Sightsong

自縄自縛日記

屋良朝秋+上原淳+大城涼子@寓話

2016-10-19 23:32:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

那覇の寓話には2005年にいちどだけ行ったきりで、そのときには屋良文雄さんもご健在だった(屋良文雄さんが亡くなった)。今年になって、建物の老朽化に伴い、松山のほうに移転したと読んで、実に11年ぶりに足を運んだ。

お店はなかなかお洒落なつくりで、旧店を意識したのだという。バーカウンターもそのまま持ってきている。入るや否や、屋良文雄さんの奥様や息子さんの屋良朝秋さんがフレンドリーに接してくれて、すぐにリラックスしてしまう。他のお客さんも含めて、とても居心地のいい場所なのだ。

屋良朝秋 (p)
上原淳 (b)
大城涼子 (cl)

演奏は曜日によって異なるようで、この日はその屋良朝秋さんのピアノに、ベースとクラリネット。「Tennessee Waltz」、「The Girl from Ipanema」、「Softly, as in a Morning Sunrise」、「Misty」など馴染み深い曲の他に、なんと「It's a Sin to Tell a Lie」なんていうオールド・ナンバーも演奏した。そして「これしか歌えないんだよ」というお客さんが、カンペを片手に「Summertime」を歌ったりもした。

屋良さんのピアノは「ゴキゲンなスイング」と言いたくなるような演奏。上原さんのベースも大城さんのクラリネットもあたたかい音色で、実に多幸感あふれる時間だった。好きな場所になってしまった。

壁には、なんと、亡くなったばかりの真喜志勉(TOM MAX)の作品がいくつも飾ってある。なんでも屋良文雄さんと親しく、演奏している横で作品を創作することもあったそうだ。作品の中に屋良さんのレコードジャケットが入れてあったりもする。欲しい!

真喜志勉さんは、また、山下洋輔とも親交があって(『越境広場』1号の真喜志勉追悼特集には山下さんも寄稿している)、その縁で、今度(2016/11/1)に沖縄県立博物館・美術館でも追悼演奏を行う(>> リンク)。そしてそのあとには、この寓話でセッションをやるのだという。ああ、また那覇に行きたい。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、XF35mmF1.4

●参照
屋良文雄さんが亡くなった(2010年)
田代俊一郎『沖縄ジャズロード』(2015年)


「日本民藝館80周年 沖縄の工芸展-柳宗悦と昭和10年代の沖縄」@沖縄県立博物館・美術館

2016-10-19 07:17:20 | 沖縄

沖縄県立博物館・美術館に足を運び、「日本民藝館80周年 沖縄の工芸展-柳宗悦と昭和10年代の沖縄」を観る。

織物、陶磁器、漆など、主に19世紀の逸品の数々。かつて柳宗悦が沖縄において「発見」したものであり、かれは芭蕉布を絶賛するなど、それらの工芸品を非常に高く評価した。

しかし、その評価は名前を持つ者による作品に対するものではなく、あくまで匿名性を前提とした民衆の手仕事に対して与えられた。それが「民藝」であった。館内で、「民藝」による1940年頃の沖縄の映像が流されている。強く印象付けられるのは、沖縄の工芸文化と技術が衰退していることへの危機感、そして、「何気ない」という言葉に象徴される、匿名性への注目である。

おそらくは、日本側と沖縄側とがお互いに求めるものが異なっていた。このすれ違いは、実際に、見過ごせないほどに顕在化してきたようである。

1940年頃の「方言論争」にあったように(戸邊秀明「「方言論争」再考」)、柳・民藝の求めたものは、純化された日本文化でもあった。従って、柳田國男に見られた側面と同様に、オリエンタリズムや日本ファシズムの文脈でも捉えなおすことが必要なようである。

坂本万七によるかつての沖縄の写真も会場において数多く展示されており、これらをまとめて写真集として観たいところ。

●参照
戸邊秀明「「方言論争」再考」 琉球・沖縄研究所
短編調査団・沖縄の巻@neoneo坐(『シーサーの屋根の下で』、日本民藝館)
村井紀『南島イデオロギーの発生』
柳田國男『海南小記』