愛すべきテナーマン、フランク・ロウの発掘盤がESPレーベルから出ていて、それを早く聴きたいところなのだが、とりあえずは気持ちを鎮めるために、棚にあったCIMPレーベルの2枚を聴く。両方、サックス、ベース、ドラムスのトリオである。
■ 『Bodies & Soul』(CIMP、1995年)
Frank Lowe (ts)
Charles Moffett (ds)
Tim Flood (b)
何といってもチャールズ・モフェットの参加である。オーネット・コールマンとの共演で鳴らしたこのドラマーは、『"At The "Golden Circle", Stockholm』と変わらぬ勢いで、シンバルをばしゃんばしゃんばしゃんばしゃんと、バスドラムをど、どんどんどどんと叩きまくる。ひたすらに格好良いのだ。
もう敢えて聴く人も少ないかもしれないが、日本制作によるグループ「G. M. Project」(「General Music」の意味だったと記憶している)のドラマーでもあって、それも期待して、1997年2月、ブルーノート東京に聴きに行った。ところが急の来日中止、代役のドラマーが誰だったかは覚えていない。ケニー・ギャレット、息子のチャーネット・モフェット、それからピアノが・・・名前が出てこない、エルヴィン・ジョーンズとも来日していた男(誰か思い出してください)。
モフェットはその公演期間中に亡くなった。なお、トニー・ウィリアムスもそのすぐ後に亡くなり、世界は相次いでふたりの偉大なドラマーを失ったのだった。
なお、この盤では、オーネット・コールマンの「Happy House」、ジョン・コルトレーンの「Impressions」、アート・アンサンブル・オブ・シカゴの「For Lourie」、ドン・チェリーの「Art Deco」を演奏しており、彼らに相応しい感がある。もちろん、「んっ」という感じでタメを作り、ノリも音色も独特なフランク・ロウのソロはとても良い。締めくくりに、ロウが無伴奏で「Body & Soul」を吹く。これが枯れていてまた嬉しい。
■ 『Vision Blue』(CIMP、1997年)
Frank Lowe (ts)
Steve Neil (b, Guinea harp)
Anders Griffen (ds)
録音は1997年2月19-20日、6日前の14日にモフェットが亡くなっている(ライナーノートには、もともとその日にジョー・マクフィーとの録音を予定していたとあるが、それでは前述の東京公演中止はどういうことだろう)。そんなわけで、ジャケットも録音も、モフェットのスピリットに捧げたものとなっている。
とは言え、モフェット色が演奏に反映されるわけはない。演奏はすべて短めであり、他のふたりの個性が薄いためか、ロウの変態サックスの独壇場と化している。
CIMPレーベルから他のフランク・ロウ作品はないのかと調べてみると、このサックストリオによる2枚の他、ジョー・マクフィー(ここではトランペットを演奏)とのカルテット、そしてさらに、2002年に、バーン・ニックスのギターを入れたカルテットを吹きこんでいる(>> リンク)。オーネット・コールマンのプライムタイムにおけるギタリストである。これもプライムタイム味なのか?