Sightsong

自縄自縛日記

安ヵ川大樹+高田ひろ子@本八幡Cooljojo

2016-08-07 20:45:33 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のCooljojoに足を運び、昼のライヴ(2016/8/7)。

Daiki Yasukagawa 安ヵ川大樹 (b)
Hiroko Takada 高田ひろ子 (p)

ファーストステージ、「How Do You Keep the Music Playing?」(ミシェル・ルグラン)、「紫陽花」(高田)、「Choro Bandido」(エドゥ・ロボ)、「加計呂麻」(安ヵ川)、「Inner Voices」(高田)。セカンドステージ、「The Deep Valley」(安ヵ川)、スタンダード「It Never Entered My Mind」と「Stella by Starlight」、キューバの曲「Como Siento Yo」、「Kaori」(高田)。

天上なのか平行世界なのか、聴く者が呆けてしまうほど美しく響く、高田さんのピアノ。一方の安ヵ川さんのベースも中音域で多彩な表情を見せた。特に、アルコからピチカートへと移行するときの音風景の転換は実に見事だった。そしてこのふたりがアイコンタクトをしながら、それは愉しそうに、演奏を繰り広げた。

Fuji X-E2、Xf60mmF2.4開放

●参照
安ヵ川大樹+廣木光一@本八幡Cooljojo(2016年)


渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』

2016-08-07 11:23:01 | アヴァンギャルド・ジャズ

渋谷毅+市野元彦+外山明『Childhood』(Carco、2015年)を聴く。

Takeshi Shibuya 渋谷毅 (p)
Motohiko Ichino 市野元彦 (g)
Akira Sotoyama 外山明 (ds)

いやこれは、何て魅力的な音楽なんだろう。渋谷さんも市野さんも、淡々と自分自身の音という味わいを追い求めて形にしているようでいて、他者が発するサウンドのなかに、ふわっと絶妙に入ってくる。

ライナーノートでは、池上比沙之さんが、故・浅川マキさんの言葉を紹介している。「渋谷さんはね、こちらが歌ってて、ああ、こんな音が欲しいなと思う音をドンピシャのタイミングで出してくれるのよ。それがめちゃめちゃに美しくて、こちらの次の展開を開いてくれるのね。気持ちいいなんてもんじゃないわよ」と。黒田京子さんも、以前に、なぜ歌手がみんな渋谷さんの歌伴を求め、なぜそれがあれほど良いのだろう、といったようなことをブログに書いていた記憶がある。これはたぶん渋谷毅オーケストラでも同じことであって、個性集団のサックスが吹いている横の渋谷さんのピアノやオルガンにいったん注意すると、そこから耳が剥がせなくなる。そしてこのトリオでも。

ほとんどは市野さんのオリジナルだが、面白いことに、リー・コニッツの「Subconscious-Lee」も演奏している。どうしても、高柳昌行『Cool Jojo』を思い出してしまうのだが、研ぎ澄まされたクールジャズの美学が花開いたそれとは違い、ここでの演奏はまるで異なる。相互に大きく開かれたスペースにおいて、驚くほど優しい相互干渉を聴くことができる。

渋谷さんのデュオのシリーズといいながら全面的に入っている外山明さんの、自由度が異様に高いドラムスもいい。背後から演奏者たちを煽るでもかき乱すでもなく、ひたすら皆の自遊空間を拡張する面白さである。故・古澤良治郎さんのあとを継いで渋谷毅オーケストラのドラマーをずっと務めているのも、強靭にして自由なる松風鉱一カルテットで叩いているのも、きっとそういうことである(もっとも、松風さん曰く、最初のギグ直後には「ああこのグループは解散だ」と思ったそうだが)。

●渋谷毅
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
廣木光一+渋谷毅@本八幡Cooljojo(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅@裏窓(2016年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
渋谷毅+川端民生『蝶々在中』
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
渋谷毅のソロピアノ2枚
見上げてごらん夜の星を
浅川マキ+渋谷毅『ちょっと長い関係のブルース』(1985年)

●市野元彦
rabbitoo@フクモリ(2016年)
rabbitoo『the torch』(2015年)

●外山明
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
纐纈雅代『Band of Eden』(2015年)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
纐纈雅代 Band of Eden @新宿ピットイン(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
渋谷毅+津上研太@ディスクユニオン(2011年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)


アシフ・ツアハー+ヒュー・レジン+ペーター・コヴァルト+ハミッド・ドレイク『Open Systems』

2016-08-07 09:08:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

アシフ・ツアハー+ヒュー・レジン+ペーター・コヴァルト+ハミッド・ドレイク『Open Systems』(Marge、2001年)を聴く。

Assif Tsahar (ts, bcl)
Hugh Ragin (tp)
Peter Kowald (b, voice)
Hamid Drake (ds, frame ds, voice)

再発盤だというがこれまで知らなかった。アシフ・ツアハーとペーター・コヴァルトとの共演であれば、『Deals, Ideas & Ideals』の翌年、また、『Live at the Fundacio Juan Miro』の前年の記録である。オーネット・コールマンの「Lonely Woman」からはじまり、あとはオリジナルである。

ハミッド・ドレイクのドラムスは実に多彩で、快感なほどあちこちのタイコから思わぬリズムが飛んでくる。先の2枚はそれぞれラシッド・アリ、サニー・マレイとの共演だが、個性も強さも決して引けを取らない。また、アシフ・ツアハーのテナーは独特な音を持っており、まるで嗚咽し、唸り、呪うようでもある。

そして、ペーター・コヴァルトの絹のようなベースの音色を再確認する。ソロで細い音を出すときも、重層的な音を出すときも、また他のメンバーがわれもわれもと叫ぶときも、絹のコヴァルトがずっと聴こえている。この翌年には亡くなるというのに。

●ペーター・コヴァルト
アシフ・ツアハー+ペーター・コヴァルト+サニー・マレイ『Live at the Fundacio Juan Miro』(2002年)
ラシッド・アリ+ペーター・コヴァルト+アシフ・ツアハー『Deals, Ideas & Ideals』(2000年)
ペーター・コヴァルト+ヴィニー・ゴリア『Mythology』(2000年)
ペーター・コヴァルトのソロ、デュオ(1981、1991、1998年)
エバ・ヤーン『Rising Tones Cross』(1985年)

●アシフ・ツアハー
アシフ・ツアハー+ペーター・コヴァルト+サニー・マレイ『Live at the Fundacio Juan Miro』(2002年)
ラシッド・アリ+ペーター・コヴァルト+アシフ・ツアハー『Deals, Ideas & Ideals』(2000年)

●ハミッド・ドレイク
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』(2008、10年)
デイヴィッド・マレイ『Live at the Edinburgh Jazz Festival』(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
フレッド・アンダーソンの映像『TIMELESS』(2005年)
ヘンリー・グライムス『Live at the Kerava Jazz Festival』(2004年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2002年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ジョー・モリス w/ DKVトリオ『deep telling』(1998年)
ペーター・ブロッツマン『Hyperion』(1995年)


木村尚『都会の里海 東京湾』

2016-08-07 08:37:24 | 環境・自然

木村尚『都会の里海 東京湾 人・文化・自然』(中公新書ラクレ、2016年)を読む。

昔と違って、東京湾は汚染度が低く、実にさまざまな生き物が集まっている。なんとここでは絶滅したと言われていたハマグリさえ復活の兆しがあるという(なお、アメリカ船にくっついてきた外来種ホンビノスガイは「白ハマグリ」とも呼ばれ、すっかりポピュラーになった)。

これには、河川から流入する汚染や汚濁の減少、稚貝や稚魚の放流、水辺環境の改善などが大きく貢献している。三番瀬では干潟を人工的に造成することに対する議論がなされてきたが、著者は、人工干潟については肯定的にとらえているようだ。それはおそらく、水辺環境は人が常に生活の場として立ち入ることによって成り立ってきたという考えがある。

本書には、三番瀬や盤洲干潟といった代表的な干潟だけでなく、江戸川・荒川・隅田川・多摩川の河口、海ほたる(行ったことがないが)、お台場、内湾と外湾との間に首都防衛のために作られた海堡など、さまざまな場所でみられる生き物の面白さが、手際よくまとめられている。読んでいると何かを食べに行きたくもなってしまう。

●参照
豊かな東京湾
東京湾は人間が関与した豊かな世界
船橋側の三番瀬 ラムサール条約推進からの方針転換
『みんなの力で守ろう三番瀬!集い』 船橋側のラムサール条約部分登録の意味とは
浦安市郷土博物館『三角州上にできた2つの漁師町』
市川塩浜の三番瀬と『潮だまりの生物』
三番瀬を巡る混沌と不安 『地域環境の再生と円卓会議』
三番瀬の海苔
三番瀬は新知事のもとどうなるか、塩浜の護岸はどうなるか
三番瀬(5) 『海辺再生』
三番瀬(3) 何だか不公平なブックレット
三番瀬にはいろいろな生き物がいる(2)
三番瀬にはいろいろな生き物がいる
船橋の居酒屋「三番瀬」
『青べか物語』は面白い
谷津干潟
井出孫六・小中陽太郎・高史明・田原総一郎『変貌する風土』 かつての木更津を描いた貴重なルポ
平野耕作『キサラヅ―共生限界:1998-2002』
盤洲干潟
新浜湖干潟(行徳・野鳥保護区)
江戸川放水路の泥干潟
下村兼史『或日の干潟』
日韓NGO湿地フォーラム
加藤真『日本の渚』
『海辺の環境学』 海辺の人為
畠山重篤『日本<汽水>紀行』