コムラーという名前のレンズは、今では「渋い」なのか、「誰も使わないよ」なのかわからないが、何とも昭和的な佇まいを感じさせる「もの」である。飯田鉄『コムラーレンズ物語』(所収『カメラこだわり読本2002-2003』毎日ムック)によると、三協光機はコムラー銘を1955年頃から使い始め、80年代初頭まで存続させている。工場は台東区の北稲荷町(のちに東上野に移転)にあったそうで、まさしく下町の町工場で作られたレンズだったということになる。このあたりには、ペンタックスの修理で名高い長谷川工作所もあり、何度かオーバーホールをお願いしたことがある。長谷川工作所も、横丁にある町工場そのものだ。なお、三協光機からアベノン光機が生まれ、ごく最近までライカマウントのレンズを作っていたが、残念ながらいまでは活動を止めている。
描写はというと、使ったことがあるライカマウントの35mmF3.5(もう手元にない)と、ここで紹介するM42マウントの24mmF4だけから言えば、「可もなく不可もなく」といったところだ。さほどシャープでもないし、目を見張るような点もない。しかし、「渋い」ものであれば、それでいいのだ。24mmは、四隅の光量がいきなりなくなり、イメージサークルぎりぎりのようだ。昔の一眼用の広角だから当然といえば当然だが、歪曲収差は結構ある。
この24mmはプリセット方式である。つまり、予め絞りを決めておいて、ピントを合わせたら撮影する直前に手で絞る(決めておいた絞りで止まる)。超広角だから問題ないが、望遠寄りの場合には、そんなことをしている間に、ピントがずれるに違いない。こんな玉を相手にするので、もたもたする手間はなるべく省いたほうがよい。そんなわけで、AEを利用したいので、アダプターを介してペンタックスLXを使った。・・・・・・こんな話、敢えて不便なことをしているだけで、興味のない人にはまったくナンセンスである。でもいいのだ、「渋い」のだから。
旧江戸川 PENTAX LX、W-KOMURA 24mmF4、コダックE100G、ダイレクトプリント
旧江戸川 PENTAX LX、W-KOMURA 24mmF4、コダックE100G、ダイレクトプリント
旧江戸川 PENTAX LX、W-KOMURA 24mmF4、コダックE100G、ダイレクトプリント
何だか怪しい道具のような佇まい