高橋和夫『中東から世界が崩れる イランの復活、サウジアラビアの変貌』(NHK出版新書、2016年)を読む。
サウジアラビア王室の世代交代とムハンマド・ビン・サルマン副皇太子の登場、イランの国際舞台への復帰、サウジとイランとの確執、トルコにとってのクルド人(国内、シリア北部、イラク北部)の位置づけなど、最新の情勢までを手際よく解説してある。
「べらんめえ調」とも思えるような歯切れのよさゆえ解りやすくはある。その一方で、サウジアラビアやその他の湾岸諸国を「国もどき」とばっさりと言い切っていることには違和感がある。歴史があり強固な国民統合があるように見えるネイションに大きな価値を置きすぎているのではないかと思えるわけである。これもイランへの肩入れによるものか。
●参照
鵜塚健『イランの野望』
桜井啓子編『イスラーム圏で働く』、岩崎葉子『「個人主義」大国イラン』
アレズ・ファクレジャハニ『一家族三世代の女性から見たイラン・イスラム共和国』
ジョン・フィルビー『サウジ・アラビア王朝史』
保坂修司『サウジアラビア』
中東の今と日本 私たちに何ができるか
酒井啓子『<中東>の考え方』
酒井啓子『イラクは食べる』