NHKで放送された『Megaquake III 巨大地震』(2013/8/31, 9/1)。
前回放送(2013/4/7, 14)(>> リンク)の続編たる第3回と第4回であり、それぞれ「よみがえる関東大震災~首都壊滅・90年目の警告~」、「南海トラフ 見え始めた”予兆”」と題されている(>> リンク)。
番組のポストカード
関東大震災は1923年9月1日、つまり、ちょうど90年前に発生した。
震源地は相模湾から房総半島南部までの広い範囲に及んだ。フィリピン海プレートの沈み込みに伴い蓄積されたエネルギーが解放されたものであり、典型的なプレート境界型地震であるとともに、都市直下型地震でもあった。
当時の地震計の記録を用いた最新の研究によると、このとき、震度7以上の揺れとなった地域は、神奈川から南房総まで広範囲にわたり、実に阪神・淡路大震災の20倍の面積であった。
死者・行方不明者は10万人超、その9割は火災により亡くなっている。しかも、その3分の1は、墨田区の横網町公園において、「火災旋風」という現象によって、である。多方面で発生する火災が、煙と炎を伴う恐るべき竜巻を起こし、人びとを巻き上げ呑み込んだというのである。
90年という時間をどうとらえるべきか。館山に、過去の大震災による隆起の跡が残されており、それによれば、大震災の間隔は短くても200年であった。しかし、さらにボーリング調査を行うと、地表で視える隆起だけでは大震災の歴史を捉えきれていなかったことがわかってきたという。また、南房総から東のエリアは、関東大震災でもエネルギーが解放されておらず、かなりのエネルギーが蓄積され、解放されるのを待っているという。すなわち、やはり、いつ次の首都直下型地震が起きてもおかしくはない。
但し、こういった研究は、いわゆる「予知」ではない。可能性が高まっていることは推測できても、いつそれが起きるか、本当に起きるのか、については、予測できないわけである。GPSを用いた精緻な測地によって、今後、「予兆」を捉えることができるのかについては、まだ言うことができる者はいない。番組は、そのあたりを、意図的に曖昧にしているように思えた。
第4回では、「スロー・クエイク」(NHK用語?)に焦点を当てている。東日本大震災でも、発生の1か月以上前から起きていたという、地震計にしか捉えられない微細な「遅い地震」。これが、プレート境界に蓄積したエネルギーをじわじわと解放し(その点だけで言えば、大地震でないために良い現象なのだが)、それが、プレート境界の固着エリアたる「アスペリティ」の断裂を促進したとする。
南海トラフでも、通常の地震源を取り囲むようなエリアにおいて、「スロー・クエイク」が起き続けている。これと、GPSによる精緻な測地情報とを組み合わせて、何とか大地震発生の「予兆」が捉えようとされている。
しかし、同様に「スロー・クエイク」異常発生が観測され警戒されていた北米西岸では、突然それが消え、大地震にはつながらなかった。すなわち、こういった考えも、まだ模索段階にすぎず、「予知」には至らない。
番組の最後では、「叡智を結集して、云々」と空虚なことばが並べたてられていた。メカニズムの研究と「予知」との距離はまだまだ遠く、現在の時間的・地理的解像度では、いつ何どき大地震が起きても何とかなるような対策を講じるべきである。
●参照
○『Megaquake III 巨大地震』
○『The Next Megaquake 巨大地震』
○大木聖子+纐纈一起『超巨大地震に迫る』、井田喜明『地震予知と噴火予知』
○ロバート・ゲラー『日本人は知らない「地震予知」の正体』
○島村英紀『「地震予知」はウソだらけ』
○東日本大震災の当日