米軍海兵隊によるオスプレイ導入が強行されているなか、「10万人沖縄県民大会に呼応する8・5首都圏集会」(2012/8/5、日本教育会館)が開かれた。一方の沖縄では、台風の影響により、県民大会が延期された。
広い会場は、1000人くらいの人数でぎっしり。普段は年齢層の高い場だが、今回、30、40代くらいの若い顔もちらほら見える。これは明らかな変化である。
ステージ上には、大きなオスプレイの模型がある。地獄の幻視のために作られたものだ。ただ、落ちてくるオスプレイの先で怯える女の子の人形は見られなかった(一部で批判があった)。
開会と呼びかけ団体の挨拶のあと、高橋哲哉氏(東大)により、問題提起がなされた。高橋氏は、次のように述べた。
○オスプレイの安全性に関して信用できない報告をもとに、強行配備されることを懸念する。これは、福島原発事故や大飯原発再稼働において見られた野田政権の本質をあらわしている。それは、国民の安全は二の次であり、米国の方を向いた政治だということだ。断固として反対しなければならない。
○戦後安保体制は沖縄を犠牲にし、原発は地元や労働者や採掘地域の先住民を犠牲にしている。これらは、犠牲があることを前提に成り立っている「犠牲のシステム」である。しかしこれは、日本国憲法上正当化できない。
○沖縄問題では、常にヤマトゥとの温度差がある。この集会でも、数万人、数十万人にはなっていない。
○構造的差別を許すことは、ヤマトゥの民が、差別者・加害者の側であり続けることを意味する。
○「本土の沖縄化」(便宜的に本土と呼ぶ)と言われるが、それは疑問だ。なお沖縄に圧倒的な犠牲が押し付けられているのである。本土にオスプレイが来なければ反対しないのか?いや、そうであってはなるまい。
○日本では、反対の声をあげることは、「偏った人」と見られがちであり、そのために多くの者が中立を装う。しかし、沈黙することは、差別者であることと同じである。
エイサーの披露、沖縄県人会のアピール朗読のあと、「ゆんたく高江」のメンバーが、会場内で長い布をくるくると広げはじめた。実はこれが、オスプレイの縦と横の長さを示すものだという。広いホールのなかでなかなか広げ終わらない。想像力を少し働かせるだけで、墜落の怖ろしさが襲ってくる。
厚木基地爆音訴訟の藤田榮治氏は、50年あまり続いているという厚木基地の反対運動について述べた。
基地機能が強化されるに伴い爆音被害も拡大している。この2月には道路に部品を落下させ、5月には突然の通告により離着陸訓練が行われ、聞いたことのないレベルの爆音が響いた。米軍の横暴極まりない行為は目に余るものだが、日本政府は何も働きかけようとしない。それがすべての元凶なのだ―――と。
次に、JUCON(沖縄のための日米市民ネットワーク)の花輪伸一氏が、環境影響について指摘した。
辺野古の新基地建設に関する環境アセスメントは、途中までオスプレイの存在を隠していたという点でアセス法違反であること。高江のヘリパッドに関して沖縄防衛局が行った「自主的な環境アセスメント」でも、オスプレイ運用計画を隠していたこと。それにより、やんばるのノグチゲラやヤンバルクイナが絶滅の淵に追いやられること。本土でもオスプレイが低空飛行すれば、山岳地域のイヌワシやクマタカといった猛禽類の生態に大きな影響を与えること。
ここで、社民党の福島瑞穂党首が登壇した。
福島氏は、オスプレイの安全性に関する調査報告書が形式的に片付けられてしまうのではないかとの懸念を示しつつ、原発と同様、事故が起きてからでは遅いのだと強調した。また、森本防衛大臣がオスプレイに乗るというパフォーマンスを激しく批判した。
次に、沖縄平和運動センターの山城博治氏からの電話でのメッセージ、岩国からの文書メッセージが読み上げられたあと、ジンタらムータが登場した(大熊ワタルのクラリネットに、ギター、アコーディオン、チンドン太鼓)。彼らはジャズやフォークに根ざした泥臭いグループであり、時に抒情的、時に激情的。「不屈の民」、「平和に生きる権利」(チリのビクトル・ハラの曲)、それから沖縄民謡の「えんどうの花」と「ヒヤミカチ節」を演奏した。
最後に、辺野古の座り込みを続けておられる安次冨浩氏(ヘリ基地反対協)が、電話により、オスプレイをめぐる日米両政府の対応を激しく批判した。沖縄で同日に県民大会が開けなかったのは、5万人では少ない、10万人集会にせよとの神様のお告げに違いない、などと、会場を笑わせながら。
集会のあと、デモ行進が行われた。わたしは別の用で参加しなかったが、リアルタイムの映像が次々と発信されたようだ。
●参照
○オスプレイの危険性
○6.15沖縄意見広告運動報告集会
○オスプレイの模型
○60年目の「沖縄デー」に植民地支配と日米安保を問う
○辺野古の似非アセスにおいて評価書強行提出
○前泊博盛『沖縄と米軍基地』
○屋良朝博『砂上の同盟 米軍再編が明かすウソ』
○渡辺豪『「アメとムチ」の構図』
○シンポジウム 普天間―いま日本の選択を考える(1)(2)(3)(4)(5)(6)
○『世界』の「普天間移設問題の真実」特集
○大田昌秀『こんな沖縄に誰がした 普天間移設問題―最善・最短の解決策』
○二度目の辺野古
○2010年8月、高江
○高江・辺野古訪問記(2) 辺野古、ジュゴンの見える丘
○高江・辺野古訪問記(1) 高江
○沖縄・高江へのヘリパッド建設反対!緊急集会
○ヘリパッドいらない東京集会
○今こそ沖縄の基地強化をとめよう!11・28集会(1)
○今こそ沖縄の基地強化をとめよう!11・28集会(2)
○「やんばるの森を守ろう!米軍ヘリパッド建設を止めよう!!」集会(5年前、すでにオスプレイは大問題として認識されている)
○高橋哲哉『犠牲のシステム 福島・沖縄』、脱原発テント