ルシアン・バン『Songs From Afar』(Sunnyside、2014年)を聴く。
Lucian Ban (p)
Abraham Burton (ts)
John Hebert (b)
Eric McPherson (ds)
Mat Maneri (viola)
Gavril Tarmure (vo)
ルシアン・バンはルーマニア出身のピアニスト。とはいえ初耳で、サイドメンの顔ぶれに惹かれて買ってしまった。
テーマはトランシルバニア地方の心象風景的なものか。3曲では現地の歌も挿入され、ピアノもサウンドもとても静謐で美しい。それだけであれば敢えて聴くこともなかったかもしれないが、なかなか聴きどころが多い。
まずはエイブラハム・バートン。かれと同じくジャッキー・マクリーンに師事したレイモンド・マクモーリンは、兄弟子バートンのことを話すたびに「ソウル・ブラザー」だと呼び、慕っている。昔はアルトを吹いていて、わたしは、ひたすら同じ音を繰り返すスタイルが好きになれなかった。そのスタイルはテナーに持ち替えたいまでも変わらない。しかし、昨年(2015年)、ニューヨークのスモールズでかれのプレイを観たとき(ジョシュ・エヴァンス@Smalls)、それがアドリブの限界なのではなく、意図して選んでいることが実感できたのだった。そしてここでは、いつもの熱い音楽と違うサウンドにあわせて、実に細やかなフレーズを放っている。まるでグレッグ・オズビーのようでもあるのだ。
また、ジョン・エイベア、エリック・マクファーソン、マット・マネリがそれぞれに個性を発揮している。
●エイブラハム・バートン
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』(2013年)
●ジョン・エイベア
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)
●エリック・マクファーソン
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
●マット・マネリ
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)