これまで来た質問の中から我が子との接し方がわからないという相談がありました。
とても参考になりますのでお読みください。
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2ヶ月の男の子の赤ちゃんとの接し方がつかめず不安ばかりの毎日です。
2ヶ月の男の子(3370g;5060g)について。日当たりのいい部屋で寝かせていますが泣くたびに1日そこで過ごすと逆に私がストレスがたまってしまい好きな家事をしたいのですが泣かせてまでするべきか本当は赤ちゃんの相手をしないとダメではと考えていつも悩んでしまいます。
また縦抱きが大人しくなるのですが肩こりが辛くついつい抱っこをやめて泣かせてしまうことも多いです。その場合5分から15分で泣きやんで10分から数10分寝ています。自分が頑張ればいいのですが体力がついていかず最後には泣き声にイライラしてしまい、それが赤ちゃんの心の発達に影響しないかとも不安です。
赤ちゃんの機嫌のいい時はガラガラを目で追わせたり話かけたりしているのですが泣き出すと抱っこして、でも自分が疲れて泣かせてしまう。
こんな風に接していてちゃんと育ちますか?また抱っこすると泣き止むということは母乳が足りていると考えていいですか?昼間たまにミルクを足して抱っこしていると寝る時が多いです。
夜はだいたい9時に母乳とミルクで4時まで寝ます。赤ちゃんとの接し方がつかめず不安ばかりの毎日です。
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回答 たまごママネット医師団
人の体は200万年間生理的には大きな変化無く、赤ちゃんは今も200万年前も今もほぼ同じような状態で産まれてくると考えられます。
何故赤ちゃんは泣くのかを考えてみると,命にかかわる重大事に泣くのであろうと考えられます。飢餓状態にさらされたときと、他の捕食肉獣に食われるかもしれない危険性を感じるとき。
人の実験では、生後8週以降の乳児を対象とした母子分離実験があります。母親と同じ部屋で5分間あやしたり、話しかけたりしてもらい、その後母親が静かに部屋から出ていくと、乳児の額の体温が下がることが証明されています。
自律神経が緊張して、額の血管が収縮し、乳児が緊張状態に陥ることを示しています。ラットの実験では人の乳児に相当するラットを放置すると、最初は母親を求めるように泣きますが、そのまま放置され続けると、泣き止みじっとして動かず体温の低下が始まり、24時間後に亡くなります。
泣き始めるとまもなく、成長ホルモンの分泌低下が始まり、生きる能力が低下し始めます。泣き止む頃には、ストレスホルモの一種であるステロイドホルモンのグルココルチコイドの分泌が増加し、通常の1000%程度まで増加します。このホルモンは脳の記憶や学習能力、ストレス耐性に関わる海馬と、情動の中枢である扁桃体などに作用し、いずれも将来的に萎縮するように働きます。将来、学習能力が低下したり、ストレスに弱い状態に陥ったり、感情のコントロールが上手く行かなくなることがあります。
一方、いつも抱っこされて、心地よい思いを与えられると、乳児の脳内でオキシトシンと呼ばれるホルモンが産生され、グルココルチコイドの分泌を押さえ、脳をストレスホルモンの影響から護ることが分かっています。また、乳児期に心地よい思いを与えられ、乳児期に脳内でオキシトシンが産生されたマウスは、将来子育て行動を取ることができると報告されています。
子育て行動を上手く行うことができても、母親と子どもとが二人だけになることは危険で、猿山のサルは、集団生活をしていると問題なく育児ができていても、集団から離され母親と子ども二人だけにされると、母親が子どもを攻撃するようになります。
子どもと接することができず、外来で接する治療を行っている母親のほとんどは、抱っこされたことがない、母乳を与えられたことがない、ほめられたことがない、厳しくしつけられたなどの不適切な養育環境が隠れています。
泣いているわが子を見て、抱き上げたいと感じるか、強い不安に襲われたり、イライラしたりして抱き上げたくないと感じるかは、本人が子どもの頃に受けた養育環境に左右されるようです。児童精神に関わる精神科の医師は、生後6か月頃までの期間が最も大切であろうと述べています。
生後6か月は母乳だけで充分な栄養補給ができる時期で、その間は常に抱っこして、心地よいお思いを与えることが重要であろうと考えられます。
母乳育児はとても大切で、これまで述べられてきた効用以外にも、母乳中に分泌されるオキシトシンを吸入すると、母親も子どもも、相手を信頼できるようになる可能性が考えられています。その間、育児は母子だけで行うものではなく、誰かが傍にいて見つめたり支えたりすることが必要です。
核家族化が進み、育児を支える環境が整わず、あっと言う間に生後6か月は過ぎてしまいます。
また、残念なことに、最近は、幼児期からの外遊びが少なく、十代の運動も少ないためか、背筋力が戦後一貫して低下し、背筋力を体重で割った背筋力指数が低下してしまいました。
背筋力指数が1.5を下回ると、抱こすると腰を痛めてしまします。日本人女性の背筋力指数は多くの場合1.5を下回っています。生後6か月間の育児はとても大切で、その間を上手に経過できると、その後は良好な育児環境の習慣ができて、大きく崩れることはなさそうです。
外来にお見えになる7か月健診時の親子の姿を見せていただくと、とても良い状態と、とても悪い状態の方々は、将来の姿が浮かびます。育児上手く行かないことには、多くの因子が関与します。特に自分が受けた養育環境の影響が気付かないところで大きく影響しています。
何とか、糸口を見つけて、接することができるように考えてみてください。他人を信頼して、助けを借りて育児してください。二人だけは危険です。
補足
未熟な大きな脳を持った霊長類はその脳が完成し、独り立ちできるまでは、親は間違いなく子どものための存在で、子どもが親のための存在になった時をabuse:虐待と呼びます。子どものための存在となるにはどうすべきか最善の答えはなく、答え探そうとすることが大切です。
白川先生 福岡新水巻病院小児科
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いかがでしたか、抱かれることの大切さそして早めに赤ちゃんの出すいろいろなサインを、感じ取ってください。
赤ちゃんが欲しがるときは授乳のタイミングです。お産をした産院の指導が3時間置きという指導をされていたらそれは大きな間違いです。
人工乳は3時間しないと消化しませんが、母乳は1時間~1時間半で消化します。頻回に授乳することがとても大切です。
泣く前に、サインを感じ取って授乳してあげてください。
一人でも多くの方が心穏やかに、楽しく子育てが出来るように願っています。
とても参考になりますのでお読みください。
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2ヶ月の男の子の赤ちゃんとの接し方がつかめず不安ばかりの毎日です。
2ヶ月の男の子(3370g;5060g)について。日当たりのいい部屋で寝かせていますが泣くたびに1日そこで過ごすと逆に私がストレスがたまってしまい好きな家事をしたいのですが泣かせてまでするべきか本当は赤ちゃんの相手をしないとダメではと考えていつも悩んでしまいます。
また縦抱きが大人しくなるのですが肩こりが辛くついつい抱っこをやめて泣かせてしまうことも多いです。その場合5分から15分で泣きやんで10分から数10分寝ています。自分が頑張ればいいのですが体力がついていかず最後には泣き声にイライラしてしまい、それが赤ちゃんの心の発達に影響しないかとも不安です。
赤ちゃんの機嫌のいい時はガラガラを目で追わせたり話かけたりしているのですが泣き出すと抱っこして、でも自分が疲れて泣かせてしまう。
こんな風に接していてちゃんと育ちますか?また抱っこすると泣き止むということは母乳が足りていると考えていいですか?昼間たまにミルクを足して抱っこしていると寝る時が多いです。
夜はだいたい9時に母乳とミルクで4時まで寝ます。赤ちゃんとの接し方がつかめず不安ばかりの毎日です。
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回答 たまごママネット医師団
人の体は200万年間生理的には大きな変化無く、赤ちゃんは今も200万年前も今もほぼ同じような状態で産まれてくると考えられます。
何故赤ちゃんは泣くのかを考えてみると,命にかかわる重大事に泣くのであろうと考えられます。飢餓状態にさらされたときと、他の捕食肉獣に食われるかもしれない危険性を感じるとき。
人の実験では、生後8週以降の乳児を対象とした母子分離実験があります。母親と同じ部屋で5分間あやしたり、話しかけたりしてもらい、その後母親が静かに部屋から出ていくと、乳児の額の体温が下がることが証明されています。
自律神経が緊張して、額の血管が収縮し、乳児が緊張状態に陥ることを示しています。ラットの実験では人の乳児に相当するラットを放置すると、最初は母親を求めるように泣きますが、そのまま放置され続けると、泣き止みじっとして動かず体温の低下が始まり、24時間後に亡くなります。
泣き始めるとまもなく、成長ホルモンの分泌低下が始まり、生きる能力が低下し始めます。泣き止む頃には、ストレスホルモの一種であるステロイドホルモンのグルココルチコイドの分泌が増加し、通常の1000%程度まで増加します。このホルモンは脳の記憶や学習能力、ストレス耐性に関わる海馬と、情動の中枢である扁桃体などに作用し、いずれも将来的に萎縮するように働きます。将来、学習能力が低下したり、ストレスに弱い状態に陥ったり、感情のコントロールが上手く行かなくなることがあります。
一方、いつも抱っこされて、心地よい思いを与えられると、乳児の脳内でオキシトシンと呼ばれるホルモンが産生され、グルココルチコイドの分泌を押さえ、脳をストレスホルモンの影響から護ることが分かっています。また、乳児期に心地よい思いを与えられ、乳児期に脳内でオキシトシンが産生されたマウスは、将来子育て行動を取ることができると報告されています。
子育て行動を上手く行うことができても、母親と子どもとが二人だけになることは危険で、猿山のサルは、集団生活をしていると問題なく育児ができていても、集団から離され母親と子ども二人だけにされると、母親が子どもを攻撃するようになります。
子どもと接することができず、外来で接する治療を行っている母親のほとんどは、抱っこされたことがない、母乳を与えられたことがない、ほめられたことがない、厳しくしつけられたなどの不適切な養育環境が隠れています。
泣いているわが子を見て、抱き上げたいと感じるか、強い不安に襲われたり、イライラしたりして抱き上げたくないと感じるかは、本人が子どもの頃に受けた養育環境に左右されるようです。児童精神に関わる精神科の医師は、生後6か月頃までの期間が最も大切であろうと述べています。
生後6か月は母乳だけで充分な栄養補給ができる時期で、その間は常に抱っこして、心地よいお思いを与えることが重要であろうと考えられます。
母乳育児はとても大切で、これまで述べられてきた効用以外にも、母乳中に分泌されるオキシトシンを吸入すると、母親も子どもも、相手を信頼できるようになる可能性が考えられています。その間、育児は母子だけで行うものではなく、誰かが傍にいて見つめたり支えたりすることが必要です。
核家族化が進み、育児を支える環境が整わず、あっと言う間に生後6か月は過ぎてしまいます。
また、残念なことに、最近は、幼児期からの外遊びが少なく、十代の運動も少ないためか、背筋力が戦後一貫して低下し、背筋力を体重で割った背筋力指数が低下してしまいました。
背筋力指数が1.5を下回ると、抱こすると腰を痛めてしまします。日本人女性の背筋力指数は多くの場合1.5を下回っています。生後6か月間の育児はとても大切で、その間を上手に経過できると、その後は良好な育児環境の習慣ができて、大きく崩れることはなさそうです。
外来にお見えになる7か月健診時の親子の姿を見せていただくと、とても良い状態と、とても悪い状態の方々は、将来の姿が浮かびます。育児上手く行かないことには、多くの因子が関与します。特に自分が受けた養育環境の影響が気付かないところで大きく影響しています。
何とか、糸口を見つけて、接することができるように考えてみてください。他人を信頼して、助けを借りて育児してください。二人だけは危険です。
補足
未熟な大きな脳を持った霊長類はその脳が完成し、独り立ちできるまでは、親は間違いなく子どものための存在で、子どもが親のための存在になった時をabuse:虐待と呼びます。子どものための存在となるにはどうすべきか最善の答えはなく、答え探そうとすることが大切です。
白川先生 福岡新水巻病院小児科
**************
いかがでしたか、抱かれることの大切さそして早めに赤ちゃんの出すいろいろなサインを、感じ取ってください。
赤ちゃんが欲しがるときは授乳のタイミングです。お産をした産院の指導が3時間置きという指導をされていたらそれは大きな間違いです。
人工乳は3時間しないと消化しませんが、母乳は1時間~1時間半で消化します。頻回に授乳することがとても大切です。
泣く前に、サインを感じ取って授乳してあげてください。
一人でも多くの方が心穏やかに、楽しく子育てが出来るように願っています。