Sightsong

自縄自縛日記

フレッド・アンダーソンの映像『TIMELESS』

2009-06-30 23:45:17 | アヴァンギャルド・ジャズ

AACMの創設にも関わったフレッド・アンダーソンは1929年生まれということだから、いま80歳である。シカゴのデルマークから出されているDVD『TIMELESS, LIVE AT THE VELVET LOUNGE』は2005年の記録だから、このとき76歳。年齢のことばかりを言うのは間違っているが、それにしても驚異的である。アンダーソンは前傾姿勢でテナーサックスを重そうに持ち、しかし、アンダーソン節を吹き続ける。この人は何者だ。

メンバーは、ハリソン・バンクヘッド(ベース)、ハミッド・ドレイク(ドラムス)とのトリオ。コードに調和的な美しいメロディーを吹く人ならともかく、アンダーソンのような即興に賭ける音楽家は、テンションがピアノやギターのコードとぶつかるだろうから(この場合、何だか眠くなってしまう)、ピアノレスのサックス・トリオという編成が理想に近い。

冒頭の「FLASHBACK」からいきなり全開である。次の「ODE TO TIP」は、亡くなった友人の名前をタイトルに入れていることもあってか、やや叙情的になる。ここでバンクヘッドのベースの存在感が増す。3曲目「BY MANY NAMES」は、ドレイクが手持ちの大きな中東風の太鼓を叩き、いい響きのバンクヘッドと一緒にムードを盛り上げる。その中に、アンダーソンは絶妙とはとても言えないタイミングで入っていくが、なぜかすぐに一体化してしまう。ドレイクは唄いもする。最後の「TIMELESS」は、ドレイクの活力的なドラムスが煽り、アンダーソンはそれを受けて吹きまくる。

あるフレーズの種を見つけ、それを核として幾様にも発展させ、即興のひとかたまりの時間は長かったり短かったりする。解説のジョン・リトワイラーに言わせれば発見と冒険、そしてアンダーソンは「まさに人生のようなものだ―――人生は謎だ」と語る。これがアンダーソン節である。この、毎回異なる発見と冒険に立ち会うためには、シカゴのヴェルヴェット・ラウンジに駆けつけなければならないに違いない・・・・・・。