『Rocket Science』(Moreismore Records、2012年録音)。グループ名義のセッションだが、ここでの目玉は、やはり、巨匠エヴァン・パーカーにピーター・エヴァンスがいかに絡んでいくか。
Evan Parker (ts, ss)
Peter Evans (tp, piccolo tp)
Craig Taborn (p)
Sam Plura (laptop)
実にファンタジックな1時間のライヴである。このような場に居合わせたとしたら、朦朧として、しばらくは現実世界に戻ることができないだろう。
重力を失った時空間で絡むのは、パーカーとエヴァンスだけではない。ラップトップから発せられる電子音までもが、サックス、トランペットとともに組んず解れつ。彼らは決して同じ位相には居続けない。タテから見れば同じ場でのステップでも、ヨコから見ればなぜか別の場。あるいは、1周回れば別の複素平面。彼らが自在に行き来するのは、そんな抽象的な位相間である。
そのなかで、クレイグ・テイボーンのピアノは音楽に着地点を与えているような印象がある。もっとも、着地点なんてなくてもよいのではあるが。
●参照
○ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』
○ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』
○ピーター・エヴァンス『Ghosts』
○ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』
○1988年、ベルリンのセシル・テイラー(エヴァン・パーカー参加)
○ネッド・ローゼンバーグの音って無機質だよな(エヴァン・パーカーとのデュオ)
○ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(エヴァン・パーカーとのデュオ)
○アレクサンダー・フォン・シュリッペンバッハ『ライヴ・イン・ベルリン』(エヴァン・パーカー参加)
○シュリッペンバッハ・トリオの新作、『黄金はあなたが見つけるところだ』(エヴァン・パーカー参加)
○デイヴ・ホランド『Prism』(テイボーン参加)