Sightsong

自縄自縛日記

メアリー・ハルヴァーソン『The Maid with the Flaxen Hair』

2018-12-15 09:56:16 | アヴァンギャルド・ジャズ

メアリー・ハルヴァーソン『The Maid with the Flaxen Hair』(Tzadik、2018年)を聴く。

Mary Halvorson (g)
Bill Frisell (g)

メアリー・ハルヴァーソンとビル・フリゼールとのデュオによる、ジョニー・スミスへのトリビュート盤。

アメリカーナの懐かしさと、その視線が含み持つ時間を無化してやろうといわんばかりの歪み。確かに「Shenandoah」とか「Misty」とか「The Nearness of You」とか、聴き慣れた曲がその形を変えてぐにゃぐにゃになっていくのは愉しいのだけれど、あまり野心をもって突き進んでいない感じ。先輩との形を作りたかったというアルバムかな。

●メアリー・ハルヴァーソン
サムスクリュー『Ours』、『Theirs』(2017年)
トム・レイニー・トリオ@The Jazz Gallery(2017年)
メアリー・ハルヴァーソン『Paimon: Book Of Angels Volume 32』(2017年)
トマ・フジワラ『Triple Double』(2017年)
メアリー・ハルヴァーソン『Code Girl』(2016年)
メアリー・ハルヴァーソン『Away With You』(2015年)
イングリッド・ラウブロック、メアリー・ハルヴァーソン、クリス・デイヴィス、マット・マネリ @The Stone(2014年)
『Illegal Crowns』(2014年)
トマ・フジワラ+ベン・ゴールドバーグ+メアリー・ハルヴァーソン『The Out Louds』(2014年)
メアリー・ハルヴァーソン『Meltframe』(2014年)
アンソニー・ブラクストン『Ao Vivo Jazz Na Fabrica』(2014年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Roulette of the Cradle』(2014年)
『Plymouth』(2014年)
PEOPLEの3枚(-2005、-07、-14年)
トム・レイニー『Hotel Grief』(2013年)
チェス・スミス『International Hoohah』(2012年)
イングリッド・ラウブロック(Anti-House)『Strong Place』(2012年)
イングリッド・ラウブロック『Zurich Concert』(2011年)
メアリー・ハルヴァーソン『Thumbscrew』(2013年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Mechanical Malfunction』(2012年)
ステファン・クランプ+メアリー・ハルヴァーソン『Super Eight』(2011年)
ウィーゼル・ウォルター+メアリー・ハルヴァーソン+ピーター・エヴァンス『Electric Fruit』(2009年)
アンソニー・ブラクストン『Trio (Victoriaville) 2007』、『Quartet (Mestre) 2008』(2007、08年)


貴堂嘉之『移民国家アメリカの歴史』

2018-12-15 08:47:32 | 北米

貴堂嘉之『移民国家アメリカの歴史』(岩波新書、2018年)を読む。

大きな物語としての、ナショナル・ヒストリーとしての、「移民国家」。真実ではあるのだけれど、一方で、それが都合よく語りなおされた言説であることもよくわかる。

19世紀なかばまで、新大陸に移住した黒人はヨーロッパ人の4倍もいた。すなわち「奴隷国家」であった。奴隷制が廃止されても、有償の「奴隷制」が続いた。アメリカ南部の綿花栽培などはその典型であり、19世紀前半に拡がった。「自由労働者」であってもその実は奴隷とは、当然ながら、いまの日本にだってつながっているわけである。

目立つ移民は黒人、中国人、日本人へと変遷していく。そして何かがあるたびに排斥運動が起きた。ここで重要な点が指摘される。20世紀になり、日本人は、あるいは日本政府は、他のアジア諸国と異なる「一等国」の「名誉白人」として特別扱いされるよう願い、働きかけた。人種平等提案をするにしても、それはタテマエであり、自身は中国を侵略し、民族自決を願った朝鮮を武力で鎮圧した。

もちろん日本人を含め、マイノリティの抵抗運動とそれにより勝ち取った権利は高く評価されている。しかし問題は、それが、アメリカという国家を再生する物語に回収されてきたことなのだ、としている。そこにはさまざまな非対称があり、物語から排除された人たちが少なからずいた。

では日本という国の物語はどうか。本書には、岸信介による驚くべき発言が引用されている。日系人の下院議員ダニエル・イノウエが、日系人が米国大使になる可能性について示唆したところ、岸は言い放った。「あなたがた日系人は、貧しいことなどを理由に、日本を棄てた『出来損ない』ではないか。そんな人を駐日大使として、受けいれるわけにはいかない」と。このおぞましく醜い眼差しが、いまも脈々と受け継がれている。

●参照
吉見俊哉『トランプのアメリカに住む』(2018年)
金成隆一『ルポ トランプ王国―もう一つのアメリカを行く』(2017年)
渡辺将人『アメリカ政治の壁』(2016年)
四方田犬彦『ニューヨークより不思議』(1987、2015年)
佐藤学さん講演「米国政治の内側から考えるTPP・集団的自衛権―オバマ政権のアジア政策とジレンマ」(2014年)
室謙二『非アメリカを生きる』(2012年)
成澤宗男『オバマの危険 新政権の隠された本性』を読む(2009年)
鎌田遵『ネイティブ・アメリカン』(2009年)
尾崎哲夫『英単語500でわかる現代アメリカ』(2008年)
吉見俊哉『親米と反米』(2007年)
上岡伸雄『ニューヨークを読む』(2004年)
亀井俊介『ニューヨーク』(2002年)


ジョン・ヒックス+セシル・マクビー+エルヴィン・ジョーンズ『Power Trio』

2018-12-15 08:16:53 | アヴァンギャルド・ジャズ

ジョン・ヒックス+セシル・マクビー+エルヴィン・ジョーンズ『Power Trio』(BMG、1990年)を聴く。

John Hicks (p)
Cecil McBee (b)
Elvin Jones (ds)

大好きな3人であるからさぞ燃えるかと思ったのだが、最初から最後まで白けっぱなし。理由はペラペラな録音にある。これはひどい。

●ジョン・ヒックス
ソニー・シモンズ『Mixolydis』(2001年)
ソニー・フォーチュン『In the Spirit of John Coltrane』(1999年)
デイヴィッド・マレイの映像『Live at the Village Vanguard』(1986年)
ファラオ・サンダースの映像『Live in San Francisco』(1981-82年)
チコ・フリーマンの16年(1979、95年)
ソニー・シモンズ

●セシル・マクビー
エルヴィン・ジョーンズ+田中武久『When I was at Aso-Mountain』(1990年)
ボビー・マクファーリン『Nice 1982』(1982年)
アミナ・クローディン・マイヤーズのベッシー・スミス集(1980年)
チコ・フリーマンの16年(1979, 95年)
チコ・フリーマン『Kings of Mali』(1977年)
ザ・360ディグリー・ミュージック・エクスペリエンス『In: Sanity』(1976年)
セシル・マクビー『Mutima』(1974年)
ハンプトン・ホーズ『Live at the Jazz Showcase in Chicago Vol. 2』(1973年)
ハンプトン・ホーズ『Live at the Jazz Showcase in Chicago Vol. 1』(1973年)
アリス・コルトレーン『Carnegie Hall '71』(1971年)

●エルヴィン・ジョーンズ
エルヴィン・ジョーンズ(1)
エルヴィン・ジョーンズ(2)
チコ・フリーマン『Elvin』(2011年)
ベキ・ムセレク『Beauty of Sunrise』(1995年)
ミシェル・ドネダ+エルヴィン・ジョーンズ(1991-92年)
ソニー・シャーロック『Ask the Ages』(1991年)
エルヴィン・ジョーンズ+田中武久『When I was at Aso-Mountain』(1990年)
エルヴィン・ジョーンズ『Live at the Village Vanguard』(1968年)、ジョージ・コールマン『Amsterdam After Dark』『My Horns of Plenty』(1978、1991年)
アルバート・マンゲルスドルフ『A Jazz Tune I Hope』、リー・コニッツとの『Art of the Duo』(1978、1983年)
エルヴィン・ジョーンズ『At Onkel Pö's Carnegie Hall Hamburg 1981』(1981年)
高橋知己『Another Soil』(1980年)
1972年のエルヴィン・ジョーンズ
菊地雅章+エルヴィン・ジョーンズ『Hollow Out』(1972年)
フィニアス・ニューボーンJr.『Back Home』(1969年)
藤岡靖洋『コルトレーン』、ジョン・コルトレーン『Ascension』(1965年)
ロヴァ・サクソフォン・カルテットとジョン・コルトレーンの『Ascension』(1965、1995年)
マッコイ・タイナーのサックス・カルテット(1964、1972、1990、1991年)
『Stan Getz & Bill Evans』(1964年)
ソニー・シモンズ(1963、1966、1994、2005年)
ジミー・フォレスト『All The Gin Is Gone』、『Black Forrest』(1959年)