前述したように、宿物神イメージの中身は、物質に触発された「神秘的な感情・感慨」のみでした。
そこには、神を説明する「言葉」は含まれていません。
社殿の奥を拝んで「ウーン」と念じても、お地蔵さんや仏像に手を合わせても、人の心に生じるのは漠然とした感慨のみです。
最近、天皇陛下の退位とかで、涙で手を合わせている人民の姿がテレビで繰り返し放映されましたが、彼らの心理もそうでしょう。
感慨・感情は心にジーンとくるような「実感の重み」のようなものは与えますが、「この神とはこれこれのものだ」という言葉による定義や説明はないのです。
言葉がなければ、「理解」もありません。
いってみれば、宿物神(在物神)は自己説明をしない「感慨の神」なのです。
では、創造神イメージはどうでしょうか。
今回は、それを考えましょう。
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<創造神イメージには当初実感がない>
創造神イメージの形成プロセスは、つぎのごとしです。
① まず(万物の)創造神という言葉を投げかけられます。
② 創造神という名(言葉)は、「自分以外の万物を創造した神」という属性の説明を、自らの内に(当初から)含んでいます。
③ それを受信すると、心にそのイメージが理念として形成されます。
④ そのイメージは、抱く当人に、当初は何の感慨も与えません。
⑤ その実在感は、事後的に増大させうるものです。
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余談です。
上記で、理念の「理」とは「筋道」です。
「念」は「深く意を注いだ思い」です。
「念を込めて」といいますね。
「念力(深い思いが発揮する力)」ともいいますね。
~あの念です。
だから理念とは「筋道だった深い思い」となります。
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ついでにもう一つ余談を。
こういう流れの話を聞くと、「ああこの著者は、自分がクリスチャンなものだから、創造神イメージの方に読者を持って行こうとしているな」との心配をする人も出るでしょう。
心配ご無用。
「神について理解なんていらない、神の本質は神秘的な感慨だ」という思想もれっきとしてある。
これを、神秘主義といいます。
それがいいという人は、堂々とそっち(宿物神イメージ)を選んで人生を歩めばいい。
大切なことは、対極的な姿勢をも知ることです。
両者を知った上で、一つを選んだらいいのです。
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<代わりに理(筋道)がある>
話を戻します。
理念で出来ている創造神イメージは、当初心にジーンとくる感慨は引き起こさないのですが、その代わりに、心の中には言葉で説明された「理屈」を含んでいます。
「この神様は自分以外の万物を創造しているのだよ」というような「理屈」ですね。
+++
理屈とは、「筋道」だった思想です。
先ほど理念は「筋道」だった「念」だと言いましたが、念より「思想」の方がもう少し具体的なニュアンスを持っています。
+++
筋道のことを、漢字で「理」とも書きます。
よく、「人間には感情とともに理性が与えられている」といいますね。
この「性」は「能力」を意味しています。
つまり、理性とは理(筋道)をイメージに描く能力なのですね。
だから「感情と理性が与えられている」という上記のフレーズは、「人間には物事に対して、感情を抱く能力とともに筋道を描く能力も与えられている」よ、といっているわけです。
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この筋道能力が創造神イメージには大いに関与しています。
だが、どう関わっているか、というあたりはもう少し具体的でないと、わかりづらいですね。
次回に具体例を挙げて示しましょう。
(続きます)
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