連休も仕事、こんな日は怪獣映画で癒されるに限る。そんなわけで、本多猪四郎『空の大怪獣ラドン』(1956年)を観る。
幼少期、テレビでは頻繁にゴジラ映画を放送していたが(勿論、1984年に復活した橋本幸治『ゴジラ』以前である)、なぜかこの『ラドン』は記憶になかった。はじめて観たのは、大学1年生のとき、三鷹にあった名画座「三鷹オスカー」においてだった。『ゴジラ』(1954年)、『ラドン』(1956年)、『モスラ』(1961年)の本多猪四郎作品豪華三本立て、一巡し再度、愛する『ゴジラ』を観ておしまいにした記憶がある。(大学に入って何をかなしんで怪獣映画を観ているのか。)
「三鷹オスカー」は小屋そのものの汚い映画館で、トイレに入ると外の騒音が盛大に聞こえた。まさか後年、伝説のように語られるようになろうとは夢にも思わなかった。奥泉光『鳥類学者のファンタジア』というジャズ小説でも、この映画館を懐かしそうに振り返っていて笑ってしまったことがある。
『ラドン』は、本多猪四郎(監督)、円谷英二(特撮)、伊福部昭(音楽)、さらに学者役の平田昭彦と、『ゴジラ』に重なるキャストとスタッフである。映画としての出来でみれば、迫力、時代的必然性、切実さのどれをとっても『ゴジラ』の水準にはまったく達していないのだが、それでも面白い。ラドンが襲うのは、阿蘇(存在しない炭鉱が設定されている)、佐世保、福岡。北京から20分でマニラを通過し、米軍占領下の沖縄も経由する。福岡の市街は古すぎて、これが遠賀川なんだろうな、といった程度しかわからないが、瓦屋根がラドンの風圧で吹き飛ぶところなど、手作りの特撮が見事。今の目で観ると、本当に新鮮なのだ。