Sightsong

自縄自縛日記

ダラー・ブランド『The Journey』

2019-04-29 10:00:32 | アヴァンギャルド・ジャズ

ダラー・ブランド『The Journey』(Chiaroscuro Records、1977年)を聴く。

Abdullah Ibrahim (p, ss)
Carlos Ward (as)
Talib Rhynie (as, oboe)
Hamiet Bluiett (bs, cl)
Johnny Akhir Dyani (b)
Claude Jones (congas)
John Betsch (perc)
Roy Brooks (perc)
Don Cherry (tp)

壮大だとか何とか喧伝されるわりにはリラックスしていて、この5年ほど前にドン・チェリー、カルロス・ワードという同メンバーで吹き込まれた『The Third World - Underground』(1972年)よりも好感を覚える。ハミエット・ブリューイットもドン・チェリーもリラックスしている。

ダラー・ブランドがバディ・テイトと組んだ異色盤のわずか後の吹き込みでもあるが、それも聴いてみると肩透かしをくらうほど自然な演奏だった。ブランドの音楽が、オリエンタリズムの視線や越境というコンセプトに商売として使われていたということだろう。三曲目の「Haji (The Journey)」を聴くと誰もが『African Piano』を思い出してしまうと思うのだが、すなわち、ブランドの受容については一連の作品によってとらえなければならないということか。

●ダラー・ブランド/アブドゥーラ・イブラヒム
マックス・ローチ+アブドゥーラ・イブラヒム『Streams of Consciousness』(1977年)
ダラー・ブランド+ドン・チェリー+カルロス・ワード『The Third World - Underground』(1972年)


エレクトロニクスとヴィオラ、ピアノの夕べ@Ftarri

2019-04-29 08:51:43 | アヴァンギャルド・ジャズ

水道橋のFtarri(2019/4/28)。

suzueri すずえり (prepared p, self-made instruments)
Yoko Ikeda 池田陽子 (viola)
Tengal (electronics)

ファーストセット、すずえり・池田陽子デュオ。すずえりさんは小さいカセットテープレコーダーをいくつか鳴らし、それと連動させているのか、ふたつの電極の間に渡されたコイルを半自動的に動かす。ピアノの弦がモーターによって擦られて異音が(それを忘れるほどにずっと)鳴る中で、池田さんがヴィオラを弾く。足許にとどまるような微かな音であったり、流れ出して周囲のものと人とを取り巻くようであったりして、その震えと間とがとても良い。すずえりさんは円盤をクレーンのように回し、また、小さいピアノを大きなピアノに連動させてときおり鍵盤を叩く。それらの佇まいは自律的な機械であり小動物であり、『ブレードランナー』における寂しいエンジニアの部屋を思い出した。

セカンドセット、テンガルソロ(テンガルさんはフィリピン出身)。エレクトロニクスのプラグとPCとで創っていくそれは意外にポップなもので、他人事の物語をつなぎあわせるように感じられた。コラージュ的な生活空間のアジアにも感じられた。

サードセット、トリオ。池田さんとすずえりさんが演奏し、テンガルさんに加わるよう促す。すずえりさんが向きを変えて何やら弾き語りをはじめてもテンガルさんはPCを睨み何も音を出さない。ふたりは笑いながら焦り、動け動けと大きなジェスチャーで合図をする。やがてテンガルさんが遅れてきた物語をみせた。それは作戦だったかどうなのか、しかし焦りと大きな隙間と笑いとがインプロの過程として面白かった。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●すずえり
すずえり@Ftarri(2019年)
すずえり+大城真『Duo』(2018年)
ジョン・ラッセル、ストーレ・リアヴィーク・ソルベルグ、すずえり、大上流一、石川高、山崎阿弥@Ftarri(2018年)
角銅真実+横手ありさ、田中悠美子+清田裕美子、すずえり+大城真@Ftarri(2018年)
フタリのさとがえり@Ftarri(2018年)
Zhao Cong、すずえり、滝沢朋恵@Ftarri(2018年)
ファビオ・ペルレッタ+ロレンツォ・バローニ+秋山徹次+すずえり@Ftarri(2017年)
すずえり、フィオナ・リー『Ftarri de Solos』(2017年)

●池田陽子
鈴木ちほ+池田陽子(solo solo duo)@高円寺グッドマン(2019年)
池田陽子+山㟁直人+ダレン・ムーア、安藤暁彦@Ftarri(2018年)
森重靖宗+池田陽子+増渕顕史『shade』(2018年)
佐伯美波+池田若菜+池田陽子+杉本拓+ステファン・テュット+マンフレッド・ヴェルダー『Sextet』(2017年)
クリスチャン・コビ+池田若菜+杉本拓+池田陽子『ATTA!』(2017年)


松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン

2019-04-29 00:30:02 | アヴァンギャルド・ジャズ

新宿ピットイン昼の部(2019/4/28)。かなり客が入っている。

Koichi Matsukaze 松風鉱一(as, ts, fl)
Takayuki Kato 加藤崇之(g)
Hiroaki Mizutani 水谷浩章(b)
Akira Sotoyama 外山明(ds)
Mikio Ishida 石田幹雄(p)

ファーストセット、「K2」(テナー)、「Outside」(アルト)、「Hawk Song」(テナー)、「Earth Mother」(アルト)、?(フルート)、「Kikikaikai」(アルト)。セカンドセット、「それぞれの時間」(アルト)、「3・11」(テナー)、「Big Valley」(テナー)、「Shallow Dream」(アルト)、「J・C・ナガセ」(アルト)、アンコール「w.w.w.」(テナー)。

観るたびに過激さを増していていちいち驚いてしまっていた松風鉱一4だが、この日はそうでもなく(こちらが麻痺したのか)、むしろ、落ち着いて余裕でリミッターを外す各氏のプレイを楽しむことができた。

石田さんは、「Earth Mother」では鍵盤がたわむのではないかというほどの叩きぶり、「J・C・ナガセ」では右手だけで最初は暴れておいてやがて左手を仲間に入れてさらなる拡がりをみせた。水谷さんの笑いながらのグルーヴはやはり素晴らしくて、「Big Valley」ではまるで唸りながらサックスに追従、また「J・C・ナガセ」では太い和音で大暴れのサウンドをさらに分厚くした。

どこかに確信犯的に滑ってゆく加藤さんのギターにも、力技で他のプレイヤーと絡み遊ぶ外山さんのドラムスも、そのような人だとわかってはいても嬉しさでつい笑う。もちろん松風さんのささくれたようなサックスの音色は誰にも似ていない。

宇宙一のアナーキストたちの饗宴を観ないと損損。

Fuji X-E2、XF60mmF2.4、7Artisans 12mmF2.8

●松風鉱一
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その2)
松風鉱一カルテット@西荻窪Clop Clop(2018年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2018年その1)
松風M.A.S.H. その3@なってるハウス(2018年)
今村祐司グループ@新宿ピットイン(2017年)
松風M.A.S.H. その2@なってるハウス(2017年)
松風M.A.S.H.@なってるハウス(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2017年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その3)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その2)
松風鉱一@十条カフェスペース101(2016年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2016年その1)
渋谷毅エッセンシャル・エリントン@新宿ピットイン(2015年)
松風鉱一カルテット+石田幹雄@新宿ピットイン(2015年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2014年)
5年ぶりの松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2013年)
松風鉱一カルテット@新宿ピットイン(2012年)
渋谷毅オーケストラ@新宿ピットイン(2011年)
松風鉱一トリオ@Lindenbaum(2008年)
松風鉱一カルテット、ズミクロン50mm/f2(2007年)
原みどりとワンダー5『恋☆さざなみ慕情』(2006年)
松風鉱一『Good Nature』(1981年)
松風鉱一トリオ+大徳俊幸『Earth Mother』(1978年)
『生活向上委員会ライブ・イン・益田』(1976年)
カーラ・ブレイ+スティーヴ・スワロウ『DUETS』、渋谷毅オーケストラ
森山威男『SMILE』、『Live at LOVELY』 
反対側の新宿ピットイン
くにおんジャズ、鳥飼否宇『密林』