Sightsong

自縄自縛日記

ビョーク『Utopia』

2019-04-14 23:53:08 | ポップス

ビョーク『Utopia』(One Little Indian Records、2017年)。

アナログで買ったあとにさらりと聴いただけだったことを思い出し、あらためて聴きなおした。

別離のあとの『Vulnicura』から気持ちを引きずってはいるものの、痛々しさが消えて、より開かれた雰囲気になっている。これには、『Vulnicura』がストリングスを多用していたのに対し(もっとストリングスを引きたてた『Vulnicura Strings』『vulnicura live』さえもあった)、もっとフルートやエレクトロニクスの貢献を増やしたこともあるのかもしれない。

どちらかと言えば、切実さがいくつもの名曲となって結実した『Vulnicura』のほうが好きである。それでも、言葉ひとつひとつの発音を手でなぞりながら歌うようなビョークの声は、とても魅力的だ。

●ビョーク
Making of Björk Digital @日本科学未来館(2016年)
ビューティフル・トラッシュ『Beautiful Disco』 アルゼンチンのビョーク・カヴァー(2015年?)
ビョーク『vulnicura live』(2015年)
ビョーク『Vulnicura Strings』(2015年)
ビョーク『Vulnicura』(2015年)
MOMAのビョーク展(2015年)
MOMA PS1の「ゼロ・トレランス」、ワエル・シャウキー、またしてもビョーク(2015年)
ビョーク『Volta』、『Biophilia』(2007、2011年)
ビョーク『Vespertine』、『Medulla』(2001、2004年)
ビョーク『Post』、『Homogenic』(1995、1997年)
ビョーク『Gling-Glo』、『Debut』(1991、1993年) 


老丹のサックスと笛

2019-04-14 21:41:57 | アヴァンギャルド・ジャズ

中国遼寧省出身の老丹(Lao Dan)というサックス奏者がいる。今度来日して、豊住芳三郎や照内央晴といった人たちと共演するらしい(2019/7/5・アケタの店、7/6・エアジン)。

この人のサックスは、コンピレーション盤『Saxophone Anatomy』(Armageddon、2017年)で聴いたのみである。一聴して異様な迫力に満ちている。苛烈であり、獣のように吹いては獣のように叫ぶ。ナマでどのような演奏をみせてくれるのか楽しみである。

なお、同盤には、リック・カントリーマンによる艶々したアルト、コリン・ウェブスターによるタンポ音をカラフルに使うバリトンと、3人のサックスソロが収録されている。

Lao Dan 老丹 (as)
Rick Countryman (as)
Colin Webster (bs)

『逐云追梦 Going After Clouds and Dreams』(Modern Sky、2016-17年)はすべて老丹のソロである。しかしサックスではなく中国の笛であり、どうやら、通常は付いている笛膜(吹き込み口と指孔の間の孔に貼る葦の膜)を取り除いてしまっているようだ。そのせいか気が前面に押し出されているような息遣いである。なるほど、これも体感してみたい。

Lao Dan 老丹 (Chinese bamboo fl)


キム・エランら『目の眩んだ者たちの国家』

2019-04-14 19:07:21 | 韓国・朝鮮

キム・エランら『目の眩んだ者たちの国家』(新泉社、原著2014年)を読む。

本書には、セウォル号沈没事件について韓国の作家たちが寄せた文章が集められている。

これは事故ではなく人災の事件であった。2014年4月16日のことであるから、およそ5年が経つ。そんなに前だったかと驚いてしまうが、亡くなった299人の乗員・乗客はそのように忘れたり思い出したりすることもできない。絶望したり憤激したりする自由も残されていない。

作家たちは各々の言葉で何が起きたのかを探ろうとする。それはどうしても、新自由主義的なオカネの重視とドライな役割分担、でたらめな制度の運用、見て見ぬふり、ハンナ・アーレントが言うような人間の悪、責任逃れの方法が組み込まれたシステム、といったことに収斂する。もちろんその通りである。そして日本に住む読み手は、これを自分たちのこととして読まなければ何の意味もない。向こう側に隠しているものをこちら側に持ってくる行為、恥辱を恥辱として共有する行為がなければ。


姜泰煥@下北沢Lady Jane

2019-04-14 10:44:50 | アヴァンギャルド・ジャズ

下北沢のLady Jane(2019/4/13)。

Kang Tae Hwan 姜泰煥 (as) 

おそらく姜泰煥のソロだけのライヴを観るのははじめてだ。昂揚を抑え演奏を待った。

以前よりも多彩になったのだろうか?いやこれは姜さんがその日にどの引き出しを開けるかによって異なるに過ぎない。

循環呼吸奏法は勿論だが、それによらず、重音が絶えず変貌する。それは静的なグラデーションというよりも動的・生物的なコンターであった。目の前の時空間は歪み続けた。意外にも曲的なものもあった。また、セカンドセットのアンコール前にみせた、地響きのごとき轟音には呆気に取られてしまった。

Fuji X-E2、XF35mmF1.4

●姜泰煥
TON KLAMI@東京都民教会(2016年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
姜泰煥『素來花』(2011年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2008年)
姜泰煥・高橋悠治・田中泯(2)(2008年)
大倉正之助『破天の人 金大煥』(2005年)
姜泰煥+美妍+朴在千『Improvised Memories』(2002年)
TON-KLAMI『Prophecy of Nue』(JazzTokyo)(1995年)
『ASIAN SPIRITS』(1995年)
サインホ・ナムチラックとサックスとのデュオ(1992-96年)