気が付くとウィリアム・パーカーのベースが割と好きになっている。名前も見かけもかたいため損をしているが(考えすぎか)、繰り出してくる音楽もベースの音も極めて柔軟である。セシル・テイラーやアンソニー・ブラクストンやペーター・ブロッツマンとの共演の顔が剛の者、古き良き黒人音楽のオルガン・カルテットやカーティス・メイフィールド集といった吃驚してしまう演奏が柔の者。悲しみを知るケンシロウかどうかわからないが、ラオウでもトキでもある、これが愉快なところだ。
ニッティング・ファクトリー(行ってみたい!)でのソロ・ベース演奏集『Testimony』(zero in、1994年)も、その両面を持つ。轟音をたてて大きなコントラバスの筺体が軋み音を発するかと思えば、柔らかいピチカートもある。アルコとピチカートとのミクスチャーも愉快。世にソロ・ベース集は少なくなく、ソロである分プレイヤーの個性が出るのが魅力だが、これもそのような1枚だ。
最近何気なく中古盤を買ったのが、デイヴ・バレル『Expansion』(HIGH two、2004年)。バレルのピアノ、アンドリュー・シリルのドラムス、ウィリアム・パーカーのベースとのピアノトリオである。バレルのような硬質なピアノはさほど好みでもないのだが、即興で攻める曲も、ラグタイム風の曲もあり、聴けばやはり良い。アンドリュー・シリルのドラムスは、時空間を横展開するのではなく、縦構造での果敢な積み上げが特徴であるような印象で、やはり生で観たい。
そしてパーカーのベースはここでも柔軟で、地響きのような軋みを聴けば嬉しくなるのは当然としても、Koraという弦楽器でのギターのような演奏もアルコも素晴らしい。
パーカー来日しないかな。
●参照
○ジョー・ヘンダーソン+KANKAWA『JAZZ TIME II』、ウィリアム・パーカー『Uncle Joe's Spirit House』 オルガン+サックスでも随分違う
○ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集
○ブラクストン、グレイヴス、パーカー『Beyond Quantum』
○ESPの映像、『INSIDE OUT IN THE OPEN』(ウィリアム・パーカーが語る)
○サインホ・ナムチラックの映像(ウィリアム・パーカー参加)
○ペーター・ブロッツマン(ウィリアム・パーカー参加)
○セシル・テイラーのブラックセイントとソウルノートの5枚組ボックスセット(ウィリアム・パーカー参加)