線の交通規制をしているところを通りかかった。交通整理員が何人かいて、工事区間の両端にたち、片側交通規制を無線機でやっていた。片側の通行を止めて、もう片側の車を通し、しばらくしてからとめていた通行を解除し交互通行で車を通していた。片側通行のタイミングは無線機で連絡をとりながらon offをしていたのである。たとえば「緑色のトラックをとおしたら、こちら遮断しますので、そちらの通行を開始してください」というようなやりとりなのである。まさに阿吽の呼吸で渋滞にならないよう上手なタイミングで交互通行をさせていた。自分が通り過ぎようとしてこの無線のやり取りが耳に入った。「最後にシルバーの軽ワゴンを通したら、そこで通行をストップしまぁ~す」「はい、了解です」と。ところが辺りを見てとまどった。シルバーの軽ワゴンなんて見当たらないのである。
昨日は平成25年の診療初日でした。毎年1月4日を診療開始日にしていますが、患者さんの出足は当初はパラパラといったところ。しかし11時台になってどっと来院されたので随分お待たせしてしまいました。みなさんお正月なので出足がいつもより遅かったのかもしれません。
さて12月から猛威をふるっていた感染性腸炎もさることながら、新年になってからいきなり立て続けにインフルエンザ陽性の大人の患者さんが3人もこられました。これで幼稚園や小学校が始まればあっという間にピークになると思います。私の予想では1月の下旬~2月上旬が流行のピークになると思います。今のうちにインフルエンザの予防接種は受けられたほうがよいと思います。10月中に受けた方ももう1回したほうが無難でしょう。
本日1月4日より平成25年の診療を開始いたします。今年も事故のないよう、そして的確な診断と治療ができることを目標に頑張りたいと思います。
昨年の初日は年に1回あるかないかの大きな急病患者さんがきました。正月休み明けですが頭を100%仕事モードに切り替えないといけません。
今年も平穏無事でありますように。
謹賀新年
あけましておめでとうございます。
今年も皆様方のご健康をお祈り申し上げます。
平成25年元旦 吉田クリニック