東北楽天ゴールデンイーグルスは、クライマックス・シリーズ第2ステージで敗れ、今シーズンを終えましたが、とてもいい経験をしたシーズンだったと思います。岩隈の涙をはじめ、選手にもそれぞれの思いがあったと思います。そして、敗戦監督で敵地にもかかわらず、野村監督の最終試合ということもあり、胴上げが行われました。自軍だけでなく、ヤクルト時代の教え子である稲葉らがいる日本ハムの選手も入り乱れて、両軍選手からの胴上げで指導者冥利に尽きるであろう最後でした。
シーズン終盤から去就を巡って、散々悶着がありましたが、はっきりと結果が出て、最後を迎えてからは、野村監督もさばさばしたもので、今日名誉監督の話も受諾しました。最後に語ったように、「もう一年野球をやりたい」というのが、このドタバタの底にあった本当の気持ちなのでしょうね。74歳という年齢を考えれば、楽天を退団して次のチャンスはもう考えられず、どん底だったチームは遂に頂点も夢ではないところまで来た、もう一年、もう一年だけ野球をやりたい、そうすれば夢が叶うかもしれない、そういう気持ちだったのでしょうね。
その気持ちは十分すぎるほど分かります。あの長嶋さん、王さんが病に倒れるまで、あるいは倒れてからも現場に立ち続けたのと同じように、野球への情熱、それも後ろから見る野球ではなく、最前線で命を削るような戦いへの情熱だったのでしょう。でも、やはり私はこれで良かったのだと思います。この気持ちがあと一年で鎮まるとも到底思えず(きっと死ぬまで消えることはないのでしょう)、あと一年が何年になるか分からないからです。チームを鍛えて、更なる飛躍を目指すために新たな刺激を加えるには、ちょうどいい時期だったのではないかと思います。チームにとっても、野村監督にとっても。
いずれにせよ、さすがに現場第一線に復帰することはもうないと思います。長嶋さん、王さんに続いて、日本球界を背負ってきた野村監督も現場から去ります。本当にお疲れ様でした。