土曜日だというのに、都心の街中でも夜はどこか暗い感じでした。節電と営業休止している店が多いからですね。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』で、父母の若い時代にタイムスリップしてしまった主人公マーティが感じたのも、きっとこんな「知っているけど、どこか別な街のような感じ」なのではないかと思います。
先週の金曜日の地震の後は、多摩方面の同僚と6人で、内堀通り、靖国通り、外堀通りと経て、青梅街道で多摩方面を目指しました。その道々には今よりはるかに灯りがありました。
しかし、その時には歩道を多くのスーツ姿のサラリーマン、通勤着の女性が埋め尽くすという見たこともない光景でした。これも、「知っているけど、どこか別な街のような感じ」でした。
そして、今夜、最寄駅に着いてからの帰り道、さらに薄暗い散田町を歩いていると月がきれいでした。昨日までの寒さがやわらいだため、春のおぼろ月夜と言った趣でした。いい月だなぁ~と感嘆しそうになったその時、同じこの月の下では、寝ずに誰も近寄れない過酷な環境下で悪戦苦闘する人たちがいるんだと、ふと思いました。
ここ数日、被災した人たちのことも気の毒に思いつつも、関心の中心はどうしても福島原発の状況にありました。圧力容器内にしっかり給水出来ているのかどうか、そうかと思えば、今度は使用済み核燃料の貯蔵プールの水位は足りているのだろうか、放水はうまくいっているのだろうかということです。
TVでは、遠目から見た建屋の姿しか見えませんが、その近くには、この過酷な環境下で、自らの生命を脅かされながら作業する、東電作業員、自衛隊員、警察官、消防官たちがいます。専門家たちが安全と言っているのに、多くの外国人が東京や日本から逃げ出しているのに、本当に頭が下がる思いです。
本来であれば、この国の政の責任者であり、自衛隊の最高責任者でもある、菅首相はこの無名の人々の勇気に最大限の敬意を払い、その気持ちを鼓舞する言葉を発するべきですが、残念ながら、そうした言葉は聞かれず、自らの政治ショーのような「国民へのメッセージ」を発するだけです。
イラ菅と言われ、今回の件でも、報告が遅いと言っては、東電に乗り込んで幹部を叱りつけ、形だけの統合本部とやらを作った菅首相ですが、彼の才覚は、野党として政府与党に攻め込むところにあって、今回のような事態にリーダーとして、人を使い、人を鼓舞し、自ら責を負うところにはないようです。
枝野官房長官は、冷静な判断能力と実務能力の高さで、参謀および司令塔としての役目を十分に果たし、株を上げていますが、彼に一極集中しすぎて(それも誰かが頼りないからだと思いますが)、忙しすぎますし、そうでなくても、彼も人を鼓舞して、動かすのは得意分野ではありません。
そういう意味では、今の政府与党の「純血」民主党派は、派閥政治を中心とした自民党の対極の人たちですが、派閥政治は最後は弊害ばかりが目立ったものの、かつては鉄の結束を誇った田中派を筆頭に、人を動かす力があったのも事実です(その最後の末裔が小沢一郎だというのも皮肉なものです)。
閑話休題。今のような国難を克服するのには、本当に人を信じ、人に尽くし、人を鼓舞し、自らをも犠牲に出来る精神が必要です。今も穏やかな月夜の下の過酷な環境で悪戦苦闘する人たちは、まさにそうした人たちですが、国を率いる人にその覚悟があるかどうかです。一企業を恫喝している場合じゃないと思うんですけどね。
一国の指導者が出来ないため、多くの名もなき国民がこの名もなき勇者たちを称えています。この名もなき勇者たちが、立派に使命を果たし、無事に家族の下に帰ることを願ってやみません。
今日のジョグ
3.4km 18分21秒