Sightsong

自縄自縛日記

加藤政洋『敗戦と赤線』

2018-12-26 08:10:27 | 政治

加藤政洋『敗戦と赤線~国策売春の時代~』(光文社新書、2009年)を読む。

本書は、集団売春街がどのように形成されたのかを追っている。それは主に前借金にもとづく管理売春であり、狭義の「赤線」に限るものではなかった。また、戦前の遊郭や私娼街が存続した場所ばかりではなかった。色々なタイプがあった。

驚くべきことは、こういった施設は政府や警察の強い意向で作られたことである。敗戦後すぐの1945年8月18日、内務省から警察宛てに、外国人向けの「性的慰安施設」を充実させるよう命令があった(国務大臣は近衛文麿)。すなわち、占領軍から日本人を護るために日本人を差し出すという人柱政策、「性の防波堤」に他ならなかった。

明らかになるのはこれにとどまらない。施設は急に拵えられたのではなく、戦中の軍人や軍需工場の「産業戦士」に向けられた慰安所から地続きであった。また、GHQが公式に制度を解体させてもなお別の形で存続させた。

本書では東京の主な地域の他、岐阜、京都、沖縄についてもその経緯を検証している。ここでも驚く指摘がある。那覇の栄町は、戦後の発展の中心として企図されながら、たまたま別の遊興の場所になってしまったのではなかった。戦前の大遊郭・辻に取って替わる歓楽街として、なかば意図的に囲い込まれたというのである。

占領軍の意図を超えて、非占領側が自国民を差し出す構図。「占領軍」を別の形に読み替えてもよい。これは現在の構図でもあるだろう。

●参照
藤井誠二『沖縄アンダーグラウンド』
木村聡『消えた赤線放浪記』
マイク・モラスキー『呑めば、都』
滝田ゆう『下駄の向くまま』
滝田ゆう展@弥生美術館
川島雄三『洲崎パラダイス赤信号』


アリス・コルトレーン『Spiritual Eternal』

2018-12-26 01:03:46 | アヴァンギャルド・ジャズ

アリス・コルトレーン『Spiritual Eternal』(Warner Bros.、1976-77年頃)を聴く。

アリスのワーナー時代のスタジオ録音を集めたものである。すなわち、『Eternity』(-1976年)、『Radha-Krsna Nama Sankirtana』(-1977年)、『Transcendence』(-1977年)の3枚であり、ライヴ録音の『Transfiguration』(1978年)は含まれていない。

パーソネル
『Eternity』
『Radha-Krsna Nama Sankirtana』
『Transcendence』

アルバムとしては、『Transcendence』が多くの弦楽器やコーラスと共演して壮大なサウンドとなっており、その前の2作が比較的シンプルである。とは言え、アリスのオルガンのカラーはすべての時間で濃密極まりない。執拗に濁った音を繰り返し、また彼女ならではの曲想でもある。ハープもまたアリスの音だ。それらが信仰に直結した音楽であろうから、これまでジャズ作品として色眼鏡を通して評価されていたのだろうけれど、いやそれにしても心の力に気圧される。それにチャーリー・ヘイデンとの共演なんて、匂いの結合に動かされる。素晴らしい。

●アリス・コルトレーン
アリス・コルトレーン『Translinear Light』(2000、2004年)
アリス・コルトレーン『Turiya Sings』(1981年)
アリス・コルトレーン『Universal Consciousness』、『Lord of Lords』(1971、1972年)
アリス・コルトレーン『Carnegie Hall '71』(1971年)
アリス・コルトレーン『Huntington Ashram Monastery』、『World Galaxy』(1969、1972年)
「JazzTokyo」のNY特集(2017/7/1)
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