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心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

柾(マサキ)の新葉が眩しく輝いて・・・・

2014-04-06 18:09:00 | 日記
 私が棲息している二階の窓越しに一本の柾(マサキ)の樹がある。
 この樹が今年も新年度を迎えた。
 なぜ新年度などという言い方をするかというと、もちろんそれには訳がある。

          

 この柾、いわゆる常緑樹である。
 ようするに一年中緑の葉をつけている。
 しかし、何年も同じ葉をつけているわけではない。
 葉の寿命は一年であるが、その交代を実に巧みに行うので、通りがかりの視線では、あたかも何年も同じ葉をつけているようにみえることだろう。

 ちょうどその交代が一年のうちでこの時期に当たる。
 具体的にいうと、3月の初め、各地で卒業式が行われる頃から去年の葉が散り始める。
 それとほとんど同時に新しい幼葉がつき始め、次第に成長する。
 そしてこの4月の初め、新学期の頃にほぼその交代が終わる。
 これを称して「柾の新年度」という次第である。

          

 ご覧のようにこの柾は葉に白い文様などがある斑入りではなく、もっとも単純なものであるが、その新葉が実に鮮やかで美しい。
 PCいじりや読書に疲れて目を上げるたびに、この柔らかい緑が私の目を潤す。
 「小さは至福」などとつぶやいて一人で悦に入っている。

 新葉のお出ましで嬉しいのは、それとともに小さくて目立たないが、可愛い花のつぼみが現れることだ。やがて5月から6月になると、慎ましやかで目立たないけれど、実に可憐な黄緑色の花を付ける。
 人の視線には小さく目立たないが、小動物たちにはけっこう人気があって、開花の時期には蜂や蝶(モンシロやアゲハ、ツマグロヒョウモンなど)がひっきりなしにやってくる。

   
     下の方の黄色い葉が昨年度の葉  
                
                  これはその落葉したもの お疲れさん

 この小さな花、一丁前に秋には結実し、当初は地味な色だが熟すに従って表皮が裂開し、赤い数ミリの実が点在することとなる。
 すると今度は、鳥たちの出番である。雀やキジバト、ムクドリやヒヨドリもやってくる。
 そういえば去年は、秋口にキジバトがこの樹に巣をかけたのだった。
 雛の巣立ちと台風の襲来とが重なりそうでずいぶん気を揉んだが、どうやら二羽の雛は無事に巣立ったのだった。

 
          
             小さくポツポツ見えるのが花の蕾

 どうということはない一本の樹だが、それなりの物語を醸し出していて、私の視界には不可欠なものである。
 樹齢としてはもう40年以上になると思うのが、それらしい手入れもしないままこれまできた。今後はどうであろうか。
 ここまで書いて、不意に笑いがこみ上げてきた。
 相手の樹齢を気にするまでもなく、私自身がもうじゅうぶん老いているのだ。

          
        これは通行の邪魔でやがて払わねばならない しばし留めおく

 でも、周りのちょっとした自然が、慰めてくれるのは嬉しいものがある。
 それは同時に、こちらにそれを受容する能力がまだ残っている証だからだ。
 柾よ、お互い今年度もがんばろうではないか。
 そしてこの年度も、四季折々の物語を見せておくれ。
コメント (4)
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