前回から十年以上経つだろうか、山口の生家の墓参りのため、山道を登った。どこから入るのか忘れていて、携帯で生家に電話しながら特定するなどかつてあり得なかった。歩き始めてみるとすべて思い出してくる。
山道 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100
生家の墓につながる急な上り坂には、コンクリブロックで石段が拵えてある。中学生のころ、これを造る手伝いをしたとばかり記憶していたが、親は、おまえは厭きっぽいからすぐに投げ出したんだよという始末。どうやら私は都合のいいように記憶を捏造していた。
石段 Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100
墓の横の石には故人の名前が彫ってある。中には、戦時中に米軍に撃沈された輸送船に乗っていた者も、敗戦直後に旧満州で何者かに殺害された者もいる。7年ほど前、久しぶりに祖母の名が追加された。
墓の横には椿が咲いていた Pentax MZ-S、FA★24mmF2.0、Velvia 100
墓の手前には、昔の火葬場の跡がいまだに残っている。ふたつの石の上に棺を乗せ、下から薪で火を付ける方法である。私の生まれるほんの少し前、1969年に亡くなった曾祖母を荼毘に付したのが最後だったという。