ひげ爺のお産・子育てご意見番

子どもは育つ力を持って生まれてきますが
親に子育てする力が減っています。
親育て支援の中で感じたことを書いています。

奈良県のお産から国の問題へ

2007年08月31日 | 周産期医療
奈良県民さんありがとうございました。
おっしゃるように、「奈良県」だけの問題ではありません。その通りだと思います。

私のもとにも全国からお産に関する情報が寄せられてきています。
医療消費者がお産について悩み苦しみ、産むとこ探しをしている実態や医師不足の問題も承知しています。

「今回の事件は帝王切開もNICUも必要ない「妊娠3ヶ月」のつもりが、実際は「24週以上」でした。状況は大きく異なります。緊急帝王切開、NICUのフルスタンバイ、輸血の準備等々が必要となってきます。少なくとも、産科医2名、麻酔科医1名、小児科医1名、手術スタッフ3名以上が常駐している病院ということになります。もし、産婦人科医1人の病院がこの妊婦を受け入れ、病院で子どもが生まれ、NICUがないために子どもがなくなれば、その病院は裁判で負けるのです。」その通りですね。

私もそのような悲劇におそわれた医師を存じ上げています。
それらの医師は院長室で寝泊まりし休む間もなく、お産や産婦さんに寄り添っていました。
数人の医師が院長室で息を引き取っていたという事例を知っています。葬儀にも参列しました。
産科医は命を削って産婦と赤ちゃんに寄り添っています。
よかれと思ってやった事が医療訴訟に発展するケースが確実に増えています。

本来コミュニケーションがとれている患者からも訴えられる事があります。
まして、緊急搬送された病院では患者とのコミュニケーションがとれず訴訟になるケースが多いと思います。

産婦人科医1人の病院では、訴訟対策を配慮した医療にならざるを得ませんね。
従来は、されてきた医療行為が意味のない判例のために出来なくなる現在の状況はひどいです。

医師だけが悪者ではありません。
すべての問題の起因は「国の無策」だと思います。奈良県民さんの言うように、私の最終ターゲットは「国」です。
「医学的に何も間違っていないのに、訴えられる。民事だけならまだしも、逮捕までされる。これでは、「患者のためにがんばる」という一心で過酷な労働に耐えてきた医師が燃え尽きても仕方ありません。」
これまで犠牲になった医師の御霊に報告できるようにアクションを起こしていきます。

「国」「裁判所」「厚生労働省」に対して国民として要望していきます。

最後に、私のもとに寄せられている産科医の悲痛な叫びを掲載させていいただきます。

***********
「こんばんわ。新井さん、わたしたち産婦人科医もみんな、ママと赤ちゃんのために頑張っています。福島事件でかなり悩みましたが、「間違ったことをしてない』といわれている加藤先生を初期より、心から支援しています。
みんな36週で帝王切開したら、産科医は楽になり、夜も寝られることでしょう。
そうじゃないんだ!!ママは産む力を持ってるんだよ。と、励ますのが、産科医の醍醐味です。産む力を咲かせてあげたいです。
でも人間なので、やはりお産には水杯が必要だし、赤ちゃんだって泣けない子もいるんだということを、知ってほしいです。
でも結果がすべてですから。。どんなに頑張っても、おぎゃーーーて啼かなければ負けます。どんなにがんばっても、突然の出血はあります。
肺塞栓は怖くて怖くて大変ですが、さあーー何万分の1のために、日本のお母さんはいいお産を捨てることになるのでしょうか?だってたくさんお産が集約したら親切医療どころでなく、なにしろ100%安全なので、さっさと、見切りをつけて、帝王切開となるでしょう。これを食い止めるのはお母さんたちだとお思います。母乳育児が上手くいかないのはマッカサー元帥が日本を崩壊するために考えられたそうですが、大当たりでした。でも一番大きな原因は何千にか一人おっぱいの出ない人がかわいそうだから、、、みんな母乳がよいという話はやめようという、事なかれ主義、一億総中流主義のためだと思います。みんな一緒は違います。わたしは日本の医療が崩壊しないために、ノーフォルト制が引かれ、医療への警察権の介入を断固反対します。わたしたち産科医はお母さんと赤ちゃんが大好きだから日夜頑張っています。どうぞ、モチベーションが一気に下がる措置は避けてください。100%の医療のため、地域でお産できなくなったお母さんたちも100%の医療の犠牲者です。どうぞわたしたちは仲間をかばっているわけでないことを、伝えててください。」

拝啓
向寒の候、貴会ますますご発展のことお慶び申し上げます。
日頃のご活躍を快く拝見させていただいています。
 さて当院におきましては、諸般の事情により、本年3月をもって産科の入院取り扱いを中止しまして、外来診療のみとさせていただくことになりました。
長い間貴会のHPリストに紹介いただきありがとうございました。今後は分娩施設紹介のリストより取り下げていただきますようお願いいたします。今後貴会のますますのご活躍を祈念いたします。
私も昨今の産科情勢に希望が持てなくなってしまった一人で、厚生労働省医政局課長の判断(態度)や、過酷な労働環境を理解出来ない人々の影響、小生の体力などの理由で外来のみの診療に甘んじてしまいました。我が国の出生率を上げるような政治的バックアップ、助産師、看護師との連携などを密にしてもっとお産の素晴らしさ、子育ての楽しさなど啓蒙していくことも期待してなりません。
************
本当に悲しい世の中になってしまいました。
しかし、これにへこたれてはいません。
国民が健康でくらせる安心して生きていける日本にしていかなければなりません。
微力ながら力をつくしていきます。

奈良県民さん「パワー」をいただきありがとうございます。
心から感謝いたします。

これから育児不安で悩んでおられるお母さんへの支援にために数件電話をします。
そしてここでは「エネルギー」をいただきます。





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奈良県でのお産の悲劇(その2)

2007年08月31日 | 周産期医療
今回の産婦の搬送トラブルに関しては、奈良県民さんのコメントにあります「責めるべきは産婦人科医?奈良県の医療体制??それとも、この女性???」とありますが、私は一番悪いのは奈良県だと思っています。
また、お産は確かに「医療」ではありません。
正常なお産とハイリスクなお産は区別されるべきだと思っています。お産は妊婦とお腹に宿った赤ちゃんの共同作業です。
自分で産み育てるのだという意識の醸成がされなければなりません。その上で、分娩施設を本人の意志で選択すべきだと思います。

 奈良県には二つの救急搬送システムがある。救急が一般の救急患者の受け入れ先を探す「救急医療情報システム」と、医療機関がハイリスクの妊婦や新生児を別の医療機関に搬送する「周産期医療システム」に救急からの搬送をのせる仕組みを追加することが必要だと思っています。

奈良県産婦人科相互診療援助システムを速やかに作るべきである。そのためには、知事がリーダーになり、健康安全局、県立医大、医師会、奈良県産婦人科医療部会、助産師会などが叡智をしぼり体制を速やかに整えるべきだと思います。

県立奈良病院の医師の増員について
 奈良県立奈良病院(奈良市)の産婦人科医5人が04、05年の超過勤務手当の未払い分として計約1億円の支払いと、医療設備の改善を求める申入書を県に提出したことがわかった。医師らは「報酬に見合わない過酷な勤務を強いられている」と訴えていると言われていますがこのような状況では医師は確保出来ません。安心して医師が働ける職場でなければ医師の増員は不可能です。

基幹病院への産科医の増員
奈良県立医大附属病院内に周産期母子医療センターの設置等に及び人員の確保に予算が必要になります。

妊娠出産のための県民への啓蒙活動
 今回のようなことが起きないようにするためには医療の体制作りも必要であるが、正常なお産はお産は「医療」ではありません。
命を授かった、そしてこれから授かるかも知れない女性の意識改革が急務です。
かかりつけ医と良好な医師患者関係を結び、毎日規則正しい生活をして、お腹の子どもを大事に育もうという心の醸成が必要です。「妊娠したら、その胎児への責任は妊婦と夫が最も大きい」く自己管理が必要です。
お産を取り巻く環境は奈良県においては厳しい環境におかれています。
正常なお産とハイリスクなお産とは区別されるべきです。
医療を必要としないお産までが基幹病院で行われている現状を変えていくべきです。
正常なお産は、助産師による自宅分娩や有床助産院でのお産や有床産婦人科など、産婦が選択できるように情報提供をしてください。
近年、妊娠中毒症や早産などハイリスクなお産が増加しています。それらの予防のための情報提供をしていただきますよう要望します。

今回の最大の問題点は、奈良県の医療体制の欠陥と県民への妊娠・出産。子育て等の母子保健医療対策が計画的に行われなかったことだと思います。

重ねて言いますが、私は医師や患者を責めているのではありません。奈良県がこれまで放置してきた責任は重大です。
今回の件は、たまたま交通事故が発生したために、露見したに過ぎません。それが無ければこの件は闇に葬られたのです。
類似した問題は、これまでも起こっています。この2件だけではありません。
過去にも搬送先を見つけるのに手間取ったことがあるはずです。




コメント (3)
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