松井秀喜選手のロサンゼルス・エンゼルス入団が正式に発表されました。分かっていたとはいえビジネスライクすぎるヤンキースに別れを告げて、望まれてエンゼルスに入団したのは喜ばしいことです。しかし、望まれてとはいえ、年棒が約半減というのは、ヤンキースの提示予想額とほぼ同じで厳しいものです。しかし、これは松井個人の問題ではなく、やはり需要と供給の関係が大きいでしょうね。昨年のリーマン・ショックの影響はメジャーリーグとて例外ではなく、各チームとも、補強費用はシビアになっています。やはり需要がしぼむと価格は下がるという経済原則通りですね。
そんなことを考えていると、政府が成長戦略に向けて各界の意見を聞く取り組みをしていて、菅直人国家戦略担当相と小泉政権の司令塔だった竹中平蔵氏の激論があったとの記事を見ました。詳細を見聞きしたわけではありませんが、竹中氏が「現在の経済状況は、供給サイドに問題があり、規制緩和など構造改革を推進すべき」と言い、菅直人国家戦略担当相は「需要に問題があり、供給サイドに手を打っても景気は回復しない」との応酬だったようです。
竹中氏としては、後退する郵政改革のことも念頭にあったと思われますが、供給サイドに問題ありとする意見は賛成しかねます。確かに、竹中氏が辣腕を振るった頃はまだバブル後の清算が終わっておらず、供給サイド(企業側)に問題がありましたが、現在の問題は明らかに需要サイドにあります。ストック(資産)もあり、フロー(収入)もまだしっかりしている層でも消費を手控えています。これは明らかに将来に不安を覚えてのことです。
短期的には雇用への不安です。今や少数の市場価値を持つ人材以外は、どんな大企業に勤めていても絶対大丈夫と安心することは出来ない時代です。民間企業とは違って身分保障があるものの、安定の代名詞だった公務員とて将来はどうなるか分かりません。何せ税収がこれだけ減り、借金は山のようにあるわけですからね。夕張市は極端な例かもしれませんが、盤石なのは東京都などわずかな自治体だけでしょう。
そして、中長期的にはやはり少子高齢化によるマーケットの縮小、国力の減退に対する不安でしょうね。やはり、成長のないところに投資をする人がいないように、消費も盛り上がりません。政府は11月に3年5か月ぶりにデフレを認定しましたが、これは雇用や将来に対しての不安からの需要の減退、価格の低下、企業収益の悪化、給与の低下、更なる需要の減退と、まさに需要と供給の関係による価格の低下の見本のような関係ですね。
かといって、民主党の子ども手当などの政策だけで需要が喚起されるとも言い切れません。フランスで少子化対策として効果があったと言われていますが、もともと貯蓄性向が高く、慎重な国民性の日本とフランスでは国民性に違いがありますし、首都圏に人口が集中する日本とフランスでは、実質的な生活水準にも違いがあります。
現状では、需要サイドに問題があるのは間違いありませんが、ここを刺激するのは容易なことではなく、心理学と経済学とマーケティングと多角的な政策を組み合わせて、柔軟に対応できる政治家が必要でしょうね。竹中さんも自分たちの路線が覆されて頭に来るのは分かりますが、ここは一つ冷静になってほしいですね。