Sightsong

自縄自縛日記

ネイト・ウーリー『Columbia Icefield』

2019-04-30 15:49:14 | アヴァンギャルド・ジャズ

ネイト・ウーリー『Columbia Icefield』(Northern Spy、2017年)を聴く。

Nate Wooley (tp, electronics)
Mary Halvorson (g)
Susan Alcorn (pedal steel g)
Ryan Sawyer (ds)

ネイト・ウーリーらしく、抑制されつつも奇妙な意思が形になって表出している3曲。

最初から、メアリー・ハルヴァーソンとスーザン・アルコーンの出す音波の時間進行が異なっており、しかもそれは思いついたふりを装って戦略的に伸び縮みする。そこに入ってくるウーリーのトランペットは、まさに入る瞬間にそのときの時間をとらえているようである。

3曲目にいたり、やはり抑制されながら野蛮になり、これもまた面白い。

●ネイト・ウーリー
「JazzTokyo」のNY特集(2019/3/2)(『Battle Pieces IV』)(2018年)
ハリス・アイゼンスタット『Recent Developments』(2016年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces 2』(2016年)
ハリス・アイゼンスタット『On Parade In Parede』(2016年)
コルサーノ+クルボアジェ+ウーリー『Salt Talk』(2015年)
ネイト・ウーリー+ケン・ヴァンダーマーク『East by Northwest』、『All Directions Home』(2013、15年)
ネイト・ウーリー『(Dance to) The Early Music』(2015年)
ハリス・アイゼンスタット『Canada Day IV』(2015年)
アイスピック『Amaranth』(2014年)
ネイト・ウーリー『Battle Pieces』(2014年)
ネイト・ウーリー『Seven Storey Mountain III and IV』(2011、13年)
ネイト・ウーリー+ウーゴ・アントゥネス+ジョルジュ・ケイジョ+マリオ・コスタ+クリス・コルサーノ『Purple Patio』(2012年)
ネイト・ウーリー『(Sit in) The Throne of Friendship』(2012年)
ネイト・ウーリー『(Put Your) Hands Together』(2011年)
スティーヴン・ガウチ(Basso Continuo)『Nidihiyasana』(2007年)


オンドジェイ・ストベラチェク『Plays Mostly Standards』

2019-04-30 11:14:10 | アヴァンギャルド・ジャズ

オンドジェイ・ストベラチェク『Plays Mostly Standards』(Stvery Records、2017年)を聴く。

Ondřej Štveráček (ts, ss)
Klaudius Kováč (p)
Tomáš Baroš (b)
Gene Jackson (ds)

『Sketches』『Live in Prague』と同じメンバーでのスタジオ録音盤。これらのライヴ盤ではジョン・コルトレーンの影響をもろに感じたものだけれど、本盤ではなぜかそうでもない。もちろん本人は隠そうともしていないのだし、トレーン流のシーツ・オブ・サウンドは聴いていて爽快で気持ちがいい。それでも、よりハードボイルドな印象がある。

ここでも下から次々に爆発させるようにしてサウンドを上空に飛ばすジーン・ジャクソン。座っている椅子が蹴り上げられるようである。

●オンドジェイ・ストベラチェク
オンドジェイ・ストベラチェク『Live in Prague』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)

●ジーン・ジャクソン
片倉真由子@Body & Soul(2019年)
レイモンド・マクモーリン@六本木Satin Doll(2019年)
ジーン・ジャクソン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン@御茶ノ水NARU(2019年)
レイモンド・マクモーリン『All of A Sudden』(2018年)
ジーン・ジャクソン・トリオ@Body & Soul(2018年)
ジーン・ジャクソン(Trio NuYorx)『Power of Love』(JazzTokyo)(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Live in Prague』(2017年)
オンドジェイ・ストベラチェク『Sketches』(2016年)
レイモンド・マクモーリン@Body & Soul(JazzTokyo)(2016年)
及部恭子+クリス・スピード@Body & Soul(2015年)
松本茜『Memories of You』(2015年)
デイヴ・ホランド『Dream of the Elders』(1995年)


夢Duo@本八幡cooljojo

2019-04-30 10:33:28 | アヴァンギャルド・ジャズ

本八幡のcooljojo(2019/4/29)。

Akemi Shoomy Taku 宅Shoomy朱美(vo, p)
Takayuki Kato 加藤崇之 (g)

はじめはシューミーさんはヴォーカルに専念する。「All The Things You Are」では加藤さんは「記憶でやるか」と弾き始めたが見事。松風鉱一カルテットで過激にぶっとんで行く加藤さんも好きだが、このようにじっくりと弾く加藤さんもまたとても良い。「Autumn Nocturne」に続く「You Must Believe in Spring」では、声が出てくる直前に高まるアウラのようなものを感じた。また、たとえば「You」と伸ばす声、吸い込まれそうである。

シューミーさんは1曲をはさんでピアノに座り、加藤さんは「ヨシヨシ、握力が疲れるんだよな」と笑った。「Passa Por Mim」に続く「Quiet Now」では、加藤さんが手でギターを擦ったのだが、それがまるでドラムスのブラシのようだった。

セカンドセットもシューミーさんはピアノを弾き歌う。「まわるまわる目がまわる」でこちらを攪乱しておいて、「So in Love」。ピアノとヴォーカルとで別々の時間が流れていて、ここにまたギターという要素が入ってきて、あらためて驚き、聴き惚れる。このあとの時間は、なんとも言えない哀しみや、力強い生命力といったものが溢れていた。そして最後の「For All We Know」において、ゆっくりと噛みしめるようなピアノ、軋みで色を付けたギターを聴くことができた。

Fuji X-E2、7Artisans 12mmF2.8、XF60mmF2.4

●宅Shoomy朱美
宅Shoomy朱美+辰巳小五郎@阿佐ヶ谷Yellow Vision(2019年)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)
原田依幸+宅Shoomy朱美@なってるハウス(2018年)
impro cats・acoustic@なってるハウス
(2018年)

●加藤崇之
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2019年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン
(2018年その1)
夢Duo『蝉時雨 Chorus of cicadas』(2017-18年)

松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
加藤崇之トリオ『ギター・ミュージック』の裏焼き(1989年)


松本泰子+庄﨑隆志+齋藤徹@横濱エアジン(『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』DVD発売記念ライヴ)

2019-04-30 08:31:22 | アヴァンギャルド・ジャズ

横濱エアジン(2019/4/29)。

Taiko Matsumoto 松本泰子 (vo)
Takashi Shozaki 庄﨑隆志 (dance)
Tetsu Saitoh 齋藤徹 (b)

さまざまな詩人による詩をもとに、齋藤徹さんが曲を付けてコントラバスを弾き、聾のダンサー・庄﨑隆志さんが踊り、松本泰子さんが歌う。横濱エアジンには多くの客が集まっており、そのためもあって舞台は狭い。ここで庄﨑さんは踊りうるのかと思ったが、広い空間を必要とするものではなかった。その動きは空間以上に大きな脳内の拡がりをもたらすものだった。

渡辺洋「ふりかえるまなざし」。松本さんが繰り返す「ねばりづよく」に呼応して手をひらひらと伸ばす庄﨑さん。均衡を求めてなのか、均衡を異化するものなのか、いきなりこちらのバランス感覚が揺らぐ。

三角みづ紀「患う」。鏡が顔から離れないのか、ことが鏡であるのか、その動きとシンクロするように視線と言葉との交感がある。松本さんによる「わたしは患う」が層のように重なってゆき、一方の庄﨑さんは息遣いあらく手を伸ばし崩れ落ちた。

薦田愛「ひが、そして、はぐ。」。ご本人が朗読した。テツさんや松本さんは「通勤ブルース」と呼んでいるのだと笑った。混んだ電車、庄﨑さんは身体の自然を保てないかのように色違いのコートを左右それぞれに着ている。その、ばらばらになってしまいそうな状況と、どうしようもなく近づいてしまった状況。「ひしと抱く」と呼応して庄﨑さんもテツさんも頭をかきむしった。

寶玉義彦「遠いあなたに」。寶玉さんのパートナーMiyaさんがフルートを吹く。ここではテツさんが「生きることは!」と短く叫び、松本さんが歌う。すべてとの距離を縮める庄﨑さん、溶剤のように入るフルート。テツさんのコントラバスの軋みは、距離に対するもの、生死に関するもののようだ。

木村裕「ディオニューソス」。森の中で、沼の上で、周囲とどのように溶けあうか、「蕩け」あうか。庄﨑さんの踊りは何かへの変化(へんげ)のようにみえる。木村さんは朗読し、場所が塞がっていたピアノの下に潜って鍵盤を叩いた。自分がなにものであるのかわからない不思議さとは無関係に音楽が響いた。全員が「ほら」、「ほら」、と囁いた。

市川洋子「はじまりの時」。休憩時間に市川さんに聞いたら、人生初の人前での朗読だという。はじまりの時が、鳥、風、野の匂いとともに立ち上がり、庄﨑さんが白い花を手に動き、テツさんのコントラバスが応じる。その世界に居ることが必然のような庄﨑さん。全員が両手をあげて上を向いた。(くいしんぼの市川さん、おいしい中華料理店にまた行ったかな。)

寶玉義彦「青嵐の家」。寶玉さんが朗読する。デモで歩く、その歩みを庄﨑さんは指で表現する。右手で歩く者を左手でとらえたりもする。その連続的な状況を異化し立ち上がらせようとするコントラバス。

薦田愛「てぃきら、うぃきら、ふぃきら、ゆきら、りきら、ら」。濁音がない詩なのだという。「波間から現れるいのち。」の箇所では、濡れることが生命なのだと感じさせられた。

野村喜和夫「防柵11(アヒダヘダツ)」。「i(鳥が鳥を超えてゆくさえずり)」では庄﨑さんが白い紙で手と顔とを世界と分かち、言葉がその上に重なる。それをコントラバスが揺り動かす(アヒダを?紙を?)。やがて剥き出しになる顔と手、それとは無関係に進む音楽。「私とはだれでしたか」があらためて目に飛び込んでくる。「ii(ルリリ)」では琉球音階となり、テツさんは強く弦を弾き笑う。悦びと、「ハー」という息遣いと、ぎくしゃくした動きとが、生命というわけのわからないものをあらわしているようだ。

三角みづ紀「Pilgrimage」。すべてを振り返るように(このステージだけではなく)、「この身体で」「身体だけで」という言葉で終わった。

やさしくも残酷にも脳を震わせる松本さんの歌、生命の共振や狂いを取り込んだようなテツさんのコントラバス、その場の生命の揺らぎをともかくも表出させる庄﨑さんの動き、そして全員の交感。形になるものとならないものとを含めて、もやっとした大きな示唆を与えてくれるようだった。

DVD『Sluggish Waltz - スロッギーのワルツ』、そしてヴィム・ヴェンダース『ピナ』を観て振り返ることが楽しみである。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●齋藤徹
齋藤徹+久田舜一郎@いずるば(2019年)
近藤真左典『ぼくのからだはこういうこと』、矢荻竜太郎+齋藤徹@いずるば(2019年)
2018年ベスト(JazzTokyo)
長沢哲+齋藤徹@ながさき雪の浦手造りハム(2018年)
藤山裕子+レジー・ニコルソン+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+長沢哲+木村由@アトリエ第Q藝術(2018年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@喫茶茶会記(2018年)
永武幹子+齋藤徹@本八幡cooljojo(JazzTokyo)(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
DDKトリオ+齋藤徹@下北沢Apollo(2018年)
川島誠+齋藤徹@バーバー富士(JazzTokyo)(2018年)
齋藤徹+喜多直毅@板橋大山教会(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+外山明@cooljojo(2018年)
かみむら泰一+齋藤徹@本八幡cooljojo(2018年)
齋藤徹+喜多直毅+皆藤千香子@アトリエ第Q藝術(2018年)
2017年ベスト(JazzTokyo)
即興パフォーマンス in いずるば 『今 ここ わたし 2017 ドイツ×日本』(2017年)
『小林裕児と森』ライヴペインティング@日本橋三越(2017年)
ロジャー・ターナー+喜多直毅+齋藤徹@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
長沢哲+齋藤徹@東北沢OTOOTO(2017年)
翠川敬基+齋藤徹+喜多直毅@in F(2017年)
齋藤徹ワークショップ特別ゲスト編 vol.1 ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+佐草夏美@いずるば(2017年)
齋藤徹+喜多直毅@巣鴨レソノサウンド(2017年)
齋藤徹@バーバー富士(2017年)
齋藤徹+今井和雄@稲毛Candy(2017年)
齋藤徹 plays JAZZ@横濱エアジン(JazzTokyo)(2017年)
齋藤徹ワークショップ「寄港」第ゼロ回@いずるば(2017年)
りら@七針(2017年)
広瀬淳二+今井和雄+齋藤徹+ジャック・ディミエール@Ftarri(2016年)
齋藤徹『TRAVESSIA』(2016年)
齋藤徹の世界・還暦記念コントラバスリサイタル@永福町ソノリウム(2016年)
かみむら泰一+齋藤徹@キッド・アイラック・アート・ホール(2016年)
齋藤徹+かみむら泰一、+喜多直毅、+矢萩竜太郎(JazzTokyo)(2015-16年)
齋藤徹・バッハ無伴奏チェロ組曲@横濱エアジン(2016年)
うたをさがして@ギャラリー悠玄(2015年) 
齋藤徹+類家心平@sound cafe dzumi(2015年)
齋藤徹+喜多直毅+黒田京子@横濱エアジン(2015年)
映像『ユーラシアンエコーズII』(2013年)
ユーラシアンエコーズ第2章(2013年)
バール・フィリップス+Bass Ensemble GEN311『Live at Space Who』(2012年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹@ポレポレ坐(2011年)
齋藤徹による「bass ensemble "弦" gamma/ut」(2011年)
『うたをさがして live at Pole Pole za』(2011年)
齋藤徹『Contrabass Solo at ORT』(2010年)
齋藤徹+今井和雄『ORBIT ZERO』(2009年)
齋藤徹、2009年5月、東中野(2009年)
ミシェル・ドネダと齋藤徹、ペンタックス43mm(2007年)
齋藤徹+今井和雄+ミシェル・ドネダ『Orbit 1』(2006年)
ローレン・ニュートン+齋藤徹+沢井一恵『Full Moon Over Tokyo』(2005年)
明田川荘之+齋藤徹『LIFE TIME』(2005年)
ミシェル・ドネダ+レ・クアン・ニン+齋藤徹+今井和雄+沢井一恵『Une Chance Pour L'Ombre』(2003年)
往来トリオの2作品、『往来』と『雲は行く』(1999、2000年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ+チョン・チュルギ+坪井紀子+ザイ・クーニン『ペイガン・ヒム』(1999年)
齋藤徹+ミシェル・ドネダ『交感』(1999年)
齋藤徹+沢井一恵『八重山游行』(1996年)
久高島で記録された嘉手苅林昌『沖縄の魂の行方』、池澤夏樹『眠る女』、齋藤徹『パナリ』(1996年)
ミシェル・ドネダ+アラン・ジュール+齋藤徹『M'UOAZ』(1995年)
ユーラシアン・エコーズ、金石出(1993、1994年)
ジョゼフ・ジャーマン 

●三角みづ紀
詩×音楽(JAZZ ART せんがわ2018)(JazzTokyo)(2018年)

●野村喜和夫
野村喜和夫+北川健次『渦巻カフェあるいは地獄の一時間』(2013年)