先日、北京からの帰路、『胡同の一日』(鈴木勉)という短編映画も観た。「ANA MEETS ARTS」という若手アーティスト支援プログラムに選ばれた作品ということだ。
ある胡同に住んでいる漢方薬医の男は、店の取り壊しを機に別の土地に引っ越すことを考える。最後に残った大きな薬箪笥を買ってくれる人を見つけ、なんと自転車にそれを載せてよろよろと走る。途中何度も、路上で薬を処方する破目に陥る。人と触れ合ううちに、胡同での漢方薬医という商売を続けることを決意、箪笥を売るのをやめる。もう店はないので、自転車にがっちりと箪笥を据えつける。
あんな塗り壁のようなものが胡同を移動しても、皆声をかけはしても文句は言わない。不自然でもない。胡同の雑然とした様子が、ミニミニのロードムーヴィー風に示される。あたたかくて面白い・・・・・・のだが、長いドラマCMを見ているような気分。きっと日本人が作ったことと無縁ではない。
汐留の建設産業図書館には、なぜか中国を紹介するDVDもそろっている。『北京胡同 四合院』(中国中外文化交流中心、2000年)は20分ほどの紛う方なき観光映像で、日本語を含め10言語の吹き替えが用意されている。
たいした期待もせずに観たが、いつ撮られたのかわからない、きっと最近ではないフィルムの映像がとてもよい。クリアなテレビカメラで撮られるよりも、埃っぽい空気、陽だまり、色褪せた装飾なんかの雰囲気が抜群で、兼高かおるの番組を思い出してしまう。
言われれば当たり前なのだが、いままであまり意識しなかったこと。胡同は南北に走る道路から横に入り、東西に伸びていることが多い(皇帝は北から南を睥睨するので当然だ)。また、四合院も主人の居る場所は北側、門は南側。ということは、胡同を歩くと北側にばかり門があるということか。そんなことはないと思うが。
現在、北京には2,000を超える数の胡同があるという。元朝の時代には400だった。また、狭い胡同には幅40cmほどのものがあるらしい。そのような猫道的な胡同の映像はなかったが、ぜひ探してみたいところだ。
●胡同の映像
○胡同の映像(1) 『胡同のひまわり』
○胡同の映像(2) 『胡同の理髪師』
●写真 北京の古いまち
○北京の散歩(1)
○北京の散歩(2)
○北京の散歩(3) 春雨胡同から外交部街へ
○北京の散歩(4) 治国胡同、三源胡同
○牛街の散歩
○盧溝橋