Sightsong

自縄自縛日記

デイヴィッド・マレイ『Be My Monster Love』、『Rendezvous Suite』

2013-09-22 23:00:00 | アヴァンギャルド・ジャズ

デイヴィッド・マレイの先日のライヴがまだ生々しい記憶として残っている。メンバーはビッグバンドゆえ多かったが、コンセプトが同じ『Be My Monster Love』(Motema、2012年録音)は、より少ない面々で演奏している。

何しろ、メイシー・グレイである。ライヴでは予想よりも遥かに堂々たる姿に圧倒されてしまったのだったが、声は、こすれるようなハスキーな感じで、しかも可愛いときている。それなのに歌う曲は「Be My Monster Love」というイシュメール・リード作詞の凄い歌。もうアケスケというか何というか。「窓を半分開けておいたから/よじ登ってきて、私の首はあなたのもの/貧血になるまで吸って/ベッドから出られなくなるまで」などと続くのである。 

もちろん、マレイのテナーサックスは絶好調で、バンド全体ももの凄くエネルギーに満ちている。これもメイシー・グレイ効果なのかな。ぜひこの路線を続けてほしいところ。

David Murray (ts)
Marc Cary (p, org)
Nasheet Waits (ds)
Jaribu Shahid (b)
Bobby Bradford (tp) (7)
Macy Gray (vo) (2)
Gregory Porter (vo) (4, 6, 8, 9)

それに比べると、やはり最近の『Rendezvous Suite』(Jazzwerkstatt、2009年録音)はどうも物足りない。ジャマラディーン・タクマとの双頭作なのだが、タクマのベースギターに乗って、マレイが得意のフレーズを吹くだけ。息子のミンガス・マレイにも花を持たせたりしていて、それはそれでカッチョいいのだが、ただのセッションを聴いているだけ。

マレイは多作ゆえ、いろいろあるということだ。悪くはないのだけど。 

Jamaaladeen Tacuma (bass g)
David Murray (ts, bcl)
Paul Urbanek (key)
Mingus Murray (g)
Ranzell Merrit (ds)

●参照
デイヴィッド・マレイ・ビッグ・バンド featuring メイシー・グレイ@ブルーノート東京
デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』
デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』
デイヴィッド・マレイのグレイトフル・デッド集
マル・ウォルドロン最後の録音 デイヴィッド・マレイとのデュオ『Silence』
マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(デイヴィッド・マレイ『Special Quartet』)
ワールド・サキソフォン・カルテット『Yes We Can』
スティーヴィー・ワンダーとメイシー・グレイの『Talking Book』


天児慧『中華人民共和国史 新版』

2013-09-22 08:46:43 | 中国・台湾

天児慧『中華人民共和国史 新版』(岩波新書、2013年)を読む。

本書は、抗日戦争や国共内戦を前史として、1949年の中華人民共和国成立から現在の習近平・李克強体制までを追っている。

通史書は歴史を猛スピードで見ていくものであり、中国という歴史上の試行錯誤のあり様に、ある種の感慨を抱く。そして、歴史に「たら、れば」はないが、どうしても、他の歴史があり得たのだと思ってしまう。

毛沢東というカリスマの指導力が少しでも小さいものであったなら、ここまで上意下達の巨大国家ではなかったかもしれない。米国の帝国主義的な介入が少しでも遅れていれば、台湾という独自国家はなかったかもしれない。80年代に、鄧小平が岐路に立たされたとき、ストロングマンの主導する国家でなく民主主義を尊重する国家という道を選択していれば、まったく別の形の国家になっていたかもしれない。

このように数十年単位でのダイナミクスを見ていくと、将来、中国という国家を現在の延長として捉えることが如何に短絡的かと考えざるをえない。将来から振り返ってみれば、既に、必然の種は播かれているかもしれないが、どの種がどのように成長するかわかったものではない。一方、日本の政治は将来のヴィジョンすら共有せず、形の上でのストロングマンを希求するありさまだ。

●参照
天児慧『巨龍の胎動』
天児慧『中国・アジア・日本』
汪暉『世界史のなかの中国』
汪暉『世界史のなかの中国』(2)
加々美光行『中国の民族問題』
加々美光行『裸の共和国』
加々美光行『現代中国の黎明』 天安門事件前後の胡耀邦、趙紫陽、鄧小平、劉暁波
L・ヤーコブソン+D・ノックス『中国の新しい対外政策』
豊下楢彦『「尖閣問題」とは何か』
孫崎享・編『検証 尖閣問題』
堀江則雄『ユーラシア胎動』
『世界』の特集「巨大な隣人・中国とともに生きる」
『情況』の、「現代中国論」特集
国分良成編『中国は、いま』
ダイヤモンドと東洋経済の中国特集
白石隆、ハウ・カロライン『中国は東アジアをどう変えるか』
竹内実『中国という世界』
加藤千洋『胡同の記憶』
沙柚『憤青 中国の若者たちの本音』
丸川哲史『台湾ナショナリズム』