エド・ブラックウェル『Walls-Bridges』(Black Saint、1992年録音)は、1996年の発売当時からずっと愛聴している。何しろ、デューイ・レッドマン入りのピアノレストリオであり、エキサイティングでない訳がない。
ところが、ほどなくして同タイトルの2枚組が出た。店頭で手に取ってみたが、1曲「Dewey Square」が増えただけ。釈然としない気持ちのまま、新盤を聴くこともなかった。
勿論、ずっと気になってはいたので、今回思い出して新盤を入手した。
旧盤
新盤
Ed Blackwell (ds)
Dewey Redman (ts)
Cameron Brown (b)
聴き比べてみてすぐにわかった。旧盤は新盤よりも明らかにピッチが速いのだ。単純に収録時間を比較してみたところ、すべての曲において、新盤の演奏の長さが旧盤のそれの1.09-1.1倍程度にもなっている。
旧盤が出された後に、何かひと悶着あったのだろうか。片方だけを聴いている分には、言われなければわからない。ただ、当人たちにとっては、明らかな音楽の違いである。確かに、旧盤を聴いて感じていた切迫感のようなものが、新盤には希薄である。その分、新盤ではレッドマンが迷いながらソロを繰りだしていく過程が聞こえるようで嬉しい。
レッドマンのサックスは、音が太く、エッジが丸く、味があって本当に好きである。ブラックウェルのタイコも、いつものお祭り感満載。「ブーン、ブーン」と全体を駆動するブラウンのベースもいい。
そんなわけで、今後は両方聴いてもいいような気がしている。
●参照
○カール・ベルガー+デイヴ・ホランド+エド・ブラックウェル『Crystal Fire』
○マル・ウォルドロンの映像『Live at the Village Vanguard』(エド・ブラックウェル参加)
○エリック・ドルフィー『At the Five Spot』の第2集(エド・ブラックウェル参加)
○シャーリー・クラーク『Ornette: Made in America』 オーネット・コールマンの貴重な映像(エド・ブラックウェル参加)
○キース・ジャレットのインパルス盤(デューイ・レッドマン参加)
○鈴木志郎康『隠喩の手』(キース・ジャレットのアメリカン・カルテットを流している)