Sightsong

自縄自縛日記

野坂昭如『新宿海溝』

2013-11-12 08:02:50 | 関東

野坂昭如『新宿海溝』(文藝春秋、1979年)を読む。確か、福岡の古本祭り「ブックオカ」で気が向いて買ったような。

講談調というのか、読点だらけであてもなく引きずられる、お馴染みの野坂スタイルの話芸。

タイトルから、新宿界隈で蠢く人間たちの物語だろうと思って読み始めた。実際そのようなものなのだが、しばらく読んで、これは野坂昭如自身を主人公にした自伝小説だということに気が付いた。道理で、石堂淑朗だの丸谷才一だの大島渚だのといった実在の人物たちが登場するわけだ。なお、新宿でいえば、「どん底」や「ピットイン」(もちろん、古い場所のほう)も出てくる。

彼らは毎晩のように飲みながら、だらしなく、粘っこく生きのびていく。読んでも元気など出ず、ただ脱力する。そのせいか、通勤途中で腹痛に襲われ、慌ててトイレに駆け込んだ。

●参照
平井玄『愛と憎しみの新宿』
新宿という街 「どん底」と「ナルシス」
歌舞伎町の「ナルシス」、「いまはどこにも住んでいないの」
半年ぶりの新宿思い出横丁とゴールデン街
堀田善衛『若き日の詩人たちの肖像』(かつてのナルシスが舞台)
田村隆一『自伝からはじまる70章』に歌舞伎町ナルシスのことが書かれていた
東松照明『新宿騒乱』
大島渚『新宿泥棒日記』