六文錢の部屋へようこそ!

心に映りゆくよしなしごと書きとめどころ

同人を送る

2014-10-11 01:35:33 | ひとを弔う
 私が参加している同人誌の同人の一人が亡くなりました。享年80歳、ちょうど同人の平均年齢の真ん中の方です。
 私とは10年ほどのお付き合いに過ぎないのですが、病床で奥様が口述筆記をされた遺書のような文書の一節には、
 「カンさん(ファーストネームからくる私の愛称です)とはもっと早く知り合いたかったです。それがとても残念です」
 と、ありました。  

 それは今、私の手元にあります。それを見ては、終日、ウルウルしていました。いや当分はウルウルするでしょう。

 この人がその同人誌によせた最新号からの言葉です。

       =====================

 「人間は死ぬからえらい。どの人も死ぬからえらい」とは鶴見俊輔の詩。
 「人間死ぬから面白い」とは渡辺京二の言。
 「人間ちょぼちょぼ」と思って生きよということなのだろう。

       =====================

 おそらくこれは、その死から一ヶ月半か二ヶ月前に書かれたものですが、その一節には、「暇な時間は一杯あるのに、残り時間が足りないのだ」ともあります。
 まるで死を予感していたようですし、 この号発刊後も、いろいろなことをいくぶんせっかちに進めようとされていたのも、そのせいかもしれないといまにして思い当たるのです。
 自分の生の終わりを、できるだけ整序しようとした意志の力にはただただ敬服するばかりです。
 
 人間いくら自我だの何だのを振り回そうとも、死の前には「ちょぼちょぼ」なのでしょう。だからこそ逆説的にいえば、おのれの生を大切に生きるべきなのですが、それを身をもって実践した人だろうと思います。
 いささか衒学的にいうなら、それはハイデガーの哲学にも通じるところもあるように思うのです。

 屁理屈は嫌いな人でしたから、こんな感想はお気に召さないかもしれませんね。
 ただなんとなく、「冥福を祈る」とか「合掌」などの常套句は使いたくないような気もするのです。
コメント (4)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする