中川右介『山口百恵 赤と青とイミテイション・ゴールドと』(朝日文庫、2012年)を読む。
不世出の歌手、山口百恵。13歳のときにオーディション番組『スター誕生!』に登場してから、21歳で引退するまで、活動期間はわずか7年余りに過ぎない。
彼女が歌う姿をテレビで視ていたのは、わたしがまだ小学生のときだった。どちらかと言えば、ピンクレディーや沢田研二のマネなんかをしていて、百恵はヘンな顔だなあと思っていた記憶がある。しかし、いまあらためて当時の百恵の映像を観ると、ただごとでないアウラをまとっていたことを否が応でも実感させられる。その佇まいから推察できる覚悟は、二十歳前後の人間のものとは思えない。
本書を読み進めていくと、そのアウラが、商売のために創り上げられたただの虚像に過ぎないものではなく、虚構の山口百恵と生身の山口百恵との相克によって生み出されたものだったことがわかる。そして、生身の山口百恵が虚構の山口百恵を圧倒していったとき、歌手・山口百恵は本物となり、そして結婚と同時に引退することとなった。
もし、山口百恵が芸能活動を続けていたら、著者のいうように、80年代にトレンディ・ドラマなどに登場していたのだろうか。ちょっと想像を超えてしまう。