先日久しぶりに、マイラ・メルフォードのピアノ・トリオによる傑作、『Alive in the House of Saints』(hat ART、1993年録音)を聴いていたところ、音がへなへなとよれていく。あれおかしいなと思い盤面を見ると、CD内部のアルミ蒸着膜が腐食している。本人にサインを貰った大事なCDであり結構ショックだった。そういえば、同じような症状が、マックス・ローチ+アーチー・シェップ『The Long March Part 1』(hat ART、1979年録音)にもあった。ボーズのWave CDでは音飛びがしても、単体のCDプレイヤーだと上手く信号を補正してくれるのか、再生がおかしくはならなかった。
CDが出始めの頃、そんな話があった。ソニーの社長が「○○年はもちます」と発言し、○○年しか持たないのかという噂が流れたりとか、CDの樹脂によっては塩素がアルミに悪さをして腐食させるのだ、とか。この2枚が両方ともHAT HUT RECORDSのものであることは何を意味するのだろう。当時怪しい素材を使っていたのかな。
そんなわけで、ディスクユニオンに『Alive in the House of Saints』の新版(hatLOGY、1993年録音)の中古盤があったので買い直した。旧版の6曲に未発表4曲が追加され、2枚組になっている。同じレコード会社だがレーベルが変わり、すぐにぼろくなる紙ジャケットになっている。
曲が増えたとは言っても、やはりマイラの名曲「Evening Might Still」と「Jump」が中心であるから、印象はまったく変わらない。リンゼイ・ホーナーのベース、レジー・ニコルソンのドラムスとアスリートのように絡み合い、ギンギンに悦びを発散させる演奏である。何を聴いてもマイラは素晴らしい。ソロライヴを聴いたとき、ヘンリー・スレッギル『Makin' a Move』(Columbia、1995年)に収録されている「Noisy Flowers」に加え、キメの「Jump」を弾いたことが嬉しかったことを覚えている。