Sightsong

自縄自縛日記

1984年12月8日、高木元輝+ダニー・デイヴィス+大沼志朗

2012-08-19 10:11:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

先日ライヴハウス「七針」で、ドラマーの大沼志朗氏と話をしていて、そういえば大沼さんのプレイを前回聴いたのはもう10年以上前、高木元輝さんとの共演だ、と伝えたところ、いろいろと高木氏の逸話を語ってくれた。

そして、この間、家を整理していたら、随分前に共演したテープが出てきたんだよ、スゲー良いんだよ、との仰天する話。程なくして、そのテープを送ってくださった。

高木元輝(ss, ts)
Danny Davis(as, fl)
大沼志朗(ds)
松本「彗星倶楽部」にて、1984年12月8日録音

ダニー・デイヴィスはサン・ラのグループに長く所属したプレイヤーで、妙な押し出しの強いサックスを吹いている。それに高木元輝の野蛮なテナーサックス、大沼志朗の大きな波のようなシンバルが絡んでいく。大沼氏に聞いた通り、凄い記録だ。

高木元輝のテナーサックスに接するたびに、圧倒されつつ何か割り切れないような思いを抱く。野太いといえばそれまでだが、強烈な臭気を放つ獣のようであり、また外からの攻撃をものともしない甲殻類のようでもあり、しかし人間くさく優しいアジア・ブルースでもある。ソプラノサックスになると、ロジカルな感じというのか、内省的というのか、また違った印象を受ける。

いや何ともこれは・・・。


高木元輝+大沼志朗、2000年 Pentax MZ-3、FA50mmF1.4、TMAX3200、フォルテ・ポリウォームトーンプラスRC、2号フィルタ使用

●参照
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『滄海』
加古隆+高木元輝+豊住芳三郎『新海』、高木元輝+加古隆『パリ日本館コンサート』
豊住芳三郎+高木元輝 『もし海が壊れたら』、『藻』
高木元輝の最後の歌
広瀬淳二+大沼志朗@七針


伊坂幸太郎『グラスホッパー』

2012-08-19 01:36:59 | 思想・文学

伊坂幸太郎『グラスホッパー』(角川書店、原著2004年)を、「kobo Touch」で読む。

実に奇妙奇天烈な、殺し屋たちの物語だ。依頼を受け、道路脇から背中を押して自動車に轢き殺させる「押し屋」。政治家やその秘書などを自殺させる「自殺屋」。誰もが嫌がる類の殺人を行う殺し屋。毒殺専門の殺し屋。彼らを支える「劇団」。情報通。

さながらそれは「殺し屋業界」である。それぞれが、互いに微妙に存在を意識しながら接点をもたないはずが、ある事件をきっかけに、衝突へと突き進んでいく。

おそらくは、自殺した後に陰謀を囁かれた政治家たちの存在が、発想のきっかけではなかったか。あまりのストーリーテリングの巧さに、本当にこの業界があるように思えてならなくなる。

殺し屋たちや、復讐のために業界に入った主人公は、皆、自らの内なる声を聞く。それが幻影となり、身を滅ぼす者もある。しかし、主人公のように、大事に思っていた他者の声を聞く者は、対照的に、とにかく生き抜くことになる。

生きることは生きることだというトートロジー、あるいは『ゴールデンスランバー』で描いたように、逃げると生きるとの重なりが、大きなメッセージとなって最後に襲ってくる。この作家に、また、妙に心を動かされてしまった。

●参照
伊坂幸太郎『ゴールデンスランバー』と中村義洋『ゴールデンスランバー』
伊坂幸太郎『重力ピエロ』と森淳一『重力ピエロ』
齋藤惣菜店のコロッケと伊坂幸太郎のサイン