Sightsong

自縄自縛日記

Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート(JazzTokyo)

2016-11-07 20:33:59 | アヴァンギャルド・ジャズ

六本木のスーパーデラックスにおいて開催された一連のライヴ「Sound Live Tokyo 2016」。「ピカ=ドン/愛の爆弾」(2016/9/11)、「私がこれまでに書いたすべての歌:バンド・ナイト」(9/18)(Sound Live Tokyo 2016 ピカ=ドン/愛の爆弾、私がこれまでに書いたすべての歌:バンド・ナイト(JazzTokyo))に続き、「マージナル・コンソート」(9/21)を観ることができた。

マージナル・コンソートについては、「JazzTokyo」に写真を提供しました。文章は剛田武さん。

>> #919 Sound Live Tokyo 2016 マージナル・コンソート/ツァイトクラッツァー × 灰野敬二

マージナル・コンソート:
今井和雄, 越川T, 椎啓, 多田正美

Fuji X-E2、XF35mmF1.4、XF60mmF2.4

●今井和雄
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
坂田明+今井和雄+瀬尾高志@Bar Isshee(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
今井和雄 デレク・ベイリーを語る@sound cafe dzumi(2015年)
今井和雄、2009年5月、入谷
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
バール・フィリップス@歌舞伎町ナルシス(2012年)(今井和雄とのデュオ盤)


ジュリアン・ジャロルド『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』

2016-11-07 19:12:25 | ヨーロッパ

ギンレイホールで、ジュリアン・ジャロルド『ロイヤル・ナイト 英国王女の秘密の外出』(2015年)を観る。(入院中の許可外出ゆえ、こういう場所がいろいろ良いのだ。)

1945年5月8日、ヨーロッパ戦勝記念日(VE Day)。ロンドンの市民は沸き立っている。現女王のエリザベスと妹のマーガレットは、このときこそ宮殿の外に出るチャンスだと思い、父母に交渉し、なんとか許される。そこからお忍びでの一夜のアヴァンチュールのはじまり。

要するに、『ローマの休日』的なコメディである。難しいことは考えないハッピーな映画。

面白いのは、父のジョージ6世。もともと国王になんかなるつもりがなかったのに、兄のエドワード8世が王位を投げ出したために、継承せざるを得なかったかわいそうな人である。『英国王のスピーチ』では吃音に苦しみ、なんとか国民に向けてスピーチができるようになるまでを描いているのだが、この映画はもう少しあとのこと。そのために、戦勝についてラジオで国民に語りかけるときも、その反応をやけに気にして、だからこそ娘たちの外出が許されたようなものだ。そして、相手をエリザベス王女だと知らない市民の女性は、ジョージ6世の肖像画を一瞥して、「国王なんかやりたくもなかっただろうに、頑張っているよ」と呟く場面もある。

また、ソーホー地区が当時とびきりいかがわしい場所であったとは知らなかった。街を歩くには歴史を知らなければならない。ところで、以前、ロンドンの仕事仲間に、何で日本では「SOHO (Small Office, Home Office)」なんてヘンな造語を使うんだと笑われたことがある。そういえばいつの間にか消え去った言葉である。

●参照
『英国王のスピーチ』


ロバート・バドロー『ブルーに生まれついて』

2016-11-07 12:16:19 | アヴァンギャルド・ジャズ

ロバート・バドロー『ブルーに生まれついて』(2015年)をDVDで観る。

チェット・ベイカーの伝記映画であり、クリント・イーストウッド『バード』のような行き過ぎた露出もミスキャストもなく(フォレスト・ウィティカーはどうみてもバードではない)、また、『グレン・ミラー物語』や『ベニー・グッドマン物語』のような予定調和のしょうもない作品とも異なる。

わたしはチェットの熱心なファンでもないので細かいことの真実性はわからないが、演出に関しては大人のものである。タイトル通り「ブルー」な感覚があって、いい映画だ。

もっとも、最初はイーサン・ホークの老け顔が、若くて溌剌としたプレイをしていた時代のチェットとはちょっとずれている。しかし、薬物に依存し、歯をすべて折られ、トランぺッターとしての人生を取り戻すべく地を這うような苦しみを味わったあとは、いい感じで重なってくる。むしろ、イーサン・ホークの物語のようにも見えてくる。ケヴィン・ターコットというプレイヤーが吹いているトランペットも、イーサン自身による歌も、悪くはない。晩年のプレイの深みは誰にも真似できないと思うものの……。

似ているかどうかということで言えば、ディジー・ガレスピーはともかく、マイルス・デイヴィス役のケダー・ブラウンがかなりのものだ(あまりにも違うので驚いた『MILES AHEAD』でもかれをマイルス役にすればよかった)。意地悪さもカッコよさもなかなかだ。チェットが若い頃に、ニューヨークのバードランドで対バンのマイルスに出逢ったとき(どんな対バンだ)、マイルスは、チェットに対して「Go back home to the beach, man. This ain't the place for you」と罵る。これは明らかに白人で甘い歌声を使い、若い女性たちが黄色い声で応援していることについての激しい怒りである。しかし、ロスでの雌伏のときを経て、ディジーの口利きでまたバードランドに戻ってきたとき、復帰1曲目を聴いてゆっくりと拍手をするのだった。

この映画の日本公開を機に、ブルース・ウェーバーによるチェットの傑作ドキュメンタリー『レッツ・ゲット・ロスト』も、改めて大画面で堪能したいところ。

●チェット・ベイカー
チェット・ベイカー+ポール・ブレイ『Diane』(1985年)