Sightsong

自縄自縛日記

田村夏樹+3人のピアニスト@なってるハウス

2016-08-04 08:35:44 | アヴァンギャルド・ジャズ

入谷のなってるハウスに足を運び、「田村夏樹3days」の最終日(2016/8/3)。

Natsuki Tamura 田村夏樹 (tp)
Mikio Ishida 石田幹雄 (p)
Hisaharu Teruuchi 照内央晴 (p)
Satoko Fujii 藤井郷子 (p)

この日は、田村さんが3人のピアニストそれぞれとデュオ演奏を行うという趣向だった。演奏の順番は、じゃんけんで決定された。

1) 田村夏樹+石田幹雄

サウンドの衝突具合を模索するように、跳ねるように、タッチ・アンド・ゴーを続けるピアノ。やがてトランペットの音が乗ってくると、ピアノも跳躍しながら鮮やかに並走する。抑制のときには、トランペットは堪えながら風の音を発し、石田さんはクラシックピアノのような美しい旋律を奏でるが、靴を脱いだ右足はダンパーペダルのうえで痙攣している。跳躍のピアノと短いパッセージによる点火のトランペットがやがて融合し、どちらともなく離れて演奏が終わった。

2) 田村夏樹+照内央晴

ミュートを使いながら、風のような音、話しかけるような音、トロンボーンのような音までも発する田村さん。照内さんのピアノは、石田さんのそれとは随分異なり、より構成主義的なものに感じられた。模索の間合いの大きさや、いちどの意思で繰り出すフラグメンツとコンポジションの大きさがより大きいというのか。田村さんはゆっくりと、まるで練習曲で音を確かめるようにトランペットを吹き、横のテーブルに置いた玩具を弄んだ。ここで緊張感が漲る融合があり、照内さんはかっと前の虚空を凝視して田村さんとの間合いをはかり、ほどなくして別の軌道に乗って離脱していった。

3) 田村夏樹+藤井郷子

「夫婦漫才か」と笑いながらはじまったデュオ。田村さんは「トランペット、飽きちゃった」と、手で口を覆い、楽器のような音を出し始める。藤井さんは弦の上に電子音を発する器具を置き、また、テグス、ゴム板、木の棒などで弦に触れ、電子音のようにも邦楽のようにも聴こえる素晴らしい響きの数々を放った。さすがである。ここまで見事な技は観たことがない。

実は田村さんも藤井さんも、ずいぶん前に、師匠・松風鉱一さんに呼んでいただいてNHKのスタジオで観て以来なのだった。

●参照
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)(石田幹雄参加)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)(石田幹雄参加)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)(石田幹雄参加)
石田幹雄トリオ『ターキッシュ・マンボ』(2008年)