Sightsong

自縄自縛日記

ルシアン・バン『Songs From Afar』

2016-08-14 14:41:23 | アヴァンギャルド・ジャズ

ルシアン・バン『Songs From Afar』(Sunnyside、2014年)を聴く。

Lucian Ban (p)
Abraham Burton (ts)
John Hebert (b)
Eric McPherson (ds)
Mat Maneri (viola)
Gavril Tarmure (vo)

ルシアン・バンはルーマニア出身のピアニスト。とはいえ初耳で、サイドメンの顔ぶれに惹かれて買ってしまった。

テーマはトランシルバニア地方の心象風景的なものか。3曲では現地の歌も挿入され、ピアノもサウンドもとても静謐で美しい。それだけであれば敢えて聴くこともなかったかもしれないが、なかなか聴きどころが多い。

まずはエイブラハム・バートン。かれと同じくジャッキー・マクリーンに師事したレイモンド・マクモーリンは、兄弟子バートンのことを話すたびに「ソウル・ブラザー」だと呼び、慕っている。昔はアルトを吹いていて、わたしは、ひたすら同じ音を繰り返すスタイルが好きになれなかった。そのスタイルはテナーに持ち替えたいまでも変わらない。しかし、昨年(2015年)、ニューヨークのスモールズでかれのプレイを観たとき(ジョシュ・エヴァンス@Smalls)、それがアドリブの限界なのではなく、意図して選んでいることが実感できたのだった。そしてここでは、いつもの熱い音楽と違うサウンドにあわせて、実に細やかなフレーズを放っている。まるでグレッグ・オズビーのようでもあるのだ。

また、ジョン・エイベア、エリック・マクファーソン、マット・マネリがそれぞれに個性を発揮している。

●エイブラハム・バートン
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ルイ・ヘイズ@COTTON CLUB(2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)
ルイ・ヘイズ『Return of the Jazz Communicators』(2013年)

●ジョン・エイベア
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』
(2014年)
ジョン・エスクリート『Sound, Space and Structures』(2013年)
Book of Three 『Continuum (2012)』(2012年)

●エリック・マクファーソン
ジョン・エイベア@The Cornelia Street Cafe(2015年)
ジョシュ・エヴァンス@Smalls(2015年)
ジョシュ・エヴァンス『Hope and Despair』(2014年)

●マット・マネリ
イングリッド・ラブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
ジェン・シュー『Sounds and Cries of the World』(2014年)
クリス・デイヴィス『Rye Eclipse』、『Capricorn Climber』(2007、12年)


ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』

2016-08-14 10:44:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

ブランカート+エヴァンス+ジェンセン+ペック『The Gauntlet of Mehen』(Destiny Records、2015年)を聴く。

Louise Dam Eckardt Jensen (as, fl, vo, electronics)
Peter Evans (tp)
Dan Peck (tuba, electronics)
Tom Blancarte (b)

何だこれというジャケット。どうやら昔のRPG「ガントレット」にインスパイアされた音楽のようであり、コンセプトは、楽器を使ってファンタスティックな冒険をするというもの。よくわからないが、少なくともピーター・エヴァンスとかダン・ペックとか、ぜんぜん似ていない(笑)。どうでもいいことだが。

確かにかれらは楽器を駆使してヘンな音を放ち続け、ドラマを作る。エヴァンスの循環呼吸や泡立つような音も、これでもかと低音から一緒に持ち上げるペックのチューバとブランカートのベースは面白くもある。エレクトロニクスもヴァーチャル世界的。しかし、個人的にまったく共感できる体験がないためか、まったく気持ちが盛り上がらない(笑)。ゲーム好きの心の琴線に触れるところでもあるのかな。

●ピーター・エヴァンス
トラヴィス・ラプランテ+ピーター・エヴァンス『Secret Meeting』(2015年)
Pulverize the Sound@The Stone(2015年)
Rocket Science変形版@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー US Electro-Acoustic Ensemble@The Stone(2015年)
エヴァン・パーカー ElectroAcoustic Septet『Seven』(2014年)
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
『Rocket Science』(2012年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
エヴァン・パーカー+オッキュン・リー+ピーター・エヴァンス『The Bleeding Edge』(2010年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
MOPDtK『Blue』(2014年)
MOPDtK『The Coimbra Concert』(2010年)
MOPDtK『Forty Fort』(2008-09年) 

●トム・ブランカート
チャン+エヴァンス+ブランカート+ウォルター『CRYPTOCRYSTALLINE』、『Pulverize the Sound』(2013、15年)
ピーター・エヴァンス『Destiation: Void』(2013年)
ピーター・エヴァンス『Ghosts』(2011年)
ピーター・エヴァンス『Live in Lisbon』(2009年)

●ダン・ペック
イングリッド・ラブロック UBATUBA@Cornelia Street Cafe(2015年)
イングリッド・ラブロック『ubatuba』(2014年)
トニー・マラビー『Scorpion Eater』、ユメール+キューン+マラビー『Full Contact』(2008、13年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)


ウェイン・エスコフェリー『Live at Firehouse 12』

2016-08-14 01:44:26 | アヴァンギャルド・ジャズ

ウェイン・エスコフェリー『Live at Firehouse 12』(Sunnyside、2013年)を聴く。

Wayne Escoffery (ts)
Rachel Z (key)
Orrin Evans (p)
Rashaan Carter (b)
Jason Brown (ds)

この盤のことを知らなかったのだが、レイチェルZとオリン・エヴァンスとがフィーチャーされていて傑作に違いないと思い入手した。聴いてみるとやはり傑作だった。

冒頭は手探りするような曲調で、エスコフェリーのテナーをレイチェルZのキーボードが包み込むような雰囲気。そして2曲目にエヴァンスが入ってくる。音数が少ないがその分一音一音が重く、とてもブルージーである。全編でレイチェルZのアレンジは宇宙的でポップ、素晴らしい。ウェイン・ショーター『High Life』(1995年)も、彼女の貢献なくしてはあれほどの傑作にならなかったに違いない。

エスコフェリーのテナーはドライでいて、音色には微妙な綾がある。ノッて吹きまくるところなんかもなかなか良い。

●参照
ウェイン・エスコフェリー『Live at Smalls』(2014年)
オリン・エヴァンス+エリック・レヴィス@新宿ピットイン(2016年)
オリン・エヴァンスのCaptain Black Big Band @Smoke(2015年)
オリン・エヴァンス『The Evolution of Oneself』(2014年)
オリン・エヴァンス『"... It Was Beauty"』(2013年)
タールベイビー『Ballad of Sam Langford』(2013年)(オリン・エヴァンス参加)