Sightsong

自縄自縛日記

ファラオ・サンダース+アダム・ルドルフ+ハミッド・ドレイク『Spirits』

2017-10-22 22:45:39 | アヴァンギャルド・ジャズ

ファラオ・サンダース+アダム・ルドルフ+ハミッド・ドレイク『Spirits』(Meta Records、1998年)を聴く。

Pharoah Sanders (ts, vo, wood fl, hinedewho)
Adam Rudolph (congas, djambe, udu ds, thumb p, talking ds, bendir, bamboo fl, overtone singing, gong, perc)
Hamid Drake (trap ds, frame ds, def, tabla, vo)

というかこの鼻血ブーブーがライヴ録音とはすさまじい。いやライヴでなければこのようにすべてをかなぐり捨ててスピリチュアルに突き進むのは無理か。

アフリカなのかアメリカなのか、どこの民族音楽かわからないような混沌を生み出すアダム・ルドルフとハミッド・ドレイクもケッサクだが、何しろここでは主役はファラオ・サンダースのテナー。そんなに調子に乗って吹いて叫んでぶち切れるぞおっさん。今度来日だが、どこかで単独公演をやってくれないものか。

●ファラオ・サンダース
チャーネット・モフェット『Music from Our Soul』(2014-15年)
ソニー・シャーロック『Ask the Ages』(1991年)
ファラオ・サンダースの映像『Live in San Francisco』(1981-82年)

●ハミッド・ドレイク
イロウピング・ウィズ・ザ・サン『Counteract This Turmoil Like Trees And Birds』(2015年)
ジョージ・フリーマン+チコ・フリーマン『All in the Family』(2014-15年)
マット・ウォレリアン+マシュー・シップ+ハミッド・ドレイク(Jungle)『Live at Okuden』(2012年)
ウィリアム・パーカー『Essence of Ellington / Live in Milano』(2012年)
ブッチ・モリス『Possible Universe / Conduction 192』(2010年)
サインホ・ナムチラックの映像(2008年)
シカゴ・トリオ『Velvet Songs to Baba Fred Anderson』(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Saxophone Man』(2008、10年)
デイヴィッド・マレイ『Live at the Edinburgh Jazz Festival』(2008年)
デイヴィッド・マレイ『Live in Berlin』(2007年)
ウィリアム・パーカー『Alphaville Suite』(2007年)
ウィリアム・パーカーのカーティス・メイフィールド集(2007年)
イレーネ・シュヴァイツァーの映像(2006年)
フレッド・アンダーソンの映像『TIMELESS』(2005年)
ヘンリー・グライムス『Live at the Kerava Jazz Festival』(2004年)
ウィリアム・パーカー『... and William Danced』(2002年)
アレン/ドレイク/ジョーダン/パーカー/シルヴァ『The All-Star Game』(2000年)
ペーター・コヴァルト+ローレンス・プティ・ジューヴェ『Off The Road』(2000年)
ペーター・ブロッツマン『Hyperion』(1995年)


山内桂+中村としまる『浴湯人』

2017-10-22 17:54:03 | アヴァンギャルド・ジャズ

山内桂+中村としまる『浴湯人』(Ftarri、2012年)を聴く。

Katsura Yamauchi 山内桂 (as)
Toshimaru Nakamura 中村としまる (no-input mixing board)

山内桂のサックスは、共鳴の真ん中のところを取り去って、襞やマチエールのみを増幅したようだ。

・・・と思っていたのだが、それはこのライヴ演奏の少しの間だけ。中村としまるが無情なマシンのように四方八方にエレクトロニクスの太い剛腕を突き出しまくる、それに対して、山内桂はぶん投げられたり脱臼したりすることはまるでなく、むしろ、そのまま大巨人のようにその腕に脚をかけて力強く跳躍しおおせている。凄いエンジンだな。

今回来日しているロジャー・ターナーは大分で山内さんとも共演するはずである。興味津々。

●山内桂
山内桂+マーティン・ヴォウンスン『Spanien』(2010年)

●中村としまる
竹下勇馬+中村としまる『Occurrence, Differentiation』(2017年)
クレイグ・ペデルセン+中村としまる@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
Spontaneous Ensemble vol.7@東北沢OTOOTO(2017年)
中村としまる+沼田順『The First Album』(2017年)
内田静男+橋本孝之、中村としまる+沼田順@神保町試聴室(2017年)


The Necks『Chemist』、『The Townsville』

2017-10-22 16:23:56 | アヴァンギャルド・ジャズ

雨で体調も悪いので部屋でまったりとThe Necks。

『Chemist』(ReR、2006年)には20分ほどの曲が3曲。ロック的でも室内楽的でもあり、エレクトロニカでもあり、マイルスみたいでもあり、なかなか興奮させられる。

しかし興奮度という点からは、翌年の『Townsville』(ReR、2007年)のほうが好きである。50分余1本勝負のライヴにおいて、トニー・バックのシンバルがシャープに濃淡を付けながら、ピアノトリオがスパイラルしながらも複素関数のように次の面へ次の面へとシフトしてゆき、高みへとのぼりつめる。

うう、また観たい。

Chris Abrahams (p, key)
Tony Buck (ds, g)
Lloyd Swanton (b)

●The Necks
The Necks@渋谷WWW X(2016年)


Shuta Hiraki『Unicursal』

2017-10-22 12:23:21 | アヴァンギャルド・ジャズ

Shuta Hiraki『Unicursal』(きょうRecords、2017年)を聴く。

よろすずさんである。先日ご一緒した神楽坂のプチパリや大洋レコードでもよろすずさんであったので、このたびはじめて本名を知った(笑)。

1曲目はいきなり狭い湿ったハコで反響するようなピアノの音、ちょっと意表をつかれた。あとを聴いてあらためて、これは脳に起きなさいとタップするものであったのか。

さて、目を覚まさせられて2曲目以降は、さまざまな反響音や生活音や人工音が重ね合わされる。決して人をいたずらに驚かすような壮大なものではない。そのことが、身の周りを見渡したときにふと見え隠れする地霊のような感覚を生み出している。ひとつひとつの音の流れに、小さな周波数と、大きなうねりとがあって、それが複数並行して時間を形成している。そのどれかに耳を貼り付けると、それは無意識のうちに別の音の流れに取って代わられる。

ボーナスCDの様子は異なり、もう少しサウンドを形成しようとする策動があって、聴いているうちに多幸感が出てくる。このトラックが本CDの中に紛れ込んでいても面白かったのかもしれないが、いまのように淡々と並行世界が提示されているからなお良かったのかもしれない。


ロジャー・ターナー+広瀬淳二+内橋和久@公園通りクラシックス

2017-10-22 10:04:36 | アヴァンギャルド・ジャズ

疲れているし休んでいようかと思ったが新宿駅前で雨に濡れた挙句、スルーできず、渋谷の公園通りクラシックスに足を運んだ(2017/10/21)。

Roger Turner (ds)
Junji Hirose 広瀬淳二 (ts)
Kazuhisa Uchihashi 内橋和久 (g, dax)

最初はロジャー・ターナー、内橋和久ともに単体の火花を試行的に点火し、広瀬淳二も抑制的なテナーを吹き始めた。しかし驚いたことに、ロジャーさんはすぐに「フリージャズ」と呼んでもよさそうな感覚のパワー&スピードにギアを変えた。前日のエアジンにおいて細い糸の上を歩いていくようなセンシティヴなプレイを展開したこととはまったく違っていた。

広瀬・内橋両氏のシンクロする揺れ動きも含め、しばらくはハードなプレイをしていたのだが、いきなり見事な転換。広瀬さんがサックス横の発泡スチロールを擦り、内橋さんはダクソフォン、ロジャーさんも擦る。さてどれが誰の声なのか、彼岸に連れてゆかれるようである。内橋さんからエマージェンシー的な音が発せられ、ロジャーさんが応えたりもする。

時間の操作はまるで異なっており、内橋さんの大きな揺らぎに対し広瀬ロジャー両氏の速度が共存し、そのありえなさにしばし呆然とする。また内橋さんのギターはときにブルースやロックでもあり、確信犯的なおそろしいミクスチャーを平然とみせつける。ロジャーさんが開陳する、シンバルの音のなかのまた別の音も素晴らしい。

しばし駆け抜けたあとに奇妙な静寂が創出され、ロジャーさんは<先端>(シーンの、ではなく、音そのもの)のサウンドを構築し、広瀬さんが金属でサックスの金属を擦り呼応する。サインホの声を思わせるダクソフォン、それをテナーが擬態する。逆にテナーによる狂った馬のいななきがドラムスとダクソフォンに飛び移ってゆく。最後に、ロジャーさんが鐘の音で実に鮮やかに演奏を完結させた。

セカンドセットはダクソフォンの甲高いうめきにより創られた感染病が、テナーのうめき、フォークによるシンバルの擦りへと移ってゆく。ダクソフォンとテナーとによる、くぐもって話すような音色は見事である。内橋さんはまた、ダクソフォンをベース的にも使う。ギターの大きな揺らぎ、テナーによる息の増幅、宇宙語の会話か。

ようやくサウンドがまとまった形になってきたかと思いきや、また、別々の文脈が同居するフラグメンテーションの面白さが目立ってきた。内橋さんはギターを叩き増幅させ、ロジャーさんはスピードにのって音域をどんどん拡張してゆく。

幾度もの音風景の過激な転換。分厚いギター、超速のシンバル。ロジャーさんが金属板を弓で擦る音は、広瀬さんの連続音、内橋さんの同一のコード連続へと感染する。この感染や移行の、追従との大きな違い。

そして力強いギター、発泡スチロールの擦音、騒乱、シンバルやマレットを使った残響、不穏なダクソフォンなどが提示され、またしても見事に演奏が着地した。

●ロジャー・ターナー
ロジャー・ターナー+今井和雄@Bar Isshee(2017年)
蓮見令麻@新宿ピットイン(2016年)
ドネダ+ラッセル+ターナー『The Cigar That Talks』(2009年)
フィル・ミントン+ロジャー・ターナー『drainage』(1998、2002年)

●内橋和久
U9(高橋悠治+内橋和久)@新宿ピットイン(2017年)

●広瀬淳二
クリス・ピッツィオコス+吉田達也+広瀬淳二+JOJO広重+スガダイロー@秋葉原GOODMAN(2017年)
広瀬淳二+今井和雄@なってるハウス(2017年)
広瀬淳二+中村としまる+ダレン・ムーア@Ftarri(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
広瀬淳二『SSI-5』(2014年)
広瀬淳二+大沼志朗@七針(2012年)
広瀬淳二『the elements』(2009-10年)